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悲しい裏切り
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「櫻井からの電話で、悠と薫子さんが駆け落ちしようとしていたと知った。まるで、昔の僕と華子さんのように......
僕は悠に、『悠は......やはり、僕の子供だな』と言ったが......そうじゃ、ない。
悠は、僕と違って全てを捨てる覚悟だった。空港に来られなかった君を、迎えに行こうとしていた。僕には......そんな勇気は、なかった。
悠に、自分の弱さを見せたくなかったんだ。強い意志で愛する人を守ろうとした悠に、自分の父親が、本当は卑怯で弱虫な人間だと知られるのが恐かった......」
悠人は肩を落とし、俯いた。
「おじ、さま......」
ばあやの告白以来、悠人が悠のように強い気持ちで母を愛し、駆け落ちする覚悟でいたのだと信じていた薫子にとって、悠人の言葉は衝撃的であった。
だが、薫子には悠人の気持ちを理解することが出来た。
誰しもが、悠のように強いわけではない。
恋人を愛しながらも、ずっと一緒にいたいと思いながらも、駆け落ちに踏み出せない人間だっている。
全てを捨てるのが恐いと思ってしまう人間だって、いるのだ。
......自分も、そうであったように。
「僕は、華子さんを救えなかったという罪の意識を背負い、一生独りで生きていくつもりだった。彼女以上に愛せる存在は、いないと思っていた。
けれど、イギリスで静音に出会い、少しずつ励まされ、癒されている自分に気がついた。彼女を、愛してしまっていたんだ......
本当はイギリスで、華子さんのいない世界で、暮らしていくつもりだった。彼女を苦しめるつもりは、なかったんだ......」
娘を不慮の事故で亡くし、それを機に妻が精神を病み、父の死により日本に戻る決断をした悠人。その心中を思うと、薫子は胸が苦しくなった。
「まさか、華子さんの娘である薫子さんが、僕の息子の悠と出会い、恋に落ちるとは......まったく、予想もしていなかったよ。
......運命ってのは、皮肉だね」
悠と同じ黒曜石のような瞳が哀しげに揺らめいた。
「運命の皮肉......なんかじゃ、ありません。
私の母親が誰であろうと、悠の父親が誰であろうと......関係、ありません。悠と私はただ純粋に、惹かれあったんです」
桜の舞い散る中、私に微笑みかけてくれた悠。あなたを見た瞬間から、私は恋に落ちていた。
運命の皮肉なんかじゃない。私たちにとってこれは、かけがえのない出逢いだった。
強い眼差しで訴える薫子に、悠人は口元を手で覆った。
「すまない......君たちには、僕たちの過去は関係ないことだった。
そうだね、君たちは僕たちのことなど関係なく、ただ互いに惹かれあい、思いを紡いでいったんだね」
「わ、私こそ......すみません。生意気なこと、言ってしまって......」
薫子は謝る悠人を前にして、自分の発言を思い出し、恐縮した。
悠のお父様の前で、なんて大胆なことを言ってしまったんだろう......
悠人が膝の上で手を組み、薫子を見つめた。
「悠と薫子さんには、僕の犯した罪のせいで辛い思いをさせてしまい、申し訳ないと思っている。櫻井は......僕が別の女性と結婚した今ですら、僕を敵対視しているからね」
それを聞き、薫子は不思議そうに悠人を見つめた。
「おじさまも、私のお父様を敵視されていらっしゃるのではないんですか」
悠人が困ったような笑みを浮かべる。
「まぁ昔から威圧的で乱暴なところが苦手だったし、華子さんを強引に奪ったことに対しての怒りはあった。
でも、それも昔の話だ......今となっては櫻井を敵視など、していないよ。華子さんを救えなかった僕には、彼を批判する権利なんてない。
それに......華子さんを好きだったことも知っているしね。だからこそ櫻井は、恐れているんだ。君と悠が一緒になることで、僕と華子さんの仲が復活するんじゃないかと」
僕は悠に、『悠は......やはり、僕の子供だな』と言ったが......そうじゃ、ない。
悠は、僕と違って全てを捨てる覚悟だった。空港に来られなかった君を、迎えに行こうとしていた。僕には......そんな勇気は、なかった。
悠に、自分の弱さを見せたくなかったんだ。強い意志で愛する人を守ろうとした悠に、自分の父親が、本当は卑怯で弱虫な人間だと知られるのが恐かった......」
悠人は肩を落とし、俯いた。
「おじ、さま......」
ばあやの告白以来、悠人が悠のように強い気持ちで母を愛し、駆け落ちする覚悟でいたのだと信じていた薫子にとって、悠人の言葉は衝撃的であった。
だが、薫子には悠人の気持ちを理解することが出来た。
誰しもが、悠のように強いわけではない。
恋人を愛しながらも、ずっと一緒にいたいと思いながらも、駆け落ちに踏み出せない人間だっている。
全てを捨てるのが恐いと思ってしまう人間だって、いるのだ。
......自分も、そうであったように。
「僕は、華子さんを救えなかったという罪の意識を背負い、一生独りで生きていくつもりだった。彼女以上に愛せる存在は、いないと思っていた。
けれど、イギリスで静音に出会い、少しずつ励まされ、癒されている自分に気がついた。彼女を、愛してしまっていたんだ......
本当はイギリスで、華子さんのいない世界で、暮らしていくつもりだった。彼女を苦しめるつもりは、なかったんだ......」
娘を不慮の事故で亡くし、それを機に妻が精神を病み、父の死により日本に戻る決断をした悠人。その心中を思うと、薫子は胸が苦しくなった。
「まさか、華子さんの娘である薫子さんが、僕の息子の悠と出会い、恋に落ちるとは......まったく、予想もしていなかったよ。
......運命ってのは、皮肉だね」
悠と同じ黒曜石のような瞳が哀しげに揺らめいた。
「運命の皮肉......なんかじゃ、ありません。
私の母親が誰であろうと、悠の父親が誰であろうと......関係、ありません。悠と私はただ純粋に、惹かれあったんです」
桜の舞い散る中、私に微笑みかけてくれた悠。あなたを見た瞬間から、私は恋に落ちていた。
運命の皮肉なんかじゃない。私たちにとってこれは、かけがえのない出逢いだった。
強い眼差しで訴える薫子に、悠人は口元を手で覆った。
「すまない......君たちには、僕たちの過去は関係ないことだった。
そうだね、君たちは僕たちのことなど関係なく、ただ互いに惹かれあい、思いを紡いでいったんだね」
「わ、私こそ......すみません。生意気なこと、言ってしまって......」
薫子は謝る悠人を前にして、自分の発言を思い出し、恐縮した。
悠のお父様の前で、なんて大胆なことを言ってしまったんだろう......
悠人が膝の上で手を組み、薫子を見つめた。
「悠と薫子さんには、僕の犯した罪のせいで辛い思いをさせてしまい、申し訳ないと思っている。櫻井は......僕が別の女性と結婚した今ですら、僕を敵対視しているからね」
それを聞き、薫子は不思議そうに悠人を見つめた。
「おじさまも、私のお父様を敵視されていらっしゃるのではないんですか」
悠人が困ったような笑みを浮かべる。
「まぁ昔から威圧的で乱暴なところが苦手だったし、華子さんを強引に奪ったことに対しての怒りはあった。
でも、それも昔の話だ......今となっては櫻井を敵視など、していないよ。華子さんを救えなかった僕には、彼を批判する権利なんてない。
それに......華子さんを好きだったことも知っているしね。だからこそ櫻井は、恐れているんだ。君と悠が一緒になることで、僕と華子さんの仲が復活するんじゃないかと」
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