【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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約束

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 病棟で薫子を待っている間、偶然美姫のお袋さんに会った。

 いつも身の回りを綺麗にし、しっかりとした印象だったのに、すっかり変わり果てたその様子に驚いた。化粧すらせず、目の下には隈がくっきりと残り、心労がその表情にはっきりと表れていた。

 それでも、俺に気付くと微笑み、挨拶してくれた。

 なんで、凛子おばさんがここにいるんだ......?

 そう思っていると、向こうから口を開いた。

「実は、誠一郎さんが心不全を起こしてね。今、ここに入院しているの。
 ここならマスコミに追われることもないし」

 心、不全......

「そう、ですか......」

 あんなに元気そうに見えた誠一郎おじさんが倒れたことに、ショックを受けた。だが、ある意味、理解も出来た。

 ふたりのスキャンダルで誰よりも胸を痛めているのは、誠一郎おじさんに違いない。なにしろ、愛娘と弟が恋人関係にあることが発覚したのだ。

 仕事が忙しいながらも美姫のことをいつも目にかけ、娘を愛していた誠一郎おじさんの姿を思い出し、胸を痛めずにはいられなかった。

 美姫......親父さんが倒れたってのに、何してんだ。
 早く来て、顔見せてやってくれ......
 
「あ、の...美姫の......行方は?」

 答えが分かっていながらも、やはり聞かずにはいられない。

 僅かな希望をもって、おずおずと尋ねたが......凛子おばさんは小さく首を振り、溜息を吐いた。

 やっぱり......

 分かっていても、その答えに落胆した。

 美姫......どこに、いるんだ。無事、なのか。

 お前が誰を好きだって、誰と一緒にいたって構わない。
 お前が無事でさえいてくれたら。

 だから......バカな真似だけはすんな。

「すみません。ちょっと、いいですか」

 凛子おばさんに声をかけると、扉の開いていた面談室に入った。

 デイパックからノートを取り出すと破り、テーブルの上でペンを走らせた。書き終わると紙片を四つ折りにし、凛子おばさんに手渡した。

「これを......美姫に、渡してもらえますか」

 少し躊躇いを見せたものの、凛子おばさんは俺から紙を受け取ると頷いた。

「いつ渡せるか分からないけど......美姫に会ったら、渡しますね」

 そう言って背を向けた凛子おばさんの背中は、以前よりも小さく感じた。その寂しそうな背中を見た途端、俺は何かせずにいられなかった。

「おばさん!」

 思わず声をかけた俺に、驚いて凛子おばさんが振り向いて足を止めた。

「俺で何かできることがあったら、なんでも言ってください」
「......ありがとう、大和くん」

 凛子おばさんは寂しげに微笑むと、再び歩き出した。

 それから暫く経たたないうちに、薫子が泣きながら悠の病室から出てきたのだった。

 もしこれが、自分の運命だったら俺は、この手で運命を変えてやるのに。
 俺は、どうすることも出来ない。

 これは、薫子の運命であり、悠の運命であり、美姫の......運命だから。
 部外者の俺が何を言おうとも、どう励まそうとも、結局運命を変えられるのは本人にしかできないんだ。

 俺は、黙って見守ることしかできねぇ。

 大事な、ダチなのに。
 好きな、女なのに。

 ---俺の想いが、届かねぇ。

 悔しい。
 悔、しい......
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