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近づく唇

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 クリスマスツリーを囲んで次々とプレゼントが手渡され、包装紙を破る音と歓声が賑やかに響き渡る。中には差出人が「サンタ」となっているものもあり、包装紙を開ける前から何が入っているのかで大いに沸いていた。

 家族で過ごすクリスマスって、こんなに温かいものなんだ......

 薫子は微笑ましく遼の家族を見つめながらも、冷え切った自分の家庭を思うと寂しい気持ちを感じずにはいられなかった。

「はい、これは薫子さんに」

 逸子が赤地にサンタクロースととなかいの絵が描かれたラッピングペーパーに包まれた大きな長方形の箱を手渡した。

「えっ...私に、ですか!?」
「もちろんよ。うふふ、可愛い女の子にプレゼント選ぶの、楽しかったわぁ」
「ママぁ?私も可愛い娘なんですけど」

 佳那がそれを聞いて頬をふくらませた。

「だって、佳那はヒラヒラフリフリした洋服、嫌いじゃない。買っても着てくれないし、いつも寂しいと思ってたのよね」

 プレゼントの中身は逸子が言った通り、白いレース素材のフリルの入ったワンピースだった。

「わぁ、可愛いです。ありがとうございます......」
「あ、私も薫子さんにプレゼント渡すぅっ!」
「てか、こういうのは婚約者の俺が先に渡すもんだろ」

 佳那と遼が言い争ってるうちに、宏和がツリーの下からプレゼントを取ってきて、渡した。

「薫子さん、どうぞ」

 それを見て、ふたりが同時に「パパ!」「親父!」と叫んだ。

 結局薫子は、家族全員からとサンタクロースからの合計5つものプレゼントを受け取った。

「私...何も用意してなくて......本当にすみません」

 薫子は申し訳ない思いでいっぱいになり、謝った。

 逸子が薫子に向かって手を振る。
 
「なぁに水臭いこと言ってるの。家族なんだから、気にしなくていいのよ。たいしたものじゃないし」
「そうそ。お兄なんて、うさぎのぬいぐるみとか、女子大生にあげるプレゼント全然わかってないし。普通はアクセサリーでしょ!」

 佳那の言葉に、薫子はビクッとした。

 薫子の首には、悠から送られたペンダントが掛かったままだ。知られることはないと分かっていても、どうしても意識し、動揺してしまう。

「女のプレゼントといや、ぬいぐるみって相場は決まってんだよ。佳那なんて、なんだよ、あのスマホにつけるストラップ。超キモいぞ」

 遼が薫子の手の中にあった「くくてて」君ストラップを取り上げ、佳那の前でブラブラさせて見せた。 

「っさいなぁ、あれは岩手のご当地ゆるキャラで大人気の「くくてて」君なの!しかも、手乗りひよこ持ってるバージョンのは、かなりレアなんだからねっ!!!」

 佳那が奪い返し、薫子に再び渡す。

 薫子は手の中の得体のしれない緑色の手の形をした顔のニヒルな笑いを見せる「くくてて」君に見入った。

 ほんとだ...確かに、小さなひよこが乗ってる......
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