【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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崩れた均衡

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 すると、陽子が思い出したように言った。

「あ、それ誤解なんだよ! 二人が付き合ってたって噂になってたらしいけど、実際は付き合ってなかったんだって。友達だって、この前薫子言ってたもんね?」
「そうなのか、薫子?」

 陽子と遼の視線を受け、薫子は答えざるをえなかった。

「う、ん......」

 悠の前でこんな嘘をつかなくちゃいけないなんて...胸が痛くて苦しい......

「恋人同士だったんじゃない」

 悠の静かな声が響いた。

 ……分かってる。
 これは、私たちの関係を守るための嘘だって、分かっているのに.....

 自分でも言ったことなのに、悠に言われると余計に苦しみが増す。

 これは嘘ではなく、もしかして本当のことを言われているのかとさえ、疑ってしまう。

 睫毛を伏せた薫子に、悠は更に続けた。

「俺たちは...恋人同士だったんじゃなく、恋人同士だ。
 俺は、薫子を愛している」

 悠はそう言って、薫子の肩を抱き寄せた。

「ゆ、悠......」

 目を見張り、呆然とする薫子に、悠は漆黒の瞳を真っ直ぐに向けた。

「ごめん......もう、黙っていられない。嘘に嘘を重ねて......君が傷つくのを、見ていられない」

 薫子の瞼の奥が熱くなり、瞳が潤む。

 悠......こんな時まで、あなたを好きだという気持ちが胸の奥底から溢れ出してくる......

 すると、遼が向かいの席から立ち上がり、悠の胸倉を掴んだ。

「っざけんな! なんで今まで黙ってたんだよ。俺ひとり、バカみてーじゃねぇか!」
「遼ちゃん、やめてっっ!!!」

 薫子は、悠に掴み掛かった遼の手を握った。

 感情的な遼に対し、悠は冷静だった。遼を射るような鋭い眼差しで見据える。

「別に、君に義理立てしてたわけじゃない。俺たちは...両親同士の不和が原因で、ずっと隠れて付き合っていた」

 遼はそれを聞いてハッとした。

「...そうだ。お前、風間の息子じゃねぇか。ハッ...ハハッ、バカだなお前......俺がもし、薫子の親父さんにお前たちが付き合っていることバラしちまったら、一発で終わりだぞ」

 それを聞き、遼の手を握っていた薫子の手から力が抜け、滑り落ちた。

 遼...ちゃんが、お父様に......そうなったら、私と悠は......もう、一緒にはいられない。

「ッ...ッグ...お、ねが......りょ、ちゃ......ッ...おと...さま......ヒグッ言わ...ない...ッッで......」

 薫子は肩を震わせ、嗚咽が漏れるのを必死に抑えた。悠が薫子の頭に手を添え、胸に抱き寄せる。

「薫子の父親を使って俺たちを引き離そうとするような、卑怯な奴に薫子は絶対に渡さない」

 その瞳の奥には静かに燃え盛る怒りの炎が見えた。

 遼はその気迫に押され、悠の胸倉を掴んでいた手を離す。だが、気持ちを奮い立たせると声を荒げた。

「薫子は俺のもんだ! ぜってぇに負けねぇからな!!!」

 そして、薫子に向けて真っ直ぐ指を指した。

「風間といたって、一緒になれるわけねぇ。気弱でなんも言えねぇお前が、親父に反抗なんて出来ねぇくせに。
 お前は俺と一緒になるしかねぇんだよ!覚えとけ!」

 遼はズカズカと出口に向かい、大きな音を立てて扉を閉めると部屋を出て行った。

 薫子は遼の言葉に俯き、唇を噛み締めた。

 悔しいけど...何も言えない。私は、お父様に逆らうことなど、出来ない......
 それ、でも...悠と一緒にいたい......
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