100 / 355
近づく唇
4
しおりを挟む
車内でふたりきりになった途端、遼が緊張で躰を固くした。
「あ...あのよぉ......」
「どう...したの、遼ちゃん......」
そう言いながらも、薫子も遼のただならぬ雰囲気に緊張で喉がカラカラに乾くのを感じていた。
きっと、昨日の話に違いない。遼ちゃんは、何て言ってくるんだろう......
「......お前の親父さんには、話すつもりねぇから。風間のこと......」
「え?」
「俺は、そんなことしなくてもお前を俺のものにする自信があるから、する必要ねぇって言ってんだよ!
......卑怯って思われたくねぇし」
最後は小さな掠れるような声で呟いた。
「あ、ありがとう......遼ちゃん」
薫子は遼の言葉に驚きつつも安堵し、強張っていた躰から力が抜けていくのを感じた。
遼はそんな薫子の様子を横目で確認すると、ふいっと外に顔を向けた。
「それに俺...あいつ、嫌いじゃねぇしな。すっげぇ無愛想で無口で、悔しいぐらい頭いいし、なんでも器用にこなせてムカつくけど、昨日カラオケの時とか見てて、ダチ大切にする奴だってわかったし。
だが、友情と恋愛は別だ。俺はあいつをダチとして気に入ってるが、お前のことは......譲る気、さらさらねぇから」
譲る気、ない...って。
遼の言葉に矛盾を感じながらも、薫子は思わず微笑んだ。
「遼ちゃんって...すごく、いい人だったんだね......」
ぶっきらぼうな言い草をしつつも、遼の精一杯の優しさが伝わってきた。
「なっ、おまっ...今更気づいたのかよ。惚れ直したか、ハッハッハ......」
遼ちゃん、相変わらずすごい自信......
照れて顔を赤くしながらも得意げに笑う遼を見つめながら、いつもの彼と変わらぬ様子に薫子は胸を撫で下ろした。
「まぁ、俺と一緒にいるうちに風間なんて霞むようになるから。どうせ風間と櫻井じゃ、一緒になれねぇしな」
確信に満ちた遼の言葉に、薫子の心臓が針で刺されたようにチクリと痛む。
「お前、あの親父さんに逆らうなんてぜってぇ無理だもんな。見ててわかるっつーの。だから、もう風間なんてさっさと諦めて俺に乗り換えちまった方がいいぞ」
あまりにも軽いその言い草に薫子は愕然すると同時に、言いようのない憤りと悲しみで心の内が支配されていく。
「そ、んなこと...出来ないよ。
私は...悠と出会った時から彼が好きで......その気持ちは今でも変わらない......ううん、もっともっと強くなってる」
遼ちゃんには、分からない。
どれだけ私が悠を愛しているのかということを。両家の対立を思い、悩み、苦しんで......それでも、お父様の意思に背いてでも悠への想いを止めることなど出来なかった。
私には悠しかいない。悠と出会った時から、ずっと...この先も、私は悠しか愛せない。
薫子の瞳は真っ直ぐに遼を見つめているのに、そこには遼ではなく悠の姿が映っているかのように感じた。
そんなに、あいつが好きなのかよ......
遼の躰がカッと熱くなり、助手席の薫子を押し倒し、両腕を掴んだ。
「遼、ちゃ...」
目の前に迫る遼の恐いまでの真剣な顔つきに、薫子はビクリと震え、躰を強張らせた。
お前は、俺だけ見てればいいんだ...俺を見ろ、俺を好きになれ......
遼の顔が薫子に寄せられ、唇が近づく。
「い、や......」
薫子は顔を背け、唇を噛み締め、震えた。
悠...助けて......
薫子の目尻から涙が溢れる。
すると、遼の躰が離れ、ハンドルを握った。
「......早く、行かねぇと。みんな待ってる......」
「......」
薫子は何も答えず、俯いたままだった。
こわ、かった......まだ躰が震えてる......
すごく、真剣な顔つきだった。あんな遼ちゃん、初めて見た。
私......遼ちゃんのことをまだ小等部からの続きのような感じで考えてた。ふざけて頬をつねったり、頭を叩いたりすることはあっても、この前気分が悪くなった時にも何もされなかったし、遼ちゃんは性的なことはしないんだと心のどこかで安心してるところがあった。
でも...遼ちゃんはもう、子供じゃないんだ......
それに、すごく感じた。私への強い思いと嫉妬......
今までどこか信じられない気持ちでいたけれど......遼ちゃんは、私のことを本当に、好き...なんだ。
薫子は、未だ震えが止まらない躰をギュッと抱き締めた。
「あ...あのよぉ......」
「どう...したの、遼ちゃん......」
そう言いながらも、薫子も遼のただならぬ雰囲気に緊張で喉がカラカラに乾くのを感じていた。
きっと、昨日の話に違いない。遼ちゃんは、何て言ってくるんだろう......
「......お前の親父さんには、話すつもりねぇから。風間のこと......」
「え?」
「俺は、そんなことしなくてもお前を俺のものにする自信があるから、する必要ねぇって言ってんだよ!
......卑怯って思われたくねぇし」
最後は小さな掠れるような声で呟いた。
「あ、ありがとう......遼ちゃん」
薫子は遼の言葉に驚きつつも安堵し、強張っていた躰から力が抜けていくのを感じた。
遼はそんな薫子の様子を横目で確認すると、ふいっと外に顔を向けた。
「それに俺...あいつ、嫌いじゃねぇしな。すっげぇ無愛想で無口で、悔しいぐらい頭いいし、なんでも器用にこなせてムカつくけど、昨日カラオケの時とか見てて、ダチ大切にする奴だってわかったし。
だが、友情と恋愛は別だ。俺はあいつをダチとして気に入ってるが、お前のことは......譲る気、さらさらねぇから」
譲る気、ない...って。
遼の言葉に矛盾を感じながらも、薫子は思わず微笑んだ。
「遼ちゃんって...すごく、いい人だったんだね......」
ぶっきらぼうな言い草をしつつも、遼の精一杯の優しさが伝わってきた。
「なっ、おまっ...今更気づいたのかよ。惚れ直したか、ハッハッハ......」
遼ちゃん、相変わらずすごい自信......
照れて顔を赤くしながらも得意げに笑う遼を見つめながら、いつもの彼と変わらぬ様子に薫子は胸を撫で下ろした。
「まぁ、俺と一緒にいるうちに風間なんて霞むようになるから。どうせ風間と櫻井じゃ、一緒になれねぇしな」
確信に満ちた遼の言葉に、薫子の心臓が針で刺されたようにチクリと痛む。
「お前、あの親父さんに逆らうなんてぜってぇ無理だもんな。見ててわかるっつーの。だから、もう風間なんてさっさと諦めて俺に乗り換えちまった方がいいぞ」
あまりにも軽いその言い草に薫子は愕然すると同時に、言いようのない憤りと悲しみで心の内が支配されていく。
「そ、んなこと...出来ないよ。
私は...悠と出会った時から彼が好きで......その気持ちは今でも変わらない......ううん、もっともっと強くなってる」
遼ちゃんには、分からない。
どれだけ私が悠を愛しているのかということを。両家の対立を思い、悩み、苦しんで......それでも、お父様の意思に背いてでも悠への想いを止めることなど出来なかった。
私には悠しかいない。悠と出会った時から、ずっと...この先も、私は悠しか愛せない。
薫子の瞳は真っ直ぐに遼を見つめているのに、そこには遼ではなく悠の姿が映っているかのように感じた。
そんなに、あいつが好きなのかよ......
遼の躰がカッと熱くなり、助手席の薫子を押し倒し、両腕を掴んだ。
「遼、ちゃ...」
目の前に迫る遼の恐いまでの真剣な顔つきに、薫子はビクリと震え、躰を強張らせた。
お前は、俺だけ見てればいいんだ...俺を見ろ、俺を好きになれ......
遼の顔が薫子に寄せられ、唇が近づく。
「い、や......」
薫子は顔を背け、唇を噛み締め、震えた。
悠...助けて......
薫子の目尻から涙が溢れる。
すると、遼の躰が離れ、ハンドルを握った。
「......早く、行かねぇと。みんな待ってる......」
「......」
薫子は何も答えず、俯いたままだった。
こわ、かった......まだ躰が震えてる......
すごく、真剣な顔つきだった。あんな遼ちゃん、初めて見た。
私......遼ちゃんのことをまだ小等部からの続きのような感じで考えてた。ふざけて頬をつねったり、頭を叩いたりすることはあっても、この前気分が悪くなった時にも何もされなかったし、遼ちゃんは性的なことはしないんだと心のどこかで安心してるところがあった。
でも...遼ちゃんはもう、子供じゃないんだ......
それに、すごく感じた。私への強い思いと嫉妬......
今までどこか信じられない気持ちでいたけれど......遼ちゃんは、私のことを本当に、好き...なんだ。
薫子は、未だ震えが止まらない躰をギュッと抱き締めた。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる