【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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崩れた均衡

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 カラオケの部屋をを出て受付に行くと、すでに大和が皆の分を精算してくれていた。

「じゃ、いこっか」
「うん」

 カラオケを出たすぐの道には、悠の迎えの車は見当たらない。

 この先に、停まってるのかな......

 悠の背中を視界に入れながら、少し後ろを陽子と一緒に薫子は重い足取りで歩く。

 少しでも長く、こうして悠と歩いていたい......この背中に縋りつき、今すぐにでも甘えたい衝動に駆られてしまう。 

 悠は、カラオケのある大通りに沿ってまっすぐ歩いている。通りに停車している車や、先程から「空車」とオレンジ色に光る電光板を載せたタクシーが何台も脇を通り過ぎて行くが、目を留める様子はない。

 やがて、大通りから左へ曲がり、細い裏通りへと入って行く。

 どこか、行くつもりなのかな......

 黄色の大きな看板を横切り、ある機械の前で、悠が立ち止まった。

「え......」

 悠は黄色い機械にずらっと並んだ数字ボタンを一瞥した後、「3」を押す。すると、機械の画面に先ほど押した「3」と共に「800円」と表示された。それを確認すると財布から紙幣を抜き取り、悠はそれを指に挟みながら機械に差し込む。

 少しの間のあと、小気味よい硬貨が重なりながら落ちてくる音と、遠くで「ガチャンッ」と何かが外されるような金属音が響いた。

 初めて見る機械と悠の指の動きを不思議そうにじっと見つめていた薫子に、悠が振り向いた。

「実は、車の免許を取ったんだ」

 連れられた目の前には、黒のレクサスGSが停まっていた。

「これって...」
「うん、俺の車。本当は、この前のコンサートの時に見せようと思ってたんだ。
 今日、薫子を送ることになってよかった。...あいつに先越されたのは癪だけど」

 そう言った悠の背中は一瞬、黒いオーラを纏っていた。

 やっぱり...怒ってたんだ......

「えっ、風間くんって今まで免許持ってなかったんだ? どうやって大学、通ってたの?」

 陽子は、悠が今まで車を持っていなかったことを逆に意外に感じていた。悠ならお金に不自由はしていないだろうから、てっきり車で通っているものと思っていたからだ。

「迎えの車に来てもらってた」

 そうさらりと言われ、「さすが、セレブ......」陽子が苦い笑顔で呟く。

 悠が柔らかく薫子を見つめ、助手席の側に回ると優雅に扉に手をかけた。

「乗って?」


 薫子はトクン、と鼓動が跳ねるのを感じながら頬を染め、悠を見上げた。

 だが、薫子の家に向かうということで、もしものことを考え、薫子は陽子と共に後部座席に座ることになった。

 悠が少し眉間を寄せ、呟く。

「本当なら、薫子と二人でドライブしたかったんだけど......」

 あまりにもストレートな悠の言葉に薫子は赤面し、陽子はムッとした。

「ごめんなさいね、ふたりのラブラブな時間を邪魔しちゃって。風間くんって無口でクールな王子だって噂に聞いてたけど、呆れるくらい薫子とは態度が違うのね。
 もうそんなの知ったら好きになんてなれないわ、凄すぎて」
「ご、ごめんね...陽子」

 陽子は私のためについてきてくれてるのに、なんで悠、そんなこと言っちゃうの......

「ププッ...もぉ、薫子、めちゃめちゃ焦ってるし! ほんっと、可愛いんだから」
「えっ、えっ...!?」

 先程までむくれていた陽子が急に笑い出し、薫子はついていけずに動揺する。そんな薫子を悠がバックミラー越しに見つめ、柔らかく微笑む。

「うん、知ってる」

 ゆゆゆ、悠......っっ。陽子の前で、恥ずかしい......

「はぁーあ、ごちそうさま。ほんっと薫子、愛されてるね」

 陽子の言葉に、薫子はますます顔を火照らせた。
 
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