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近づく唇
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逸子に案内されてリビングルームへと入ると、そこには天井まで届きそうなくらいの高さのクリスマスツリーが飾られていた。赤や青や銀色のオーナメントが飾られ、モールが張り巡らされ、その頂点には大きな金色の星が煌めいている。ツリーの下にはたくさんのプレゼントが溢れんばかりに置かれていた。
「立派なクリスマスツリーですね」
そう言った薫子に、遼が答えた。
「親父のこだわりでさぁ、本物の樅の木じゃねぇと嫌だからってわざわざ取り寄せたんだぜ。しかもこんなでけぇの、なかなか日本じゃねぇのに。
本物は匂いが違うんだよな、親父?」
遼が視線を向けた先には、父親の宏和が茶色い革張りの1人掛けソファにゆったりと腰掛けていた。読んでいた新聞を膝に下ろし、視線が遼と薫子に向き返される。
「あぁ...クリスマスはやっぱり本物の樅の木じゃないと雰囲気が出ないんでな。
やぁ、薫子さんいらっしゃい。家内と息子の我儘に付き合わせてすまないね」
「いえ、とんでもないです......こちらこそ、ご家族の団欒にお邪魔してしまって申し訳ないです」
すると逸子が口を挟んだ。
「何言ってるの! 薫子さんは遼の婚約者なんだから、もう家族よ。遠慮しないでちょうだい」
か、ぞく......
その言葉に、薫子の鼓動がドクンと跳ねる。
遼ちゃんのご両親は婚約者ということで、私のことをもう家族として受け入れようとして下さってるんだ。早くお断りしなければいけないのに、そんな勇気もなく、時間だけが経ってしまっている。
今までは、お見合いしたことで遼ちゃんの婚約者となること、そしてお父様の道具として使われることだけを考えていたけれど、それだけじゃなかったんだ。
お見合いして、結婚するということは......遼ちゃんの家族の一員になることでもある。
こんなことをしていたら、お父様や遼ちゃんの思い通りに事が運び、抜け出せなくなってしまう......
「あ、お兄?! もうみんな揃ってたんだ!」
階段を駆け下りる騒々しい足音と共に、若い女の子の声が響いてきた。
「何やってんだ、佳那。お前、また遅くまで漫画読んでて夜更かししただろー。おせぇぞ!」
「っさいなぁ、バカ兄ぃ......って!!! お客さんいるなら言ってよ!!!」
階下まで下りてきた佳那は、ようやく薫子の存在に気付き、慌てたように仰け反った。
「初めまして。櫻井 薫子と申します」
「わっ...は、じめまして......香西 佳那、お兄...ぁ、遼の妹で、青海学園高等部の3年です。
うっわぁぁ...小等部の時に見たことはあったけど、めちゃめちゃ綺麗......お兄に騙されてお見合いさせられて、可哀想......」
「おぅらっ!佳那!おま、余計なこと言うなよ?」
遼が佳那のこめかみを後ろから拳でグリグリした。
「たたたたた......ば、バカ兄!離せぇぇっ!部屋に隠し持ってるエロ本暴露するぞっ!」
「こっいつぅぅ!!!」
薫子はそんなふたりの様子を呆然と見ていた。
す、すごい......こんな兄妹のスキンシップがあるんだ。なんていうか、お互いすごく自然体というか...これが、家族なのかな。
私の家とは、全然違う......
「こらっ、ふたりとも薫子さんの前で恥ずかしいっっ。もういい年して兄妹ケンカなんて、みっともないからやめなさいっ!
ごめんなさいねぇ、薫子さん。もう、いっつもこうなのよ......」
逸子がふたりの間に入り、薫子にペコペコとお辞儀をした。
「い、いえ...大丈夫です」
「まったくしょうがないな、うちの子供達は。ほら、そろそろプレゼント開けるぞ」
宏和が読んでいた新聞を畳み、テーブルの上に置いた。
遼ちゃんのお父様......お見合いの席で顔は合わせたけど、お話する機会はなかったからどんな方か分からなかった。とても落ち着いていて、温かな雰囲気の方だな。
そう思いながら薫子が宏和を見つめていると、穏やかに微笑まれた。
「さ、薫子さんも座って」
「は、はい......」
「立派なクリスマスツリーですね」
そう言った薫子に、遼が答えた。
「親父のこだわりでさぁ、本物の樅の木じゃねぇと嫌だからってわざわざ取り寄せたんだぜ。しかもこんなでけぇの、なかなか日本じゃねぇのに。
本物は匂いが違うんだよな、親父?」
遼が視線を向けた先には、父親の宏和が茶色い革張りの1人掛けソファにゆったりと腰掛けていた。読んでいた新聞を膝に下ろし、視線が遼と薫子に向き返される。
「あぁ...クリスマスはやっぱり本物の樅の木じゃないと雰囲気が出ないんでな。
やぁ、薫子さんいらっしゃい。家内と息子の我儘に付き合わせてすまないね」
「いえ、とんでもないです......こちらこそ、ご家族の団欒にお邪魔してしまって申し訳ないです」
すると逸子が口を挟んだ。
「何言ってるの! 薫子さんは遼の婚約者なんだから、もう家族よ。遠慮しないでちょうだい」
か、ぞく......
その言葉に、薫子の鼓動がドクンと跳ねる。
遼ちゃんのご両親は婚約者ということで、私のことをもう家族として受け入れようとして下さってるんだ。早くお断りしなければいけないのに、そんな勇気もなく、時間だけが経ってしまっている。
今までは、お見合いしたことで遼ちゃんの婚約者となること、そしてお父様の道具として使われることだけを考えていたけれど、それだけじゃなかったんだ。
お見合いして、結婚するということは......遼ちゃんの家族の一員になることでもある。
こんなことをしていたら、お父様や遼ちゃんの思い通りに事が運び、抜け出せなくなってしまう......
「あ、お兄?! もうみんな揃ってたんだ!」
階段を駆け下りる騒々しい足音と共に、若い女の子の声が響いてきた。
「何やってんだ、佳那。お前、また遅くまで漫画読んでて夜更かししただろー。おせぇぞ!」
「っさいなぁ、バカ兄ぃ......って!!! お客さんいるなら言ってよ!!!」
階下まで下りてきた佳那は、ようやく薫子の存在に気付き、慌てたように仰け反った。
「初めまして。櫻井 薫子と申します」
「わっ...は、じめまして......香西 佳那、お兄...ぁ、遼の妹で、青海学園高等部の3年です。
うっわぁぁ...小等部の時に見たことはあったけど、めちゃめちゃ綺麗......お兄に騙されてお見合いさせられて、可哀想......」
「おぅらっ!佳那!おま、余計なこと言うなよ?」
遼が佳那のこめかみを後ろから拳でグリグリした。
「たたたたた......ば、バカ兄!離せぇぇっ!部屋に隠し持ってるエロ本暴露するぞっ!」
「こっいつぅぅ!!!」
薫子はそんなふたりの様子を呆然と見ていた。
す、すごい......こんな兄妹のスキンシップがあるんだ。なんていうか、お互いすごく自然体というか...これが、家族なのかな。
私の家とは、全然違う......
「こらっ、ふたりとも薫子さんの前で恥ずかしいっっ。もういい年して兄妹ケンカなんて、みっともないからやめなさいっ!
ごめんなさいねぇ、薫子さん。もう、いっつもこうなのよ......」
逸子がふたりの間に入り、薫子にペコペコとお辞儀をした。
「い、いえ...大丈夫です」
「まったくしょうがないな、うちの子供達は。ほら、そろそろプレゼント開けるぞ」
宏和が読んでいた新聞を畳み、テーブルの上に置いた。
遼ちゃんのお父様......お見合いの席で顔は合わせたけど、お話する機会はなかったからどんな方か分からなかった。とても落ち着いていて、温かな雰囲気の方だな。
そう思いながら薫子が宏和を見つめていると、穏やかに微笑まれた。
「さ、薫子さんも座って」
「は、はい......」
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