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崩れた均衡
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陽子がおずおずと口を開いた。
「あ、あのぉ...私、状況がよく飲み込めていないんだけど.......
薫子と風間くんは恋人同士、なんだよね? なんで隠さなくちゃいけないの?」
ぁ...陽子は、何も事情を知らないんだ。
陽子にはちゃんと事情を説明したい......そう思いながらも、薫子は感情の波が抑えられず、未だ肩を震わせていた。
悠が、大丈夫だから...と宥めるように薫子の背中をさする。
「櫻井財閥と風間財閥は両親同士の折り合いが悪くて......犬猿の仲なんだ」
それに続いて薫子が悠の胸から離れ、陽子に向き直った。
私から、直接言わなくちゃ......
「わた、しと...悠が......付き合っていることを、もし知られてしまったら......別れさせられてしまうから......ずっと秘密にしてて。
......陽子にも、言えなくて...ごめんね」
薫子は喉から声を絞り出し、なんとかそこまで言うと沈黙した。嘘をついていた罪悪感から、陽子を見ることが出来なかった。
ようやく友達が出来たと思ったのに、陽子が私から離れていってしまう......
でも、隠し事をしていたのは私の方なんだし、仕方ないよね。
そう考えていた薫子を、陽子がガバッと抱き締めた。
「ぇ...よう、こ?」
「薫子、今まで誰にも言えなくて辛かったでしょ......
好きなのに、好きって言えなくて、彼氏なのに、友達だって言わなくちゃいけなかったなんて。
ごめん、知らなくて......」
ギュッと力強く抱き締める陽子の背中に薫子はそっと手を添えた。
友達で、いてくれるんだ。私の気持ちに、陽子が寄り添ってくれている。
すごく、嬉しい......
薫子は陽子の優しさに触れ、先ほどとは違う涙が瞳の奥から滲み出す。
すると突然、陽子がハッとして顔を上げた。
「えっ、遼くんは両家の諍いを知ってて、それで薫子のお父さんに告げ口するなんて言ったんだ!? なんて卑怯なのっっ!」
怒りで拳を震わせた。
「ごめんなさい...私が余計なことを言ったばかりにこんなことになっちゃって......」
真奈美が申し訳なさそうに肩を落とした。
悠がすっと顔を上げた。
「いや...最終的に、恋人だって言ったのは俺だから。隠し通さなくちゃいけないことは分かっていたのに、薫子の辛そうな顔を見るのが耐えられなかった。
ごめん......」
「あいつバカだけど、薫子の親父さんに告げ口するようなことはしねぇ...と思うから、とりあえず今日は帰ろうぜ」
大和が薫子を励ましつつも、不安を隠しきれない表情で言った。
「うん......」
家に帰るのが、こわい......
もし、もう遼ちゃんがお父様に悠とのことを話していたらと思うと。帰りたく、ない。
「あ、あのぉ...私、状況がよく飲み込めていないんだけど.......
薫子と風間くんは恋人同士、なんだよね? なんで隠さなくちゃいけないの?」
ぁ...陽子は、何も事情を知らないんだ。
陽子にはちゃんと事情を説明したい......そう思いながらも、薫子は感情の波が抑えられず、未だ肩を震わせていた。
悠が、大丈夫だから...と宥めるように薫子の背中をさする。
「櫻井財閥と風間財閥は両親同士の折り合いが悪くて......犬猿の仲なんだ」
それに続いて薫子が悠の胸から離れ、陽子に向き直った。
私から、直接言わなくちゃ......
「わた、しと...悠が......付き合っていることを、もし知られてしまったら......別れさせられてしまうから......ずっと秘密にしてて。
......陽子にも、言えなくて...ごめんね」
薫子は喉から声を絞り出し、なんとかそこまで言うと沈黙した。嘘をついていた罪悪感から、陽子を見ることが出来なかった。
ようやく友達が出来たと思ったのに、陽子が私から離れていってしまう......
でも、隠し事をしていたのは私の方なんだし、仕方ないよね。
そう考えていた薫子を、陽子がガバッと抱き締めた。
「ぇ...よう、こ?」
「薫子、今まで誰にも言えなくて辛かったでしょ......
好きなのに、好きって言えなくて、彼氏なのに、友達だって言わなくちゃいけなかったなんて。
ごめん、知らなくて......」
ギュッと力強く抱き締める陽子の背中に薫子はそっと手を添えた。
友達で、いてくれるんだ。私の気持ちに、陽子が寄り添ってくれている。
すごく、嬉しい......
薫子は陽子の優しさに触れ、先ほどとは違う涙が瞳の奥から滲み出す。
すると突然、陽子がハッとして顔を上げた。
「えっ、遼くんは両家の諍いを知ってて、それで薫子のお父さんに告げ口するなんて言ったんだ!? なんて卑怯なのっっ!」
怒りで拳を震わせた。
「ごめんなさい...私が余計なことを言ったばかりにこんなことになっちゃって......」
真奈美が申し訳なさそうに肩を落とした。
悠がすっと顔を上げた。
「いや...最終的に、恋人だって言ったのは俺だから。隠し通さなくちゃいけないことは分かっていたのに、薫子の辛そうな顔を見るのが耐えられなかった。
ごめん......」
「あいつバカだけど、薫子の親父さんに告げ口するようなことはしねぇ...と思うから、とりあえず今日は帰ろうぜ」
大和が薫子を励ましつつも、不安を隠しきれない表情で言った。
「うん......」
家に帰るのが、こわい......
もし、もう遼ちゃんがお父様に悠とのことを話していたらと思うと。帰りたく、ない。
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