【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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突きつけられた現実

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「わ、たし...」

 私は、どうしたい......のか。

 言葉を詰まらせる薫子に、遼は大きく息を吐いた。

「分かってんだろ。風間が、中途半端な気持ちでお前に別れを告げたんじゃねぇってことは。
 俺に、お前のことを託したことも......

 風間は、それがお前にとってそれが一番いいと思ったからそうした」

 私に、とって……

「お前はいつだって誰かの言いなりで、決められた道に従って生きてきた。ずっと、誰かに守られて生きてきた。
 お前は上手くいかないことがあると、自分の殻に閉じこもり、それを破ろうとしねぇ。

 風間が事故に遭って、お前が苦しむのは当然だ。自分を責める気持ちがあるのも分かる。
 ......俺だって、そうだ。けど、それでも俺は前に進んでみせる」

 遼は、自分に誓うように、拳を固く握り締めた。

「お前はどうだ? 今のお前を考えてみろ。
 風間の元にも戻れねぇ。親父にも反抗できねぇ。そんな自分を悲観して、惨めな顔を晒して、『自分は可哀想』ってずっと思いながら生きてくつもりか?
 お前を幸せにしてやりたいと願う俺の想いなんか無視して、俺との結婚や子供を産んじまったことに後悔しながら生きてくつもりか?」

 遼の言葉の矢が、次々に薫子の胸に突き刺さる。

 遼が眉をグッと寄せ、苦しげな表情を見せた。

「俺は、お前を幸せにすると言った。
 ......けど、俺がいくら努力したらからって、お前が自ら幸せだって思わなくちゃ意味がねぇんだよ。

 お前が風間のことが忘れられねぇ、親父を蹴飛ばしてでも一緒になりてぇって覚悟があんなら、それを見せてみろよ。そんな覚悟もなく、仕方ねぇから俺と一緒になるとかやめろ。
 お前だけじゃねぇ、子供だって不幸だ。このままじゃ、俺たちは......誰も幸せになれねぇ。

 お前が、覚悟決めなくちゃなんねぇんだ」

 頭を鈍器で殴られたような衝撃が、薫子に走った。

 悠が自分との別れを選んだことも、遼が自分と結婚し、悠との間にできた子供の面倒までみることを選んだことも、相当の覚悟で、決めたのだ。
 ふたりとも、薫子が幸せになれることを思って決断したことだ。

 それ、なのに......私は......ただただ状況を悲観し、嘆き、諦めるだけだった。

『このままじゃ、俺たちは......誰も幸せになれねぇ』

 遼のその言葉は、雷のように薫子の全身を貫いた。そのあまりにも大きく立ちはだかる決断を前に、薫子は一言も口に出せずにいた。

 重々しい空気が車内を包み込み、沈黙の時が流れる。

 それをぶち破るかのように、突然遼が大きな伸びをし、声を出した。

「はぁー、なんか腹減ったな。いいラーメン屋知ってんだ。付き合え」

 言いながらも、既に車の扉を開けている。

 え? ラーメン?
 な、んで......今......

 戸惑って薫子が動けずにいると、助手席の扉が開いた。

「おら、なにボケっとしてんだ。行くぞ!」
「う、うん......」

 遼の勢いに押され、薫子は車から降りた。

 先ほどまでの暗く重い雰囲気などなかったかのような遼の態度に戸惑いつつも、救われた思いもあった。

 これが、遼ちゃんなりの......私への、気遣いなんだ。
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