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絶望 ー悠回想ー
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『薫子が、お前に会いに来た』
病室に入ってきた大和が開口一番、そう告げた。
かお、るこが......!!!
激しく動揺するが、震える心をなんとか押し鎮め、『そう、か......』と小さく声を落とす。
『悠のお袋さんに見つかるとヤバいから、今から薫子を呼んでくる。
俺は、日を改めて来るから』
大和は急いでそう言うと、病室の扉へと歩いて行った。
薫子が、会いに来てくれた。
俺に、会いに......
薫子に会いたいと願いつつも、彼女から俺に会いに来てくれることはないだろうと思っていた。父親に俺たちの関係を知られてしまった今、彼女が来る可能性など皆無だと諦めていた。
ここに来ることが、薫子にとってどれだけ勇気のいることだったか。
それを思った時、薫子が強い俺への想いを胸に会いに来てくれたことが、嬉しくてたまらなかった。
扉が開き、その奥から小さな歩幅の足音がゆっくりと近づいてくる音が聞こえてくる。同時に、俺の鼓動がバクバクと高鳴っていく。
足音が止まると、大和の小さな声が落とされた。
『俺は、外で待ってるから』
そんな大和の気遣いが有難くもあり、恨めしくもあった。
大和が出て行くと同時に薫子が入ると、小さくパタンと音をたてて扉が閉められた。この病室に薫子が本当にいるのだと思うと、今すぐにでも駆け出して彼女を抱き締めたい衝動に駆られた。
扉が閉まっても、薫子は立ち止まったままだった。暫くの沈黙の後、彼女が小さく息を呑む音が聞こえる。
俺の姿を見て、ショックを受けているのだと分かった。愛する人に、こんな惨めな姿を晒さなければならないことが、苦しかった。
居た堪れなくなり、俺は彼女から顔を背けた。
『ゆ、ぅ......』
薫子の俺を呼ぶ掠れたその声が、胸を締め付ける。
見ないで。
君にこんな姿、見られたくないんだ......
『ゆ...う......?』
薫子の足音が、一歩ずつ近づいてくる。
薫子......!!!
君に、どれだけ会いたかったか分からない。
この腕に君を抱き、髪を撫で、濡れた瞳を見つめ、涙を拭い、艶やかな唇に触れ、君との愛を、確かめたかった。
けれど、俺にはもう......それが、出来ないんだ。
『分かったんだ』
そう呟いた俺の声に、薫子の足が止まる。
『ぇ?』
疑問をなげかける薫子の声に、胸が張り裂けそうになる。心が、暗闇の中で慟哭する。
だが俺は、告げなければいけない。
『事故にあって、ようやく分かったんだ。俺たちは、結ばれてはいけない運命だったんだ。
......俺はもう、君を守れない』
それは、薫子を突き放すための言葉でもあり、自分に言い聞かせるための言葉でもあった。
『悠......ご、めんなさい。
私が、あの時......空港に行っていれば。悠に、迎えに来てもらわなければ、こんなことには......
ごめ、なさい......ごめっ......ッグ、ウッウッ』
薫子の苦痛に満ちた声が病室に響き、俺の感情を掻き乱す。
違う......違うんだ、薫子。
君のせいじゃない......
空港に行けなかったことを後悔し、俺の事故を自分のせいだと責める薫子に、今すぐにでも駆け寄って抱き締め、その溢れる涙を拭ってあげたかった。
だが、一時の気の優しさは彼女を壊してしまうことになるだけ。
俺は、彼女への愛情を押し殺した。
『例え薫子があの日、空港に来ていたとしても、俺たちが上手くいくことはなかったと思う』
薫子が何か言いかけたが、彼女の言葉を最後まで聞けば心が揺らぎそうで、それを必死に遮って言葉を続けた。
『君の心は、現在の生活を捨てる覚悟が出来ていないままだった。
イギリスで生活を始めたところですぐにホームシックにかかり、生活は破綻していただろう』
たとえ薫子に心の準備が出来ていなかったとしても、イギリスに渡ったら必ず薫子は守ってみせる。ふたりで、幸せな生活を、幸せな未来を築き上げていくんだ。
そう誓っていた事故に遭う前の俺からは、想像も出来ない言葉だった。
病室に入ってきた大和が開口一番、そう告げた。
かお、るこが......!!!
激しく動揺するが、震える心をなんとか押し鎮め、『そう、か......』と小さく声を落とす。
『悠のお袋さんに見つかるとヤバいから、今から薫子を呼んでくる。
俺は、日を改めて来るから』
大和は急いでそう言うと、病室の扉へと歩いて行った。
薫子が、会いに来てくれた。
俺に、会いに......
薫子に会いたいと願いつつも、彼女から俺に会いに来てくれることはないだろうと思っていた。父親に俺たちの関係を知られてしまった今、彼女が来る可能性など皆無だと諦めていた。
ここに来ることが、薫子にとってどれだけ勇気のいることだったか。
それを思った時、薫子が強い俺への想いを胸に会いに来てくれたことが、嬉しくてたまらなかった。
扉が開き、その奥から小さな歩幅の足音がゆっくりと近づいてくる音が聞こえてくる。同時に、俺の鼓動がバクバクと高鳴っていく。
足音が止まると、大和の小さな声が落とされた。
『俺は、外で待ってるから』
そんな大和の気遣いが有難くもあり、恨めしくもあった。
大和が出て行くと同時に薫子が入ると、小さくパタンと音をたてて扉が閉められた。この病室に薫子が本当にいるのだと思うと、今すぐにでも駆け出して彼女を抱き締めたい衝動に駆られた。
扉が閉まっても、薫子は立ち止まったままだった。暫くの沈黙の後、彼女が小さく息を呑む音が聞こえる。
俺の姿を見て、ショックを受けているのだと分かった。愛する人に、こんな惨めな姿を晒さなければならないことが、苦しかった。
居た堪れなくなり、俺は彼女から顔を背けた。
『ゆ、ぅ......』
薫子の俺を呼ぶ掠れたその声が、胸を締め付ける。
見ないで。
君にこんな姿、見られたくないんだ......
『ゆ...う......?』
薫子の足音が、一歩ずつ近づいてくる。
薫子......!!!
君に、どれだけ会いたかったか分からない。
この腕に君を抱き、髪を撫で、濡れた瞳を見つめ、涙を拭い、艶やかな唇に触れ、君との愛を、確かめたかった。
けれど、俺にはもう......それが、出来ないんだ。
『分かったんだ』
そう呟いた俺の声に、薫子の足が止まる。
『ぇ?』
疑問をなげかける薫子の声に、胸が張り裂けそうになる。心が、暗闇の中で慟哭する。
だが俺は、告げなければいけない。
『事故にあって、ようやく分かったんだ。俺たちは、結ばれてはいけない運命だったんだ。
......俺はもう、君を守れない』
それは、薫子を突き放すための言葉でもあり、自分に言い聞かせるための言葉でもあった。
『悠......ご、めんなさい。
私が、あの時......空港に行っていれば。悠に、迎えに来てもらわなければ、こんなことには......
ごめ、なさい......ごめっ......ッグ、ウッウッ』
薫子の苦痛に満ちた声が病室に響き、俺の感情を掻き乱す。
違う......違うんだ、薫子。
君のせいじゃない......
空港に行けなかったことを後悔し、俺の事故を自分のせいだと責める薫子に、今すぐにでも駆け寄って抱き締め、その溢れる涙を拭ってあげたかった。
だが、一時の気の優しさは彼女を壊してしまうことになるだけ。
俺は、彼女への愛情を押し殺した。
『例え薫子があの日、空港に来ていたとしても、俺たちが上手くいくことはなかったと思う』
薫子が何か言いかけたが、彼女の言葉を最後まで聞けば心が揺らぎそうで、それを必死に遮って言葉を続けた。
『君の心は、現在の生活を捨てる覚悟が出来ていないままだった。
イギリスで生活を始めたところですぐにホームシックにかかり、生活は破綻していただろう』
たとえ薫子に心の準備が出来ていなかったとしても、イギリスに渡ったら必ず薫子は守ってみせる。ふたりで、幸せな生活を、幸せな未来を築き上げていくんだ。
そう誓っていた事故に遭う前の俺からは、想像も出来ない言葉だった。
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