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After Story1 ー新しい命の誕生ー
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一流ホテル出身の専属シェフが腕によりをかけて作ったランチのコースは、まるでレストランの食事のように美しい見た目だった。牛肉の陶板焼き、白身魚の煮物、野菜の天麩羅、白身の刺身、あさりご飯、茹豚の小鉢、鶏肉の炭火焼に鰻の小鉢と豪華で盛りだくさんだ。しかもそれでいて総カロリーは1日2500から2800kcalに抑えられており、塩分も5グラムになるよう計算されている。
薫子は緊張と不安で食欲がなかったものの、出産に備えて少しずつ口にした。
悠は、まずトレーにどんな食器が載っているのかひとつひとつ確かめた後、スプーンを握った。リハビリで自分で食べれるようになったものの、まだ右手に力を入れると痺れを感じるため箸を持つのは困難で、スプーンとフォークを使って食事をしていた。
スプーンで掬い、それを口に入れる。そんな単純作業が悠にとっては困難で、時間がかかるものだった。だが、悠はじっくりと時間をかけながら、時には陣痛が来て食事の手を止めてしまった薫子に気遣いながら食事を進めた。
ゆっくりと食事を摂り終え、ばあやも食事をし、それから静音が戻っても、一向に医師が見に来る様子はなかった。
不安な気持ちを抱えたまま4時間が経過し、ようやく医師が再び病室に現れた。
内診とノンストレステストを行った医師の表情は、固いものだった。
「あれから全く陣痛の間隔が狭まってないですね。子宮口も開いていないですし」
まだ、出産までに時間がかかるんだ......
破水してから、既に7時間半が経過している。その間も永遠のように感じたのに、今まで以上の時間がかかり、これまでより更に大変なことが待ち受けているのだと思うと、薫子の緊張と不安が高まった。
「本格的な陣痛がいつまでたっても来ないと、母子ともに体力を消耗します。バルーンを入れて、子宮口を中から広げていきましょう」
「バルーンを、入れるんですか」
医師の説明に、薫子は声を強張らせた。
「えぇ、小さな風船のようなものを子宮に入れることによって子宮口を刺激して、開くように促す方法です」
そんなものを入れて、お腹の赤ちゃんは大丈夫なの?
薫子の不安な表情を察し、医師が説明する。
「バルーンを使うことで赤ちゃんの頭を押し上げるような形になってしまい、子宮壁とのあいだに隙間ができ、そこから臍帯(へその緒)が出てしまうリスクも確かにあります。慎重に行う必要がありますが、この方法はかなり効果が期待できますし、これで陣痛を促し、子宮口が広がれば陣痛促進剤を使う必要がなくなります」
陣痛促進剤......
その言葉を聞いて、薫子はキュッと躰を固くした。
以前に、陣痛促進剤による副作用が原因で亡くなった妊婦についてのニュースを見たことを思い出したからだ。
陣痛促進剤とは、出産の時に母体から分泌されるホルモンを化学合成したものである。薬の力で子宮を収縮させることから、「子宮収縮剤」とも言われる。陣痛促進剤は、オキシトシン(点滴)とプロスタグランディン(点滴と錠剤)に大きく分けられるが、どちらも過強陣痛による胎児仮死・子宮破裂・頚管裂傷などの副作用の恐れがある。
赤ちゃんが死亡または脳性麻痺などの重大な後遺症が残ったり、母親が大量出血で死亡する例も過去に数多く報告されている。
この薬の特徴の一つに、患者によって感受性に100倍以上の差があることが知られている。つまり、ある人は1の量で効くのに、別の人は100の量でも効かないということが起こりうる。言うまでもなく慎重な投与と、投与後の厳重な監視が求められるのだ。
もちろん、無事に出産出来たケースはそれと比較にならないほど数多く存在し、使用しなければ逆に母子ともに危険な状態になっていた場合だってある。必要だからこそ陣痛促進剤が開発されたし、現在も使用されているのだ。
問題は、安易にそれを使用する医療機関や医者がいるということだ。人手の少ない休日・夜間の分娩を避ける為や、予定日をたった1日超過しているからというだけで使用するというケースもあるという。現に、日本で産まれる赤ちゃんを曜日別・時間別に集計してみると、平日の昼間に比べて、休日や夜間に産まれる赤ちゃんが少ないという現象が起きている。
また、陣痛促進剤を拒否されることを恐れ、使用する際にわざとその言葉を使わずに「子宮を緩ませるための投薬だ」と濁す看護師や医師もいるとのことだった。
そういったことから薫子は陣痛促進剤に不安を感じ、使用したくないと考えるようになっていた。
薫子は緊張と不安で食欲がなかったものの、出産に備えて少しずつ口にした。
悠は、まずトレーにどんな食器が載っているのかひとつひとつ確かめた後、スプーンを握った。リハビリで自分で食べれるようになったものの、まだ右手に力を入れると痺れを感じるため箸を持つのは困難で、スプーンとフォークを使って食事をしていた。
スプーンで掬い、それを口に入れる。そんな単純作業が悠にとっては困難で、時間がかかるものだった。だが、悠はじっくりと時間をかけながら、時には陣痛が来て食事の手を止めてしまった薫子に気遣いながら食事を進めた。
ゆっくりと食事を摂り終え、ばあやも食事をし、それから静音が戻っても、一向に医師が見に来る様子はなかった。
不安な気持ちを抱えたまま4時間が経過し、ようやく医師が再び病室に現れた。
内診とノンストレステストを行った医師の表情は、固いものだった。
「あれから全く陣痛の間隔が狭まってないですね。子宮口も開いていないですし」
まだ、出産までに時間がかかるんだ......
破水してから、既に7時間半が経過している。その間も永遠のように感じたのに、今まで以上の時間がかかり、これまでより更に大変なことが待ち受けているのだと思うと、薫子の緊張と不安が高まった。
「本格的な陣痛がいつまでたっても来ないと、母子ともに体力を消耗します。バルーンを入れて、子宮口を中から広げていきましょう」
「バルーンを、入れるんですか」
医師の説明に、薫子は声を強張らせた。
「えぇ、小さな風船のようなものを子宮に入れることによって子宮口を刺激して、開くように促す方法です」
そんなものを入れて、お腹の赤ちゃんは大丈夫なの?
薫子の不安な表情を察し、医師が説明する。
「バルーンを使うことで赤ちゃんの頭を押し上げるような形になってしまい、子宮壁とのあいだに隙間ができ、そこから臍帯(へその緒)が出てしまうリスクも確かにあります。慎重に行う必要がありますが、この方法はかなり効果が期待できますし、これで陣痛を促し、子宮口が広がれば陣痛促進剤を使う必要がなくなります」
陣痛促進剤......
その言葉を聞いて、薫子はキュッと躰を固くした。
以前に、陣痛促進剤による副作用が原因で亡くなった妊婦についてのニュースを見たことを思い出したからだ。
陣痛促進剤とは、出産の時に母体から分泌されるホルモンを化学合成したものである。薬の力で子宮を収縮させることから、「子宮収縮剤」とも言われる。陣痛促進剤は、オキシトシン(点滴)とプロスタグランディン(点滴と錠剤)に大きく分けられるが、どちらも過強陣痛による胎児仮死・子宮破裂・頚管裂傷などの副作用の恐れがある。
赤ちゃんが死亡または脳性麻痺などの重大な後遺症が残ったり、母親が大量出血で死亡する例も過去に数多く報告されている。
この薬の特徴の一つに、患者によって感受性に100倍以上の差があることが知られている。つまり、ある人は1の量で効くのに、別の人は100の量でも効かないということが起こりうる。言うまでもなく慎重な投与と、投与後の厳重な監視が求められるのだ。
もちろん、無事に出産出来たケースはそれと比較にならないほど数多く存在し、使用しなければ逆に母子ともに危険な状態になっていた場合だってある。必要だからこそ陣痛促進剤が開発されたし、現在も使用されているのだ。
問題は、安易にそれを使用する医療機関や医者がいるということだ。人手の少ない休日・夜間の分娩を避ける為や、予定日をたった1日超過しているからというだけで使用するというケースもあるという。現に、日本で産まれる赤ちゃんを曜日別・時間別に集計してみると、平日の昼間に比べて、休日や夜間に産まれる赤ちゃんが少ないという現象が起きている。
また、陣痛促進剤を拒否されることを恐れ、使用する際にわざとその言葉を使わずに「子宮を緩ませるための投薬だ」と濁す看護師や医師もいるとのことだった。
そういったことから薫子は陣痛促進剤に不安を感じ、使用したくないと考えるようになっていた。
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