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初恋が実る時
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あまりの激しい口づけに息苦しさを感じて唇を離した途端、薫子の肘が点滴台にぶつかって揺れた。
「あっっ!!」
咄嗟に手を伸ばした為、倒れることにはならずに済んだ。
ホッとして現実に引き戻された次の瞬間、薫子に羞恥が襲いかかる。
私、病院でなんてことを。恥ずかしい......
「桜、だ......」
思いもよらぬ悠の呟きに、薫子は彼を振り返った。悠の左手の掌に、桜の花弁が載っていた。
「これ......」
驚いて見つめる薫子に、悠がフッと笑みを浮かべた。
「薫子の髪に指を絡めた時に、これがついてたんだ」
悠の言葉に、ここに来る途中、強い風と共に桜の花弁が薫子に舞い落ちてきたことを思い出した。
悠は、掌に載せた花弁をそっと顔へと寄せた。
「初恋の、匂いだ」
その言葉に、薫子の胸がキュンと切なく締め上げられる。
悠は花弁をサイドテーブルの上へ丁寧に置くと、薫子に声を掛けた。
「薫子......サイドテーブルの1番下の引き出しを開けてもらっていいかな」
「あ、うん......」
薫子は、言われた通り引き出しを開けた。
中に入っているものが見えた途端、薫子の手が止まる。
これ......
そこには、 遼に頼んで悠に返してもらった婚約指輪が入っていた。それを見た途端、薫子の胸がズキンと痛んだ。
私はあの時、悠の気持ちがもう私にないのだと思い、彼を諦めるために指輪を返すことにした。遼ちゃんからそれを受け取った時、悠はどれほどショックを受け、悲しんだことだろう。
「見つかった?」
悠の言葉に、薫子は動揺しながら「う、うん......」と答えた。
「指輪を返された時、薫子への想いと共にそれを捨てようと思ってた。だが、歩けない俺は自分でどこかに捨てに行くことは出来ない。だから、誰かに見つからないように、左手がぎりぎり届くサイドテーブルの一番下の引き出しに入れておくことにしたんだ。
でも......今考えれば、そんなのは自分に対する言い訳だったんだ。本当に捨てようと思えば、看護師とか療法士とかに頼むことだって出来たはずだから。
俺は、薫子のことはもう諦めないといけないと思いながらも、諦めきれていなかったんだ」
「悠......」
罪悪感を胸にそう呼びかけた薫子に、悠は笑顔を向けた。
「望みを、捨てなくてよかった......」
悠の言葉に胸が熱くなり、涙ぐみながら薫子は頷いた。声を出していないのに、悠はそれが見えているかのように優しく頷き返した。
「薫子。それを、俺の左手の上に載せてくれる?」
薫子に手を差し出し、掌を上に向ける。
緊張しながら指輪を摘むと、薫子は悠の掌にそれを載せた。
「ありがとう。薫子、俺の指先に君の左手の指先を重ねて?」
「はい」
薫子は左手を差し出すと、悠の指先と重ね合わせた。
悠が緊張したように、喉を鳴らした。
「薫子。俺は今まで、君を守れる、強く頼りになる男になろうとしていた。君に、弱さを曝け出すのは恥ずかしいことだと思っていた。
でも、これから俺は......ありのままの自分を君に見せたいんだ。弱い俺も、情けない俺も......全て、知って欲しい。
こんな俺の傍に、ずっといてくれますか」
薫子の瞳の奥が焼け付くように熱くなる。
クールな言動の裏側に隠れていた悠の一面を知ることで、薫子はもっと悠のことを深く知りたいと感じていた。
悠の全てを知りたい。彼の全てを、受け止めたい。
これから、始まるんだ。悠との、新たな関係が。
「はい」
詰まりそうになる声を必死に絞り出すようにして、薫子は返事をした。
「これから、辛く苦しいことがたくさん待ち受けていると思う。
それでも、俺と......生涯を、共にしてくれますか」
「は、い......」
悠の手に重ねた薫子の指が、小刻みに震える。
悠は、真っ直ぐに薫子に視線を向けた。その瞳は彼女を映してはいないかもしれないが、悠の脳にははっきりと彼女の顔が映っていた。
「俺と、結婚してください」
悠にプロポーズの言葉を言われた瞬間、薫子の全身に電気が走ったように感動で震えた。
「ッ......は、い......よろ、しく...ッ...お願い、します......」
悠が、指輪を手に取る。ゆっくりと薫子の指先をなぞるようにして薬指に辿り着き、ピンクダイヤモンドの煌めきを輝かせながら指輪が彼女の指に徐々に沈み込んでいく。
指輪が嵌められると、悠の指が薫子の指に絡められる。
「永遠の愛を、君に誓います」
「ッ悠......」
『いつか君にプロポーズする時には、永遠の愛を意味するピンクダイヤモンドの指輪を贈るから、受け取ってくれる?』
あの時の悠の言葉が響いて感情が昂ぶり、胸が震える。
永遠の愛の誓いを、貴方に......
薫子は悠に唇を寄せ、ふたりは溢れ出る愛おしさを胸に再び口づけを交わした。
これがゴールではないと分かっている。これから立ち向かわなければならない問題や困難は、まだ山ほどあるとも。
時には、挫けそうになることもあるかもしれない。
絶望を感じることも、あるかもしれない。
けれど......私たちの気持ちさえあれば、大丈夫。
頼るだけじゃない。
頼られるだけじゃない。
これからは、お互いを支え合って生きていく。
悠と、これから生まれてくる子供と共に、ずっと......それが私の、幸せだと知っているから。
重なった二人の掌が下りていくと、薫子のお腹に愛おしげに触れる。
ポコン...と掌が打ち返され、思わず二人は唇を離し、笑い合った。
「あっっ!!」
咄嗟に手を伸ばした為、倒れることにはならずに済んだ。
ホッとして現実に引き戻された次の瞬間、薫子に羞恥が襲いかかる。
私、病院でなんてことを。恥ずかしい......
「桜、だ......」
思いもよらぬ悠の呟きに、薫子は彼を振り返った。悠の左手の掌に、桜の花弁が載っていた。
「これ......」
驚いて見つめる薫子に、悠がフッと笑みを浮かべた。
「薫子の髪に指を絡めた時に、これがついてたんだ」
悠の言葉に、ここに来る途中、強い風と共に桜の花弁が薫子に舞い落ちてきたことを思い出した。
悠は、掌に載せた花弁をそっと顔へと寄せた。
「初恋の、匂いだ」
その言葉に、薫子の胸がキュンと切なく締め上げられる。
悠は花弁をサイドテーブルの上へ丁寧に置くと、薫子に声を掛けた。
「薫子......サイドテーブルの1番下の引き出しを開けてもらっていいかな」
「あ、うん......」
薫子は、言われた通り引き出しを開けた。
中に入っているものが見えた途端、薫子の手が止まる。
これ......
そこには、 遼に頼んで悠に返してもらった婚約指輪が入っていた。それを見た途端、薫子の胸がズキンと痛んだ。
私はあの時、悠の気持ちがもう私にないのだと思い、彼を諦めるために指輪を返すことにした。遼ちゃんからそれを受け取った時、悠はどれほどショックを受け、悲しんだことだろう。
「見つかった?」
悠の言葉に、薫子は動揺しながら「う、うん......」と答えた。
「指輪を返された時、薫子への想いと共にそれを捨てようと思ってた。だが、歩けない俺は自分でどこかに捨てに行くことは出来ない。だから、誰かに見つからないように、左手がぎりぎり届くサイドテーブルの一番下の引き出しに入れておくことにしたんだ。
でも......今考えれば、そんなのは自分に対する言い訳だったんだ。本当に捨てようと思えば、看護師とか療法士とかに頼むことだって出来たはずだから。
俺は、薫子のことはもう諦めないといけないと思いながらも、諦めきれていなかったんだ」
「悠......」
罪悪感を胸にそう呼びかけた薫子に、悠は笑顔を向けた。
「望みを、捨てなくてよかった......」
悠の言葉に胸が熱くなり、涙ぐみながら薫子は頷いた。声を出していないのに、悠はそれが見えているかのように優しく頷き返した。
「薫子。それを、俺の左手の上に載せてくれる?」
薫子に手を差し出し、掌を上に向ける。
緊張しながら指輪を摘むと、薫子は悠の掌にそれを載せた。
「ありがとう。薫子、俺の指先に君の左手の指先を重ねて?」
「はい」
薫子は左手を差し出すと、悠の指先と重ね合わせた。
悠が緊張したように、喉を鳴らした。
「薫子。俺は今まで、君を守れる、強く頼りになる男になろうとしていた。君に、弱さを曝け出すのは恥ずかしいことだと思っていた。
でも、これから俺は......ありのままの自分を君に見せたいんだ。弱い俺も、情けない俺も......全て、知って欲しい。
こんな俺の傍に、ずっといてくれますか」
薫子の瞳の奥が焼け付くように熱くなる。
クールな言動の裏側に隠れていた悠の一面を知ることで、薫子はもっと悠のことを深く知りたいと感じていた。
悠の全てを知りたい。彼の全てを、受け止めたい。
これから、始まるんだ。悠との、新たな関係が。
「はい」
詰まりそうになる声を必死に絞り出すようにして、薫子は返事をした。
「これから、辛く苦しいことがたくさん待ち受けていると思う。
それでも、俺と......生涯を、共にしてくれますか」
「は、い......」
悠の手に重ねた薫子の指が、小刻みに震える。
悠は、真っ直ぐに薫子に視線を向けた。その瞳は彼女を映してはいないかもしれないが、悠の脳にははっきりと彼女の顔が映っていた。
「俺と、結婚してください」
悠にプロポーズの言葉を言われた瞬間、薫子の全身に電気が走ったように感動で震えた。
「ッ......は、い......よろ、しく...ッ...お願い、します......」
悠が、指輪を手に取る。ゆっくりと薫子の指先をなぞるようにして薬指に辿り着き、ピンクダイヤモンドの煌めきを輝かせながら指輪が彼女の指に徐々に沈み込んでいく。
指輪が嵌められると、悠の指が薫子の指に絡められる。
「永遠の愛を、君に誓います」
「ッ悠......」
『いつか君にプロポーズする時には、永遠の愛を意味するピンクダイヤモンドの指輪を贈るから、受け取ってくれる?』
あの時の悠の言葉が響いて感情が昂ぶり、胸が震える。
永遠の愛の誓いを、貴方に......
薫子は悠に唇を寄せ、ふたりは溢れ出る愛おしさを胸に再び口づけを交わした。
これがゴールではないと分かっている。これから立ち向かわなければならない問題や困難は、まだ山ほどあるとも。
時には、挫けそうになることもあるかもしれない。
絶望を感じることも、あるかもしれない。
けれど......私たちの気持ちさえあれば、大丈夫。
頼るだけじゃない。
頼られるだけじゃない。
これからは、お互いを支え合って生きていく。
悠と、これから生まれてくる子供と共に、ずっと......それが私の、幸せだと知っているから。
重なった二人の掌が下りていくと、薫子のお腹に愛おしげに触れる。
ポコン...と掌が打ち返され、思わず二人は唇を離し、笑い合った。
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