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婚約破棄
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「はぃ.....」
蚊の鳴くような声で答えたものの、それから後が続かない。そんな薫子を、遼の家族は黙って見守っていた。
薫子の様子を見て、遼がグッと拳を握り、身を乗り出そうとした。それに気づいた薫子が、遼の手首を握る。
「かぉ...」
言いかけた遼に、薫子は「大丈夫だから......」というように、首を振ってみせた。遼の肩から力が抜け、頷く。
薫子は宏和、逸子、そして佳那と3人それぞれに視線を向けた。声が震えるが、喉から精一杯搾り取るようにして言葉を紡ぐ。
「今日、私は......お詫びをするために、ここに参りました」
宏和と逸子は困惑した表情を見せ、佳那はその真意を探ろうとするかのように訝しげな目つきになる。
それを見て薫子の胸がズクズクと痛み、もうこれ以上ここにいたくない気持ちでいっぱいになる。だが、薫子の話に真剣に耳を傾ける遼の存在を横に感じ、思い留まった。
ここから私は、踏み出さないと。
遼ちゃんのご家族に対峙することすら出来ないのなら、お父様とだなんて、とても無理......
「先ほど......私から遼さんに、婚約破棄をお願い致しました。
たい、へん......ッ申し訳......ございません」
薫子は、深々と頭を下げた。
「ぇ......」
遼以外の全員が思ってもいなかった薫子の言動に呆気にとられ、言葉もなかった。
暫くしてから、夢から醒めたように逸子がハッとし、慌てたように声を上げた。
「ど、どうしてそんなこと!? だって、式はもう間近で、赤ちゃんだって産まれるのよ!
遼!! あんた薫子さんに何したの!? あんたがしっかりしてないから、薫子さんが...」
「遼さんは!! 何も......悪く、ありません。わたし、の......ッッ......すべ、て......私の、せい...なんです......」
逸子の言葉を遮った薫子は、顔を下げたまま、肩を大きく震わせた。
「薫子、さん......」
大人しくて声を荒げることなどないと思っていた薫子の態度に、先程までの逸子の勢いが風船が萎むように小さくなる。薫子は、申し訳なくて逸子の顔を見上げることが出来なかった。
「お腹、の......赤、ちゃん......
遼、さんの......子供じゃ、ないん...です......ッ」
苦しげに絞り出された薫子の言葉の一句一句を聞いていた逸子の顔が、青ざめる。
「りょ、う......」
思わず息子に顔を向けた逸子に対し、「そうだ」と同意するかのように、遼が頷く。薫子の言動に全く動じていないその態度に、逸子はハッとした。
じゃあ、遼は......ずっとこのことを、知ってて.....
「っふざけないでよ!」
突然、佳那が立ち上がった。
怒りで顔が真っ赤になり、興奮が抑えられない程に全身を震わせた彼女は、その煮え滾る感情を薫子にぶつけた。
「お腹の子供がお兄の子供じゃないってどういうこと!? じゃあ、お兄は裏切られたってこと?
そんなのって......ない......
ック...お兄が、どんな思いでアメリカから日本に来たのか、知ってんの!? お兄は、ずっと薫子さんのことが好きで、アメリカの暮らし捨てて、パパの会社を継いででっかくするんだって夢まで諦めて、養子に入るって言ってたのに!!
大人しい顔して、自分は何も知りませんって顔して、やることやって、お兄の気持ち踏みにじって、弄んで......許せない!!」
普段しょっちゅう喧嘩し、決して仲がいいとは言えないはずの妹の態度に、遼は驚きつつも彼女を制した。
「佳那!」
「お兄もお兄だよ! なんで裏切られながら、他の男の子供だって知ってんのに結婚なんかしようって考えたの?
お兄のためにアメリカの仕事全部こっちに移して、苦労かけたパパとママにまで何も言わないなんて、そんなのおかしいよ! 私、たち......家族なんだよ!
ッグわた、し......薫子さんも、お兄も......絶対に、許さないから!!!」
溢れんばかりの涙を両方の瞳に溜めた佳那は、そう言い切ると駆け出した。
階段を一気に駆け上がる音が大きく響いた後、乱暴にドアが閉められる。
その後を、気まずい静寂が部屋全体を包む。
蚊の鳴くような声で答えたものの、それから後が続かない。そんな薫子を、遼の家族は黙って見守っていた。
薫子の様子を見て、遼がグッと拳を握り、身を乗り出そうとした。それに気づいた薫子が、遼の手首を握る。
「かぉ...」
言いかけた遼に、薫子は「大丈夫だから......」というように、首を振ってみせた。遼の肩から力が抜け、頷く。
薫子は宏和、逸子、そして佳那と3人それぞれに視線を向けた。声が震えるが、喉から精一杯搾り取るようにして言葉を紡ぐ。
「今日、私は......お詫びをするために、ここに参りました」
宏和と逸子は困惑した表情を見せ、佳那はその真意を探ろうとするかのように訝しげな目つきになる。
それを見て薫子の胸がズクズクと痛み、もうこれ以上ここにいたくない気持ちでいっぱいになる。だが、薫子の話に真剣に耳を傾ける遼の存在を横に感じ、思い留まった。
ここから私は、踏み出さないと。
遼ちゃんのご家族に対峙することすら出来ないのなら、お父様とだなんて、とても無理......
「先ほど......私から遼さんに、婚約破棄をお願い致しました。
たい、へん......ッ申し訳......ございません」
薫子は、深々と頭を下げた。
「ぇ......」
遼以外の全員が思ってもいなかった薫子の言動に呆気にとられ、言葉もなかった。
暫くしてから、夢から醒めたように逸子がハッとし、慌てたように声を上げた。
「ど、どうしてそんなこと!? だって、式はもう間近で、赤ちゃんだって産まれるのよ!
遼!! あんた薫子さんに何したの!? あんたがしっかりしてないから、薫子さんが...」
「遼さんは!! 何も......悪く、ありません。わたし、の......ッッ......すべ、て......私の、せい...なんです......」
逸子の言葉を遮った薫子は、顔を下げたまま、肩を大きく震わせた。
「薫子、さん......」
大人しくて声を荒げることなどないと思っていた薫子の態度に、先程までの逸子の勢いが風船が萎むように小さくなる。薫子は、申し訳なくて逸子の顔を見上げることが出来なかった。
「お腹、の......赤、ちゃん......
遼、さんの......子供じゃ、ないん...です......ッ」
苦しげに絞り出された薫子の言葉の一句一句を聞いていた逸子の顔が、青ざめる。
「りょ、う......」
思わず息子に顔を向けた逸子に対し、「そうだ」と同意するかのように、遼が頷く。薫子の言動に全く動じていないその態度に、逸子はハッとした。
じゃあ、遼は......ずっとこのことを、知ってて.....
「っふざけないでよ!」
突然、佳那が立ち上がった。
怒りで顔が真っ赤になり、興奮が抑えられない程に全身を震わせた彼女は、その煮え滾る感情を薫子にぶつけた。
「お腹の子供がお兄の子供じゃないってどういうこと!? じゃあ、お兄は裏切られたってこと?
そんなのって......ない......
ック...お兄が、どんな思いでアメリカから日本に来たのか、知ってんの!? お兄は、ずっと薫子さんのことが好きで、アメリカの暮らし捨てて、パパの会社を継いででっかくするんだって夢まで諦めて、養子に入るって言ってたのに!!
大人しい顔して、自分は何も知りませんって顔して、やることやって、お兄の気持ち踏みにじって、弄んで......許せない!!」
普段しょっちゅう喧嘩し、決して仲がいいとは言えないはずの妹の態度に、遼は驚きつつも彼女を制した。
「佳那!」
「お兄もお兄だよ! なんで裏切られながら、他の男の子供だって知ってんのに結婚なんかしようって考えたの?
お兄のためにアメリカの仕事全部こっちに移して、苦労かけたパパとママにまで何も言わないなんて、そんなのおかしいよ! 私、たち......家族なんだよ!
ッグわた、し......薫子さんも、お兄も......絶対に、許さないから!!!」
溢れんばかりの涙を両方の瞳に溜めた佳那は、そう言い切ると駆け出した。
階段を一気に駆け上がる音が大きく響いた後、乱暴にドアが閉められる。
その後を、気まずい静寂が部屋全体を包む。
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