【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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彼女の決意、私の思い

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「そんな私たちの元に......お母様が、現れたの。
 お母様は、お父様が危篤だと伝え、今すぐ病院に来てくれと言われた」
「ッ......」

 おじ様が!?

 誠一郎の危篤を知らなかった薫子は、それを聞き、顔を真っ青にした。ここに美姫がいることから、今は落ち着いた状態にあるのだろうが、それでも薫子はその事実に狼狽した。

「そう言われてさえもまだ、私は......秀一さんから離れることなど、考えてなかった。
 秀一さんには、父に会わせてもらえるよう頼みこんだ。その代りに、一緒にウィーンに行くからと言って。

 私は日本を捨て、ウィーンで秀一さんと暮らそうと思ってた」

 ウィーン、に......

『......ウィーンに秀一さんについて行って、彼以外知る人がいないという状況が、どんなに孤独なのか感じたの。秀一さんは私のことを気遣ってくれてはいたけど、仕事で来ている以上ずっと一緒にいることは出来なくて。
 私は......実際に、現地に行ってしまったことによって......ウィーンに住むことが、...怖、くなっちゃったの』

 ウィーンから帰ってきた美姫は、そう語っていた。その美姫が、ウィーンに行く決断をしなければならないほど、彼女は追い詰められていたのだ。

 日本には自分たちの居場所はないと知り、秀一の未来の為を思い、美姫は悲愴な思いでその道を選んだのかと思うと......胸が苦しくなりながらも、愛する人のためにそこまで出来る美姫を羨ましく思う気持ちもあった。

「けれど、現実へと引き戻された時......私は、どれだけ自分が家族や世間に迷惑をかけ、被害を与えていたのかを知った。これは、私と秀一さんだけの問題では済まされないことを、知ってしまった」

 薫子は、睫毛を伏せた。週刊誌で読んだ、来栖財閥への影響を書いた記事が頭に浮かんだ。

「お父様は......心不全で倒れられて......お医者様からは、このままいけば2年もたないかもしれないって......」
「そ、んな......」

 あの、いつでも明るく元気なおじ様が......信じられない。

「私は......お父様を置いて、来栖財閥のこの状況を無視して秀一さんとウィーンに行くことなど、出来ないと思った」

 そう言ってから、美姫は自嘲するような笑みを浮かべた。

「ううん......それは、綺麗事。私は、何よりも......秀一さんの為に、そうするしかないと思った。

 私が秀一さんとウィーンに逃げたとしても、叔父と姪の関係であることはなくならない。一生、付いて回る。
 向こうでもマスコミに追われるようなことがあれば、秀一さんが再び狂気に染まってしまうかもしれない。ウィーンでの輝かしい彼の経歴に、傷を付けてしまうことになるかもしれない。
 世界に羽ばたくべき一流のピアニストである秀一さんの未来を、私は......ック......奪っては、いけない......の。

 私は、彼のために......秀一さんを、愛しているからこそ......別れる決断をしたの......」
「それ、じゃ......」

 秀一さんとの関係を隠蔽するために、あの記者会見を開いたんじゃなかったの!?

 そんな薫子の言葉を読み取っているかのように、美姫が頷いた。

「私は大和に......婚約し、来栖財閥を立て直すよう、お願いした」

 美姫、から......大和に婚約するよう、お願いしたんだ。

「で、も......それって......」

 それは、偽装なんだよね?
 本気では、ないんだよね?

 だって、美姫は秀一さんを愛しているんだもの。

 いくら秀一さんと別れたからって、まさか大和と結婚して本気で来栖財閥を立て直そうなんて考えてるわけじゃないでしょ?
 マスコミが収束するまでの、偽装だよね......?
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