【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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衝撃の事実

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 悠に別れを告げられた日から、再び薫子はベッドで生活するようになっていた。

 相変わらず食欲もない。涙も枯れ果て、もう考えることを拒否したかのようにボーッと過ごし、一日の大半を眠って過ごした。

 薫子の生命を維持する機能が低下しているのではないだろうかと、ばあやは危惧した。

 大和に連れられて薫子が家に帰った時、ばあやは彼女を悠のいる病院へ連れて行ったことは間違いだったと深く後悔した。悠に会えば薫子は元気になると信じていたというのに、帰って来た薫子は今までよりも更に顔色が悪く、死相が出ているかのようだった。ばあやは、薫子がこのまま衰弱死してしまうのではないかと、気が気ではなかった。

 薫子はいつものようにベッドに潜り込み、靄の中を彷徨っていた。歩いても歩いても濃い白霧の中、薫子は何かを探して歩く。

 どこ......
 どこ、なの......

 どこに、いるの?

 コツン。コツン。

 濃霧の中で、微かに音が響く。

 私は、この音を知っている。
 聞いたことが、ある。

 あれは、確か......

 微睡んでいた薫子の瞳がゆっくりと開く。

 悠......が、呼んで...いる。

 私、を......迎えに来たんだ!

 薫子はベッドから足をそろえておりると、窓辺へと近づいた。バルコニーの扉を開け、裸足のまま踏み出したが、不思議と冷たさは感じなかった。

 悠、悠......待ってて。

 行かないで、お願い。
 私も、すぐに行くから。

 今度こそ、私も行くから......
 悠の元に、ちゃんと行くから......

 お願い、待ってて。

 バルコニーの端に置いてある植木鉢の上に足を乗せ、身を乗り出す。薫子の視界の下には、門の下で微笑み、手を振る悠がいた。

 悠! やっぱり、来てくれた......
 別れようなんて、嘘、だったんだ。

 悠! 会いたい。
 今すぐ、会いたい......

 手摺りに寄りかかり、腕を伸ばす。

 その途端、ギシッと木の軋む音が響いた。

 メリメリメリッ!!!

 木の引き裂く音が響き、寄りかかった薫子の躰が、腐って引き剥がされた手摺りと共に落ちていく。

「ッッ!!!」

 ふわっと躰が一瞬浮き上がるような不思議な感覚の後、今度は引き摺り込まれるように頭から真っ逆さまに落ちていった。

 2階のバルコニーから地面まではそれほどの距離はないのに、時間がゆっくりと流れ、人生の出来事が走馬灯のように駆け巡る。

 幼い美姫と手を繋いで笑いあった幼稚舎時代。
 初めて悠に出会った日、髪についた花弁を払ってくれた彼の指先。
 中等部での入学式で再会した薫子の名前を呼んでくれた声。 
 冬の星空を眺めながら見つめた横顔。
 親同士が対立しているとわかった時の戦慄と悲しみ。
 告白してくれた時の胸の高鳴り。
 4人で行った花火大会。
 初めて触れた、彼の冷たい唇。
 抱きしめられた時の硬い胸の感触。
 全てを捧げ、愛し合った肌の温もり。
 
 それらが......次々に鮮かに浮かんでは消えていく。

 瞼の裏に強烈に光を放つ、愛しい人の姿。

 私にだけ見せてくれる、微笑み。
 優しく見つめる、眼差し。
 愛おしく触れる、指。

 悠......!!!

 薫子が意識を失うと同時に、

 ブヮサッ!!!!!

 包み込まれるようにして、彼女の躰が雪で覆われた茂みの上に落ちた。
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