【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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After Story2 ー和解と決裂ー

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 大和と美姫の結婚式前日。

 櫻井ロイヤルホテルのチェックイン・カウンターに立つフロントクラークの青木は、回転扉を抜けて現れたゲストの顔を見て、青ざめた。

 風間悠人、静音夫妻が今日このホテルに宿泊することは以前から知っていた。来栖大和、美姫夫妻の結婚式に出席する為に宿泊を予約しているゲストは、全てリストアップしてあったからだ。

 VIP客にくれぐれも粗相のないようにと随分前から支配人に耳がタコになる程聞かされ、今朝の定例ミーティングでも同じことを繰り返された。風間夫妻は、そのVIPの中でも最上級のランクに当たる。

 だが、青木が驚いたのは風間夫妻が現れたからではなかった。

 夫妻に続き、車椅子に乗った息子、風間悠。これも驚いたが、それを押しているのがなぜか櫻井家を取り仕切るばあやだった。

 なんでばあやさんが、ここにいるんだ......

 疑問に思っていると、その後ろからこのホテルの総帥、櫻井龍太郎の一人娘である櫻井薫子がベビーカーを押しながら現れたのだ。

 青木は、ばあやが櫻井家を出たことも、ましてや薫子が妊娠し、父親と対立した上で家出し、悠の元に走ったことなど知る由もない。

 これは一体、どんな状況なんだ......

 プロ意識が働き、表面上では穏やかな笑みを浮かべつつも、心の中では激しく動揺していた。

「チェックインを、お願いします」

 風間夫妻だけがチェックインカウンターに来て、あとの3人......もしベビーカーの中に赤ん坊がいるのなら4人になるが、彼らは少し離れたロビーの待ち合いソファに座って待っていた。その横には、風間夫妻が置いていったスーツケースが並んでいる。

「畏まりました」

 青木は平静を装いながら通常通りのチェックイン作業を行いつつ、ちらっとロビーに視線をやった。ベビーカーはすっぽりと黒いフードに覆われている為、赤ん坊を確認することは出来なかった。

 本当にそこに赤ん坊がいるのだろうかと青木が疑心暗鬼でいると、薫子が慌ててフードを外した。赤ん坊が泣き出したのかもしれない。

 薫子が壊れ物を扱うようにそっと赤ん坊を取り上げ、胸に抱くと立ち上がった。その赤ん坊は、生まれたてではないかと思えるほど小さかった。薫子の小さな掌でさえも頭がすっぽりとおさまっている。

 まだ慣れない手つきで赤ん坊を抱くその姿に、3人の子供を持つ青木は、生まれてから間もないのだろうという確信を深めた。

 ここからでは、新生児の頼りない泣き声は届かなかった。なかなか泣き止まないのか、困った様子の薫子に悠が話しかける。

 薫子は、悠が構えた腕の中にゆっくりと赤ん坊を下ろして託した。

 父親は、風間財閥のご子息なのか......

 一介の従業員である青木は、櫻井家と風間家が対立しているなど知らない。だが、薫子が香西遼と婚約破棄したことは知っている。

 これは、大変なことになりそうだぞ......

 青木は、緊張で喉を鳴らした。

 いつの間にか、ばあやがチェックインカウンターまで来ていた。

「今日、旦那様方はこちらに宿泊されておりますね」

 確信に満ちた問いに青木は頷くと、部屋のカードキーを渡した。世話役であったばあやはいつも櫻井夫妻が宿泊する際には予備のカードを持ち、いつでも部屋に入れるようにしてあったからだ。

 ばあやは一瞬カードキーを見下ろした後、それを受け取った。

「ありがとうございます」

 チェックインの手続きを終えた風間夫妻と共に、一行はベルボーイを伴ってエレベーターへと向かう。

 きっと、総帥夫妻もお嬢様のことはご存知で、認知済みってことなんだよな......

 青木はそう納得させるように言い聞かせ、何事もないことを祈った。
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