87 / 355
崩れた均衡
6
しおりを挟む
すると、陽子が思い出したように言った。
「あ、それ誤解なんだよ! 二人が付き合ってたって噂になってたらしいけど、実際は付き合ってなかったんだって。友達だって、この前薫子言ってたもんね?」
「そうなのか、薫子?」
陽子と遼の視線を受け、薫子は答えざるをえなかった。
「う、ん......」
悠の前でこんな嘘をつかなくちゃいけないなんて...胸が痛くて苦しい......
「恋人同士だったんじゃない」
悠の静かな声が響いた。
……分かってる。
これは、私たちの関係を守るための嘘だって、分かっているのに.....
自分でも言ったことなのに、悠に言われると余計に苦しみが増す。
これは嘘ではなく、もしかして本当のことを言われているのかとさえ、疑ってしまう。
睫毛を伏せた薫子に、悠は更に続けた。
「俺たちは...恋人同士だったんじゃなく、恋人同士だ。
俺は、薫子を愛している」
悠はそう言って、薫子の肩を抱き寄せた。
「ゆ、悠......」
目を見張り、呆然とする薫子に、悠は漆黒の瞳を真っ直ぐに向けた。
「ごめん......もう、黙っていられない。嘘に嘘を重ねて......君が傷つくのを、見ていられない」
薫子の瞼の奥が熱くなり、瞳が潤む。
悠......こんな時まで、あなたを好きだという気持ちが胸の奥底から溢れ出してくる......
すると、遼が向かいの席から立ち上がり、悠の胸倉を掴んだ。
「っざけんな! なんで今まで黙ってたんだよ。俺ひとり、バカみてーじゃねぇか!」
「遼ちゃん、やめてっっ!!!」
薫子は、悠に掴み掛かった遼の手を握った。
感情的な遼に対し、悠は冷静だった。遼を射るような鋭い眼差しで見据える。
「別に、君に義理立てしてたわけじゃない。俺たちは...両親同士の不和が原因で、ずっと隠れて付き合っていた」
遼はそれを聞いてハッとした。
「...そうだ。お前、風間の息子じゃねぇか。ハッ...ハハッ、バカだなお前......俺がもし、薫子の親父さんにお前たちが付き合っていることバラしちまったら、一発で終わりだぞ」
それを聞き、遼の手を握っていた薫子の手から力が抜け、滑り落ちた。
遼...ちゃんが、お父様に......そうなったら、私と悠は......もう、一緒にはいられない。
「ッ...ッグ...お、ねが......りょ、ちゃ......ッ...おと...さま......ヒグッ言わ...ない...ッッで......」
薫子は肩を震わせ、嗚咽が漏れるのを必死に抑えた。悠が薫子の頭に手を添え、胸に抱き寄せる。
「薫子の父親を使って俺たちを引き離そうとするような、卑怯な奴に薫子は絶対に渡さない」
その瞳の奥には静かに燃え盛る怒りの炎が見えた。
遼はその気迫に押され、悠の胸倉を掴んでいた手を離す。だが、気持ちを奮い立たせると声を荒げた。
「薫子は俺のもんだ! ぜってぇに負けねぇからな!!!」
そして、薫子に向けて真っ直ぐ指を指した。
「風間といたって、一緒になれるわけねぇ。気弱でなんも言えねぇお前が、親父に反抗なんて出来ねぇくせに。
お前は俺と一緒になるしかねぇんだよ!覚えとけ!」
遼はズカズカと出口に向かい、大きな音を立てて扉を閉めると部屋を出て行った。
薫子は遼の言葉に俯き、唇を噛み締めた。
悔しいけど...何も言えない。私は、お父様に逆らうことなど、出来ない......
それ、でも...悠と一緒にいたい......
「あ、それ誤解なんだよ! 二人が付き合ってたって噂になってたらしいけど、実際は付き合ってなかったんだって。友達だって、この前薫子言ってたもんね?」
「そうなのか、薫子?」
陽子と遼の視線を受け、薫子は答えざるをえなかった。
「う、ん......」
悠の前でこんな嘘をつかなくちゃいけないなんて...胸が痛くて苦しい......
「恋人同士だったんじゃない」
悠の静かな声が響いた。
……分かってる。
これは、私たちの関係を守るための嘘だって、分かっているのに.....
自分でも言ったことなのに、悠に言われると余計に苦しみが増す。
これは嘘ではなく、もしかして本当のことを言われているのかとさえ、疑ってしまう。
睫毛を伏せた薫子に、悠は更に続けた。
「俺たちは...恋人同士だったんじゃなく、恋人同士だ。
俺は、薫子を愛している」
悠はそう言って、薫子の肩を抱き寄せた。
「ゆ、悠......」
目を見張り、呆然とする薫子に、悠は漆黒の瞳を真っ直ぐに向けた。
「ごめん......もう、黙っていられない。嘘に嘘を重ねて......君が傷つくのを、見ていられない」
薫子の瞼の奥が熱くなり、瞳が潤む。
悠......こんな時まで、あなたを好きだという気持ちが胸の奥底から溢れ出してくる......
すると、遼が向かいの席から立ち上がり、悠の胸倉を掴んだ。
「っざけんな! なんで今まで黙ってたんだよ。俺ひとり、バカみてーじゃねぇか!」
「遼ちゃん、やめてっっ!!!」
薫子は、悠に掴み掛かった遼の手を握った。
感情的な遼に対し、悠は冷静だった。遼を射るような鋭い眼差しで見据える。
「別に、君に義理立てしてたわけじゃない。俺たちは...両親同士の不和が原因で、ずっと隠れて付き合っていた」
遼はそれを聞いてハッとした。
「...そうだ。お前、風間の息子じゃねぇか。ハッ...ハハッ、バカだなお前......俺がもし、薫子の親父さんにお前たちが付き合っていることバラしちまったら、一発で終わりだぞ」
それを聞き、遼の手を握っていた薫子の手から力が抜け、滑り落ちた。
遼...ちゃんが、お父様に......そうなったら、私と悠は......もう、一緒にはいられない。
「ッ...ッグ...お、ねが......りょ、ちゃ......ッ...おと...さま......ヒグッ言わ...ない...ッッで......」
薫子は肩を震わせ、嗚咽が漏れるのを必死に抑えた。悠が薫子の頭に手を添え、胸に抱き寄せる。
「薫子の父親を使って俺たちを引き離そうとするような、卑怯な奴に薫子は絶対に渡さない」
その瞳の奥には静かに燃え盛る怒りの炎が見えた。
遼はその気迫に押され、悠の胸倉を掴んでいた手を離す。だが、気持ちを奮い立たせると声を荒げた。
「薫子は俺のもんだ! ぜってぇに負けねぇからな!!!」
そして、薫子に向けて真っ直ぐ指を指した。
「風間といたって、一緒になれるわけねぇ。気弱でなんも言えねぇお前が、親父に反抗なんて出来ねぇくせに。
お前は俺と一緒になるしかねぇんだよ!覚えとけ!」
遼はズカズカと出口に向かい、大きな音を立てて扉を閉めると部屋を出て行った。
薫子は遼の言葉に俯き、唇を噛み締めた。
悔しいけど...何も言えない。私は、お父様に逆らうことなど、出来ない......
それ、でも...悠と一緒にいたい......
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる