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近づく唇
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薫子は遼と二人きりになった途端、居心地の悪さを感じて沈黙した。
すると、遼がとびきりの笑顔を薫子に見せる。
「メリークリスマス!!!」
え......
「......メリー、クリスマス......?」
薫子が戸惑いながら答えると、遼が薫子の元に歩み寄り、ポコンと頭を叩いた。
「おまっ、クリスマスなんだからもっと嬉しそうな顔しろよ」
「う...うん......?」
どう反応すればいいいのか、分からないんだけど......
「お前んち、でけぇのにクリスマスツリー飾らねぇんだな」
応接間ですら20畳はあるこの広いスペースにはクリスマスツリーはもちろん、クリスマスを感じさせるものは何もない。
だが、薫子はそれに対して疑問をもったことはなかった。これが、櫻井家での日常風景だからだ。
「......お父様がそういうのは取引先や関連事業主催のパーティーで飽き飽きしてるから、クリスマスは家ではお祝いしてないの。キリスト教じゃないし......」
「えぇ、マジかよ!? じゃあ、子供の時にサンタクロースとか信じてなかったのか!?
靴下ぶら下げたり、サンタにクッキーと牛乳用意したり、となかいの餌撒いたりしなかったのかよ!?」
え、そんなことまでするの!?
薫子は先ほどまでの不安を思わず忘れ、遼の話に引き込まれていた。
「......ずいぶん本格的なことをしてたんだね、遼ちゃんって」
「普通だろ、そんなん。あのなぁ、クリスマスイブといやぁ子供達が期待に胸膨らませてサンタを待ち焦がれる日って決まってんだよ。んで、クリスマスの早朝はツリーの下に集まってプレゼント開けるのが、何よりの楽しみだろ!?」
「そう、なんだ......」
遼ちゃんは小さい頃からそんな風にしてクリスマスを過ごしてきたんだ。なんて温かい家庭なんだろう......
薫子は、想像するだけで憧憬の念を抱いた。
「じゃ、そういうことで行くぞ」
遼が薫子の手首を掴んだ。
「え?どこへ......?」
「俺ん家。これからみんなでプレゼント開けっから。早くしねぇとみんな待ちくたびれっぞ」
遼は今度こそ責任もって薫子を送迎するという約束を取り付け、外へと出た。
屋敷の前には白いシボレーのCorvette Stingrayが停まっている。遼がアメリカからわざわざ送ったというほど愛着している車だ。
『今までどこに行くにも一緒の相棒だったし、置いてくなんて可哀想だろが』
昨日遼からそんな言葉を聞き、彼の優しい一面を垣間見た気がした。
「ほら、乗れよ」
遼はさっさと運転席側へと移動した。
昨日悠は、扉を開けてエスコートしてくれたな......
薫子は思わずそんなことを考えていた。
ごめんなさい、悠......貴方を好きだと思いながらも、こうして遼ちゃんの誘いを断ることが出来ず、流されてしまっている。
この状況をどうすることも出来ないでいる自分が、嫌で仕方ない......
薫子は胸元のペンダントにそっと手を当てた。
すると、遼がとびきりの笑顔を薫子に見せる。
「メリークリスマス!!!」
え......
「......メリー、クリスマス......?」
薫子が戸惑いながら答えると、遼が薫子の元に歩み寄り、ポコンと頭を叩いた。
「おまっ、クリスマスなんだからもっと嬉しそうな顔しろよ」
「う...うん......?」
どう反応すればいいいのか、分からないんだけど......
「お前んち、でけぇのにクリスマスツリー飾らねぇんだな」
応接間ですら20畳はあるこの広いスペースにはクリスマスツリーはもちろん、クリスマスを感じさせるものは何もない。
だが、薫子はそれに対して疑問をもったことはなかった。これが、櫻井家での日常風景だからだ。
「......お父様がそういうのは取引先や関連事業主催のパーティーで飽き飽きしてるから、クリスマスは家ではお祝いしてないの。キリスト教じゃないし......」
「えぇ、マジかよ!? じゃあ、子供の時にサンタクロースとか信じてなかったのか!?
靴下ぶら下げたり、サンタにクッキーと牛乳用意したり、となかいの餌撒いたりしなかったのかよ!?」
え、そんなことまでするの!?
薫子は先ほどまでの不安を思わず忘れ、遼の話に引き込まれていた。
「......ずいぶん本格的なことをしてたんだね、遼ちゃんって」
「普通だろ、そんなん。あのなぁ、クリスマスイブといやぁ子供達が期待に胸膨らませてサンタを待ち焦がれる日って決まってんだよ。んで、クリスマスの早朝はツリーの下に集まってプレゼント開けるのが、何よりの楽しみだろ!?」
「そう、なんだ......」
遼ちゃんは小さい頃からそんな風にしてクリスマスを過ごしてきたんだ。なんて温かい家庭なんだろう......
薫子は、想像するだけで憧憬の念を抱いた。
「じゃ、そういうことで行くぞ」
遼が薫子の手首を掴んだ。
「え?どこへ......?」
「俺ん家。これからみんなでプレゼント開けっから。早くしねぇとみんな待ちくたびれっぞ」
遼は今度こそ責任もって薫子を送迎するという約束を取り付け、外へと出た。
屋敷の前には白いシボレーのCorvette Stingrayが停まっている。遼がアメリカからわざわざ送ったというほど愛着している車だ。
『今までどこに行くにも一緒の相棒だったし、置いてくなんて可哀想だろが』
昨日遼からそんな言葉を聞き、彼の優しい一面を垣間見た気がした。
「ほら、乗れよ」
遼はさっさと運転席側へと移動した。
昨日悠は、扉を開けてエスコートしてくれたな......
薫子は思わずそんなことを考えていた。
ごめんなさい、悠......貴方を好きだと思いながらも、こうして遼ちゃんの誘いを断ることが出来ず、流されてしまっている。
この状況をどうすることも出来ないでいる自分が、嫌で仕方ない......
薫子は胸元のペンダントにそっと手を当てた。
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