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崩れた均衡
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そういえば、大和が大学に入ってから何人かの女の子と付き合ってたって噂になってた。誰とも長くは続かなかったみたいだけど......
美姫のことを吹っ切ろうとしてるのが分かってたから、大和に聞くことも出来なかった。
そのうちの一人が、真奈ちゃんだったんだ。
薫子はチラッと隣の悠を見た。
きっと、悠は...大和が真奈ちゃんと付き合ってたことを知ってたんだ。だから、驚くことなく、溜息を吐いたんだよね。
悠が話してくれなかったことを寂しく思いつつも、彼が自分の友人の恋愛話をやたらにベラベラと話すような人ではないことを改めて知り、嬉しく思う気持ちもあった。
大和が空いていた隣のスペースに置いた鞄を足元へと移動させた。
「...別に、そんなんじゃねぇよ。座ったら?今から飲み物オーダーするけど」
「あ! じゃあ私、ビール」
その言葉を聞いて、遼が受話器を取り、注文を始めた。
真奈美は大和の隣に座るとキョロキョロした。
「あれ? 来栖 美姫さんは来てないの?」
その言葉に大和と薫子が固まった。そんな二人の様子に気づくことなく、真奈美は続けた。
「今日、プライベートな集まりっぽかったから、大和の本命さん見られるんじゃないかって期待してたのに、残念......」
「お前なぁ......」
大和は呆れたように溜息をついた。けれど、真奈美はそんな大和に真剣に訴えた。
「私、大和と付き合ってた時に友達から聞いたんだよ! 大和が幼馴染で、高校生の時に付き合ってた来栖さんと私が似てるって......だから大和、私と付き合ったんでしょ?」
「まな...」
大和は真奈美に話しかけようとしたが、興奮した真奈美は大和の話を遮り、続けた。
「そのこと聞いてすごいショックだったけど、代わりでもなんでも大和の彼女でいたいって思ってた。その為に来栖さんの服装の趣味とか化粧とか聞いて、少しでも近づけようとしたのに......結局、大和に別れようって言われて。
何が足りなかったんだろう、ってずぅっと考えてた。だから、今日みんなで集まるって話聞いた時に、もしここで来栖さんに直接会えたら何か分かるかもしれないって思ってた......
大和、その人のことがずっと好きで、まだ諦められてないんでしょ? だから私と別れた後、誰とも付き合ってな...」
「やめろっっ!!!」
大和が声を荒げ、そこにいた悠以外の全員がビクッと躰を揺らした。
あ、んな...声を荒げる大和......初めて、見た。
薫子は信じられない気持ちで大和を見つめ、大和は居た堪れず顔を逸らした。
「綾瀬さん、場が白けてる」
悠の低く冷たい言葉に、真奈美がハッとした。
「ご、ごめんなさい......つい、感情的になっちゃって......」
暫く気まずい空気が流れた後、大和が深く息を吐いた。
「俺は...美姫と真奈美を重ねて見たことなんて、ない。真奈美が美姫のことを意識してるのは、感じてた。美姫は美姫だし、真奈美は真奈美だ。誰も代わりになんて、なれない......
真奈美が美姫になろうとして、近づこうとすればするほど苦しくて。何も理由を告げずに別れた俺が悪かった。ごめんな、辛い思いさせて......
けど......美姫とは完全に終わったし......今は...誰とも付き合いたくないだけだから」
苦しそうに告げる大和の言葉に、薫子は胸を絞られる思いだった。
大和はまだ、美姫のことが好きなんだ......
美姫のことを吹っ切ろうとしてるのが分かってたから、大和に聞くことも出来なかった。
そのうちの一人が、真奈ちゃんだったんだ。
薫子はチラッと隣の悠を見た。
きっと、悠は...大和が真奈ちゃんと付き合ってたことを知ってたんだ。だから、驚くことなく、溜息を吐いたんだよね。
悠が話してくれなかったことを寂しく思いつつも、彼が自分の友人の恋愛話をやたらにベラベラと話すような人ではないことを改めて知り、嬉しく思う気持ちもあった。
大和が空いていた隣のスペースに置いた鞄を足元へと移動させた。
「...別に、そんなんじゃねぇよ。座ったら?今から飲み物オーダーするけど」
「あ! じゃあ私、ビール」
その言葉を聞いて、遼が受話器を取り、注文を始めた。
真奈美は大和の隣に座るとキョロキョロした。
「あれ? 来栖 美姫さんは来てないの?」
その言葉に大和と薫子が固まった。そんな二人の様子に気づくことなく、真奈美は続けた。
「今日、プライベートな集まりっぽかったから、大和の本命さん見られるんじゃないかって期待してたのに、残念......」
「お前なぁ......」
大和は呆れたように溜息をついた。けれど、真奈美はそんな大和に真剣に訴えた。
「私、大和と付き合ってた時に友達から聞いたんだよ! 大和が幼馴染で、高校生の時に付き合ってた来栖さんと私が似てるって......だから大和、私と付き合ったんでしょ?」
「まな...」
大和は真奈美に話しかけようとしたが、興奮した真奈美は大和の話を遮り、続けた。
「そのこと聞いてすごいショックだったけど、代わりでもなんでも大和の彼女でいたいって思ってた。その為に来栖さんの服装の趣味とか化粧とか聞いて、少しでも近づけようとしたのに......結局、大和に別れようって言われて。
何が足りなかったんだろう、ってずぅっと考えてた。だから、今日みんなで集まるって話聞いた時に、もしここで来栖さんに直接会えたら何か分かるかもしれないって思ってた......
大和、その人のことがずっと好きで、まだ諦められてないんでしょ? だから私と別れた後、誰とも付き合ってな...」
「やめろっっ!!!」
大和が声を荒げ、そこにいた悠以外の全員がビクッと躰を揺らした。
あ、んな...声を荒げる大和......初めて、見た。
薫子は信じられない気持ちで大和を見つめ、大和は居た堪れず顔を逸らした。
「綾瀬さん、場が白けてる」
悠の低く冷たい言葉に、真奈美がハッとした。
「ご、ごめんなさい......つい、感情的になっちゃって......」
暫く気まずい空気が流れた後、大和が深く息を吐いた。
「俺は...美姫と真奈美を重ねて見たことなんて、ない。真奈美が美姫のことを意識してるのは、感じてた。美姫は美姫だし、真奈美は真奈美だ。誰も代わりになんて、なれない......
真奈美が美姫になろうとして、近づこうとすればするほど苦しくて。何も理由を告げずに別れた俺が悪かった。ごめんな、辛い思いさせて......
けど......美姫とは完全に終わったし......今は...誰とも付き合いたくないだけだから」
苦しそうに告げる大和の言葉に、薫子は胸を絞られる思いだった。
大和はまだ、美姫のことが好きなんだ......
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