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忍び寄る足音
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振り返っちゃダメ......振り返ったらそこには...必ず、悠がいるから。
その胸に飛び込んでしまいたくなる。
前を、向かなくちゃいけないのに......
薫子は全身が汗ばみ、躰が小刻みに震えるのを感じた。
するとそこへ、陽子の手が伸ばされる。
「行こうっ」
力強い言葉と差し出された手に勇気をもらい、薫子は陽子の手を握った。
本当に、陽子がいてくれてよかった......
角を曲がった途端、いきなり足が止まった陽子の背中に薫子は顔をぶつけた。
「ねぇ...薫子の家って、まさかあのお屋敷......な、わけ?」
「え、そうだけど?」
どこまでも続く高い塀。塀に囲まれた正面には薔薇と蔓を模した黒い鉄の大きな門。門の左右には監視カメラが備え付けてあり、不気味な赤い光を放つ。
その奥に聳える、まるでここはヨーロッパかと思わせるような豪奢な白亜の洋館。
それらが陽子の視界の先にはあった。
「さ、すが...櫻井財閥、令嬢......」
今度は陽子の足が竦んでいる。
「陽子、お願い。ついて来て......」
薫子に乞われ、陽子はゴクリと喉を鳴らすと足を踏み出した。
インターホンを鳴らすと暫くの間の後、薫子が陽子と共に帰宅したことを告げた途端、門が自動的に開いた。
門から玄関まで続くポーチの両脇は見事な庭園となっていた。庭園の奥には小さな噴水まであり、そこに白い天使像まである。
陽子はきょろきょろと落ち着きなく周りを見渡しながら、心細げに薫子の少し後ろをついて歩いた。先ほどまでの威勢の良さは跡形もなく消えている。
途中で警護の者が迎えに来て、薫子と陽子を誘導したため、ますます陽子は緊張で固くなった。
警護の男が鍵を開け、ゆっくりと扉を開いた。
まるで、ドラマに出てくるお屋敷みたい......
陽子が目を見張る。
大理石が敷き詰められた床。両側から伸びる床と同様の大理石の螺旋階段には赤い絨毯が敷かれていた。いかにも高そうな大きな壺のような花瓶には大ぶりの枝や花が生けられていた。
「まぁ、お嬢様! 今日は香西様がお送りになられると聞いておりましたが、どうなされたのですか?」
陽子と共に帰ってきた薫子を出迎えたばあやが、驚いたように声をかけた。
薫子はばあやを目の前にして立ち竦んだ。
ど、どうしよう......
悠と陽子と事前に打ち合わせていたにも関わらず、いざばあやを目にした途端声が出ない......
「初めまして。私、薫子さんと同じ大学の友達で平川陽子といいます。遼くんが突然急用ができたってことで、頼まれて薫子さんを代わりに送ることになりました」
薫子の様子を見かねて、陽子が勇気を奮い起こし、前に進み出た。
「それはそれは......陽子様、どうもありがとうございました。外は寒かったでしょう。もしよろしければ、お茶をお出し致しますので、どうぞお上がりくださいませ」
ばあやは陽子に柔らかい笑みを見せた後、メイドを呼んでくるよう警護の男に指示した。
「あ、あの......お父様はどちらに?」
薫子は、今にも破裂しそうな心臓を感じながら、ばあやに尋ねた。
「本日、旦那様と奥様は取引先のクリスマスパーティーに呼ばれておりまして、ご不在です」
それを聞き、薫子と陽子は顔を見合わせて息を吐いた。
お父様と今日、顔を合わせずに済んでよかったけれど、もし遼ちゃんが電話やメールで私と悠との関係を報告していたら、きっと明日には呼び出されて問い詰められることになる。
まだ、安心はできない......
陽子は薫子を励ますように肩を軽くポンと叩いた。
「じゃあ少しだけ、お邪魔します」
その胸に飛び込んでしまいたくなる。
前を、向かなくちゃいけないのに......
薫子は全身が汗ばみ、躰が小刻みに震えるのを感じた。
するとそこへ、陽子の手が伸ばされる。
「行こうっ」
力強い言葉と差し出された手に勇気をもらい、薫子は陽子の手を握った。
本当に、陽子がいてくれてよかった......
角を曲がった途端、いきなり足が止まった陽子の背中に薫子は顔をぶつけた。
「ねぇ...薫子の家って、まさかあのお屋敷......な、わけ?」
「え、そうだけど?」
どこまでも続く高い塀。塀に囲まれた正面には薔薇と蔓を模した黒い鉄の大きな門。門の左右には監視カメラが備え付けてあり、不気味な赤い光を放つ。
その奥に聳える、まるでここはヨーロッパかと思わせるような豪奢な白亜の洋館。
それらが陽子の視界の先にはあった。
「さ、すが...櫻井財閥、令嬢......」
今度は陽子の足が竦んでいる。
「陽子、お願い。ついて来て......」
薫子に乞われ、陽子はゴクリと喉を鳴らすと足を踏み出した。
インターホンを鳴らすと暫くの間の後、薫子が陽子と共に帰宅したことを告げた途端、門が自動的に開いた。
門から玄関まで続くポーチの両脇は見事な庭園となっていた。庭園の奥には小さな噴水まであり、そこに白い天使像まである。
陽子はきょろきょろと落ち着きなく周りを見渡しながら、心細げに薫子の少し後ろをついて歩いた。先ほどまでの威勢の良さは跡形もなく消えている。
途中で警護の者が迎えに来て、薫子と陽子を誘導したため、ますます陽子は緊張で固くなった。
警護の男が鍵を開け、ゆっくりと扉を開いた。
まるで、ドラマに出てくるお屋敷みたい......
陽子が目を見張る。
大理石が敷き詰められた床。両側から伸びる床と同様の大理石の螺旋階段には赤い絨毯が敷かれていた。いかにも高そうな大きな壺のような花瓶には大ぶりの枝や花が生けられていた。
「まぁ、お嬢様! 今日は香西様がお送りになられると聞いておりましたが、どうなされたのですか?」
陽子と共に帰ってきた薫子を出迎えたばあやが、驚いたように声をかけた。
薫子はばあやを目の前にして立ち竦んだ。
ど、どうしよう......
悠と陽子と事前に打ち合わせていたにも関わらず、いざばあやを目にした途端声が出ない......
「初めまして。私、薫子さんと同じ大学の友達で平川陽子といいます。遼くんが突然急用ができたってことで、頼まれて薫子さんを代わりに送ることになりました」
薫子の様子を見かねて、陽子が勇気を奮い起こし、前に進み出た。
「それはそれは......陽子様、どうもありがとうございました。外は寒かったでしょう。もしよろしければ、お茶をお出し致しますので、どうぞお上がりくださいませ」
ばあやは陽子に柔らかい笑みを見せた後、メイドを呼んでくるよう警護の男に指示した。
「あ、あの......お父様はどちらに?」
薫子は、今にも破裂しそうな心臓を感じながら、ばあやに尋ねた。
「本日、旦那様と奥様は取引先のクリスマスパーティーに呼ばれておりまして、ご不在です」
それを聞き、薫子と陽子は顔を見合わせて息を吐いた。
お父様と今日、顔を合わせずに済んでよかったけれど、もし遼ちゃんが電話やメールで私と悠との関係を報告していたら、きっと明日には呼び出されて問い詰められることになる。
まだ、安心はできない......
陽子は薫子を励ますように肩を軽くポンと叩いた。
「じゃあ少しだけ、お邪魔します」
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