【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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悲しい裏切り

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 薫子は悠人の言葉を聞き、信じられない思いだった。

 確かにばあやからも父が母のことを愛しているとは聞いていたが、それは薫子を慰める為の言葉だと思い込もうとしていた。だが、父が嫌っている悠人からも同じことを聞き、薫子の心がグラグラと揺さぶられた。

 そんな薫子の反応を見て、悠人がゆっくりと繰り返す。

「櫻井は、ずっと昔から......華子さんのことを好きだった。僕たちが、付き合う以前から。
 あいつは素直じゃないから......口に出せず、ただ黙って見つめるだけだった。それで、華子さんに怖がられてたんだけどね、フッ」

 昔を思い出した悠人が、口を緩ませた。

 きっと母はそんな父の思いに少しも気付いていなかったのだろうと思うと、少し父が可哀想な気さえしてきた。だが、自分も遼の気持ちに全く気づいてなかったことを思うと、この鈍感さは母親譲りなのだと分かった。

 悠人は、薫子のお腹を見つめた。

「その、お腹の子供は...」

 薫子はお腹をさすると、黒曜石の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「悠との、子供です」

 それを聞き、悠人が深くソファに凭れかかった。

「そう、か......」

 悠人は大きく息を吐き出した。

 悠人は、薫子が遼との婚約を破棄したことを知っていた。それは、悠を思ってのことだとも。だがまさか、そのお腹に悠の子供を宿しているとまでは、夢にも思わなかった。

 悠人は額に手をやり、項垂れた。

「薫子、さんは......悠が現在どんな状況か、知っているかい?」

 薫子は喉を鳴らした。

「はい。失明し、寝たきりの状態にある、と......」

 薫子は悠のことを思った途端、瞳の奥が熱くなった。

「ッ......おじ、さま......ッグ申し訳......ッッあり、ませ......ッウゥッ」

 肩を震わせる薫子に、悠人は辛そうな表情を見せる。

 やがて、静かな声で諭した。

「事故は......薫子さんのせいではない。君の自分を責める気持ちは......痛いほど、分かる。
 悠は自分の意思で君を迎えに行き、事故に遭った。不幸な偶然が......重なってしまったんだ」

 悠人が真剣な瞳で薫子を見つめた。

「これから先も......悠は、目が見えないかもしれない。骨折が完治するまでには、長い月日がかかる。事故の後遺症にも、悩まされるかもしれない。
 君は、そんな悠をこれから支えていける覚悟が、あるかい?」

 薫子は、悠人をしっかりと見据えた。

「私は今まで、ずっと悠さんに守ってもらうばかりでした。甘えて、頼って、寄りかかり、支えてもらうばかりで......私からは、何も彼にしてあげられませんでした。
 私は、変わりたいんです。彼を支えていきたい。

 そのために婚約を解消し、櫻井の家を出ました。一緒に家を出てくれたばあやに助けてもらいながら家事を習い、短時間ではありますが、生け花を教える仕事もしています」

 それを聞き、悠人が眉を上げ、瞳孔を見開いた。

 華子と同様に箱入り娘として傅かしずかれて育ってきたであろう薫子が、決意だけじゃなく、実際にそこまでの行動をしていることに驚きを隠せなかった。

「私は、自立したら悠さんに会いに行こうと決意していました。けれど、私は......新しい生活に慣れてくるにつれ、悠さんに会いにくることが出来ずにいました。悠さんに拒絶されることや、おじさまやおばさまと対峙するのを恐れていたからです。
 でも、この子のためにも、このままじゃいけないのだと思い知らされました。父親のいない子供にしちゃ、いけないと。

 私は、悠さんと共に人生を歩んでいきたいんです。たとえ、この先彼の目がみえなくても。寝たきりでも。
 私には、彼の存在が必要なんです」

 薫子は、頭を下げた。

「おじさま......どうか、悠さんと会わせて下さいませんか。
 お願いです。彼に、私の思いを伝えさせて下さい」
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