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決意
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家まで送ってもらうと、遼はまた新年会へと戻るためにそこで別れた。
クリスマスの際に口づけされそうになったため、薫子は内心、また何かされるのでは......と、ビクビクしていたのだが、今日の遼はそんな素振りすら見せることはなかった。
いつもなら出迎えてくれるばあやが、今日は屋敷にいない。ばあやだけでなく、ほとんどのメイドも櫻井ロイヤルホテルでの新年会の手伝いのため出払っており、大きな屋敷はがらんとしていた。
バタバタと足音が近づき、メイドが声をかけた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。早かったのですね」
きっと両親もばあやもいない間に留守を預かり、のんびりと一人の時間を楽しんでいたのだろう。言葉にどこか棘を感じる。
「少し気分が悪くなってしまって。私はこれから部屋で休みます」
「何かご用意致しましょうか」
「いいえ、結構よ。向こうで食べてきたから。ありがとう」
その言葉に、メイドの顔が晴れる。これでまたゆっくりできると思ったのだろう。
部屋に戻った薫子は会場の空気を一刻でも早く振り払いたくて、着物の帯締めに指をかけた。
綺麗にたたむと箪笥の引き出しにしまい、次に帯枕を外し、帯揚げをたたむ。全て脱ぎ終わってから片付けるよりも、こうして脱ぎながら片付けた方が座りこむことなく、立ったまま事が済み、脱ぎ終わった時には全てが片付いていてすっきりするので薫子はそうしていた。というよりも、ばあやがいつもそうしているので、薫子も自然とその方法を覚えたのだった。
腰紐を解き、片付けると着物を衣紋掛けに吊るす。
この日の為に用意したのであろう着物は、人間国宝である寺田宗作の手描き友禅による振袖だ。細密な写生を元にした写実的で独特の味わいをもつ草花や鳥の模様。露草の汁を用いて下絵が描かれ、いくつもの工程を経て、熟練した職人の腕で染め上げられた鮮明な色使い。日本の皇室御用達だけでなく、イギリスの王室にも献上されたという寺田友禅の着物は、衣紋掛けに掛けてあるだけで至高の芸術品としての威光を感じさせる。
---それと同時に、大きな重みも。
肌襦袢を掛けると、躰の締め付けは解放されて楽になるものの、心の重みは増すばかりだった。自然と深い溜息が溢れる。
これから、どうなるのだろう......
クローゼットからシルクの白いロングワンピースを手に取り、さらりと肌に通す。着物用のお尻をすっぽり包む下着を洗濯用の蓋付きの藤バスケットに入れ、ワンピースに合わせた純白のレースのついたシルクのパンティーに履き替えた。簪に手をかけ、後手に外し、髪を手櫛で整えていく。
直毛である薫子の髪は結い上げられ、纏められていたため、それを解いた途端、大きな緩い曲線を描いていた。
......不意に、バルコニーの窓に何かが当たる音が聞こえてきて、薫子は顔を上げた。
コツ...コツ......
小石が当たっているように感じる。何度も当たっているところから、偶然ではなく、誰かが故意に投げてきているようだ。
な、に......
不安に思いながらもカーテンをほんのわずか開けて覗き見る。
庭園を抜けた先に聳える裏門の、監視カメラを備え付けてあるちょうど死角に立っている人影に気づいた途端、薫子の心臓が止まりそうになった。
悠......!!
クリスマスの際に口づけされそうになったため、薫子は内心、また何かされるのでは......と、ビクビクしていたのだが、今日の遼はそんな素振りすら見せることはなかった。
いつもなら出迎えてくれるばあやが、今日は屋敷にいない。ばあやだけでなく、ほとんどのメイドも櫻井ロイヤルホテルでの新年会の手伝いのため出払っており、大きな屋敷はがらんとしていた。
バタバタと足音が近づき、メイドが声をかけた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。早かったのですね」
きっと両親もばあやもいない間に留守を預かり、のんびりと一人の時間を楽しんでいたのだろう。言葉にどこか棘を感じる。
「少し気分が悪くなってしまって。私はこれから部屋で休みます」
「何かご用意致しましょうか」
「いいえ、結構よ。向こうで食べてきたから。ありがとう」
その言葉に、メイドの顔が晴れる。これでまたゆっくりできると思ったのだろう。
部屋に戻った薫子は会場の空気を一刻でも早く振り払いたくて、着物の帯締めに指をかけた。
綺麗にたたむと箪笥の引き出しにしまい、次に帯枕を外し、帯揚げをたたむ。全て脱ぎ終わってから片付けるよりも、こうして脱ぎながら片付けた方が座りこむことなく、立ったまま事が済み、脱ぎ終わった時には全てが片付いていてすっきりするので薫子はそうしていた。というよりも、ばあやがいつもそうしているので、薫子も自然とその方法を覚えたのだった。
腰紐を解き、片付けると着物を衣紋掛けに吊るす。
この日の為に用意したのであろう着物は、人間国宝である寺田宗作の手描き友禅による振袖だ。細密な写生を元にした写実的で独特の味わいをもつ草花や鳥の模様。露草の汁を用いて下絵が描かれ、いくつもの工程を経て、熟練した職人の腕で染め上げられた鮮明な色使い。日本の皇室御用達だけでなく、イギリスの王室にも献上されたという寺田友禅の着物は、衣紋掛けに掛けてあるだけで至高の芸術品としての威光を感じさせる。
---それと同時に、大きな重みも。
肌襦袢を掛けると、躰の締め付けは解放されて楽になるものの、心の重みは増すばかりだった。自然と深い溜息が溢れる。
これから、どうなるのだろう......
クローゼットからシルクの白いロングワンピースを手に取り、さらりと肌に通す。着物用のお尻をすっぽり包む下着を洗濯用の蓋付きの藤バスケットに入れ、ワンピースに合わせた純白のレースのついたシルクのパンティーに履き替えた。簪に手をかけ、後手に外し、髪を手櫛で整えていく。
直毛である薫子の髪は結い上げられ、纏められていたため、それを解いた途端、大きな緩い曲線を描いていた。
......不意に、バルコニーの窓に何かが当たる音が聞こえてきて、薫子は顔を上げた。
コツ...コツ......
小石が当たっているように感じる。何度も当たっているところから、偶然ではなく、誰かが故意に投げてきているようだ。
な、に......
不安に思いながらもカーテンをほんのわずか開けて覗き見る。
庭園を抜けた先に聳える裏門の、監視カメラを備え付けてあるちょうど死角に立っている人影に気づいた途端、薫子の心臓が止まりそうになった。
悠......!!
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