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彼女の決意、私の思い

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「大和とは、出来るだけ早いうちに結婚しようと思ってる。お父様から来栖財閥を継ぐための帝王学を大和には学んでもらって、私はお母様から秘書として色々と教えてもらうつもり。
 きっと、私と秀一さんのことをまだ疑う人やバッシングはなくならないだろうけど......来栖財閥を支えてくれる会社や社員の人たちのためにも、私は全てを尽くすつもりでいる」

 美姫は、はっきりとそう言い切った。彼女の言葉には、迷いがなかった。

 薫子は力強い美姫の言葉に感銘を受けながらも、やはり大和のことが気にかかった。

「ねぇ、美姫は......大和を愛してるの?」

 こんな形で大和の愛情を利用するなんて、残酷だと思わないの?

 美姫は、いったん瞳を伏せた後、真っ直ぐに薫子を見つめた。

「私は秀一さんを今でも愛してるし、彼のことを忘れることは決して、ない......たぶん、ずっと秀一さんのことを愛し続けると思う。

 それでも、大和は...... そんな私を丸ごと受け止めてくれた。

 私はもう、高校生の時の私とは違う。秀一さんを忘れたくて大和と付き合った、あの時の私とは......
 大和の愛情と、真っ直ぐに向き合おうって思ってる。

 大和じゃなければ......婚約なんて、絶対に考えられなかった。

 いつも私に、真っ直ぐな愛情を伝えてくれた。
 私に救いが必要な時には、必ず傍にいてくれた。
 いつも私を力強い手で、引っ張り上げてくれた。

 秀一さんに向ける愛情とは異なるけれど、私にとって大和は......かけがえのない、友達以上の、失いたくない存在なの。
 そして、一生を共にしたいって本当に思ってる」

 美姫の思いにも胸を打たれたが、大和の美姫を思う深い愛情に、薫子は胸が熱くなった。

 薫子は、もしかしたら誰よりも大和の美姫への思いに気づいていたかもしれない。彼の美姫を見つめる視線を感じ、言葉の端々に彼女への思いを感じてきた。

 薫子は、美姫の秀一への思いを知りながらも、密かに大和と美姫が恋人になることを願っていた。けれど、高校生の時に叶えられたそんな夢は、儚く消えた。

 大和がどれだけ美姫を忘れようとしても、彼の心の中には常に美姫の存在があると感じた美姫が秀一と恋人になっても、それは変わることがなかった。

 他の男を愛し続けるであろう女性と婚約し、結婚するなどとは、普通では考えられない。けれど、大和の思いを知っている薫子は、それが大和にとっての幸せなのだと、そう思えた。

 それは、美姫が秀一を忘れることはないと、正直に告白したことにもある。もし以前のように気持ちを隠して付き合ったのなら、秀一を忘れるために大和と結婚しようとするのなら、ふたりの関係は上手くいくことはないだろう。

 大和......良かったね。
 本当に。本当に......良かった。

 きっと、ふたりなら......これから幸せな未来へ向けて、歩いて行けるはず。

「美姫。婚約、おめでとう」

 薫子は感極まって潤んだ瞳で笑顔を向け、両手で美姫の片手を包み込んだ。

 美姫は、もう一方の手で薫子の手を包み込んだ。

「薫子、ありがとう......私、幸せになるね」

 そう言って微笑んだ美姫の笑顔は、美しく輝いていた。
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