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After Story2 ー和解と決裂ー
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ばあやが詩織のおむつ替えをしてくれている間に薫子は授乳ケープを手に取り、首から掛けた。
隣に悠がいると、薫子は授乳の際はいつも落ち着かない気分になる。目が見えないと分かっていても、やはり悠の眼の前で乳房を出すことは恥ずかしく、躊躇われるのだ。悠が視界に入る時には、薫子は毎回授乳ケープを使用していた。
「薫子様、お願いします」
「ありがとう」
ばあやから詩織を受け取ると横抱きにして、ケープを覆い被せる。薄いジョーゼット素材を二枚重ねたブラウスを一枚捲り、そこから乳房を取り出した。
見た目からは授乳服だとは決して分からない。こんな便利な服があるのだということも、薫子は妊娠してから初めて知った。
その間にばあやは手馴れた様子で粉ミルクとスプーンの入った袋と哺乳瓶、水筒を出し、「お台所、お借りしますね」と言ってキッチンへと向かった。
母乳では量が足りない為、粉ミルクも併用している。それが、薫子の育児の最大の悩みでもあった。
病院では母乳育児に力を入れている為、母乳マッサージや母乳カウンセリングなどを盛んに勧められた。だが、マッサージしてもらい、カウンセリングを受けても、入院していた時には母乳は一滴も出ることはなかった。それが、自分は母親失格なのでは......と薫子を追い込ませ、落胆させた。
今では母乳が出るようになったものの、完母(完全母乳)で育てられていないという負い目は拭いきれないでいる。
「私もなかなか母乳が出なくて、母乳と粉ミルクを併用していたんですよ」
華子が懐かしそうに目を細めた。
「そう、だったんですね」
母も同じ状況だったことを聞き安心し、嬉しくなると同時に、そのミルクを与えていた赤ん坊が自分なのだと思うと不思議な気持ちがした。
授乳が終わると服を戻し、ケープを首から外すタイミングでばあやが哺乳瓶を手に戻ってきた。
「代わろうか」
悠が声を掛け、薫子は「ありがとう」と言って、詩織を預けた。詩織を腕に抱きながらばあやから哺乳瓶を受け取ると、詩織にはもう既にそれが何か分かっているのか、手を伸ばす。
「今、あげるよ」
優しい声音で悠が詩織に話し掛け、そっと小指で唇の位置を確認してから哺乳瓶を咥えさせた。
華子は悠の目つきや視線、行動から彼が目が見えないのだということを悟ったが、それでも育児に積極的に参加しているのを見て驚いた。
「もう、満足みたいだね」
まだ哺乳瓶には僅かにミルクが残っているが、詩織の飲み方で分かった悠が哺乳瓶を口から外す。ばあやがそれを受け取って、洗うためにキッチンへ向かった。
詩織の小さな躰を肩に載せて優しく背中を撫でながら暫くじっとした後、ポンポンと軽く叩いた。すると、詩織の口から「ゲブッ」と、まるで新生児とは思えないぐらいの大きなゲップが出てきた。
思わず悠も薫子も、そして華子でさえも笑い出した。
「悠さんは、すっかりお父さんね」
華子は笑いを収めると、悠を優しく見つめた。
悠が、口を開いた。
「ご挨拶が大変遅くなり、申し訳ありません。
本来なら事前に承諾を頂くべきでしたが、私は娘さんの薫子さんと入籍しました。そして、私たちの間に生まれたのが、娘の詩織です」
華子が詩織を見つめた後、小さく尋ねた。
「抱かせてもらっても、いいかしら?」
「はい」
悠がそっと詩織を持ち上げると、その腕から華子が慎重に受け取った。
「詩織さん、初めまして。
あぁ、そう......赤ちゃんって、こんなに小さくて温かいものだったわね。ミルクの匂いがして......懐かしいわ」
優しく詩織を抱く母の姿を目にして薫子の目頭が潤み、鼻の奥がツンと痛くなった。
隣に悠がいると、薫子は授乳の際はいつも落ち着かない気分になる。目が見えないと分かっていても、やはり悠の眼の前で乳房を出すことは恥ずかしく、躊躇われるのだ。悠が視界に入る時には、薫子は毎回授乳ケープを使用していた。
「薫子様、お願いします」
「ありがとう」
ばあやから詩織を受け取ると横抱きにして、ケープを覆い被せる。薄いジョーゼット素材を二枚重ねたブラウスを一枚捲り、そこから乳房を取り出した。
見た目からは授乳服だとは決して分からない。こんな便利な服があるのだということも、薫子は妊娠してから初めて知った。
その間にばあやは手馴れた様子で粉ミルクとスプーンの入った袋と哺乳瓶、水筒を出し、「お台所、お借りしますね」と言ってキッチンへと向かった。
母乳では量が足りない為、粉ミルクも併用している。それが、薫子の育児の最大の悩みでもあった。
病院では母乳育児に力を入れている為、母乳マッサージや母乳カウンセリングなどを盛んに勧められた。だが、マッサージしてもらい、カウンセリングを受けても、入院していた時には母乳は一滴も出ることはなかった。それが、自分は母親失格なのでは......と薫子を追い込ませ、落胆させた。
今では母乳が出るようになったものの、完母(完全母乳)で育てられていないという負い目は拭いきれないでいる。
「私もなかなか母乳が出なくて、母乳と粉ミルクを併用していたんですよ」
華子が懐かしそうに目を細めた。
「そう、だったんですね」
母も同じ状況だったことを聞き安心し、嬉しくなると同時に、そのミルクを与えていた赤ん坊が自分なのだと思うと不思議な気持ちがした。
授乳が終わると服を戻し、ケープを首から外すタイミングでばあやが哺乳瓶を手に戻ってきた。
「代わろうか」
悠が声を掛け、薫子は「ありがとう」と言って、詩織を預けた。詩織を腕に抱きながらばあやから哺乳瓶を受け取ると、詩織にはもう既にそれが何か分かっているのか、手を伸ばす。
「今、あげるよ」
優しい声音で悠が詩織に話し掛け、そっと小指で唇の位置を確認してから哺乳瓶を咥えさせた。
華子は悠の目つきや視線、行動から彼が目が見えないのだということを悟ったが、それでも育児に積極的に参加しているのを見て驚いた。
「もう、満足みたいだね」
まだ哺乳瓶には僅かにミルクが残っているが、詩織の飲み方で分かった悠が哺乳瓶を口から外す。ばあやがそれを受け取って、洗うためにキッチンへ向かった。
詩織の小さな躰を肩に載せて優しく背中を撫でながら暫くじっとした後、ポンポンと軽く叩いた。すると、詩織の口から「ゲブッ」と、まるで新生児とは思えないぐらいの大きなゲップが出てきた。
思わず悠も薫子も、そして華子でさえも笑い出した。
「悠さんは、すっかりお父さんね」
華子は笑いを収めると、悠を優しく見つめた。
悠が、口を開いた。
「ご挨拶が大変遅くなり、申し訳ありません。
本来なら事前に承諾を頂くべきでしたが、私は娘さんの薫子さんと入籍しました。そして、私たちの間に生まれたのが、娘の詩織です」
華子が詩織を見つめた後、小さく尋ねた。
「抱かせてもらっても、いいかしら?」
「はい」
悠がそっと詩織を持ち上げると、その腕から華子が慎重に受け取った。
「詩織さん、初めまして。
あぁ、そう......赤ちゃんって、こんなに小さくて温かいものだったわね。ミルクの匂いがして......懐かしいわ」
優しく詩織を抱く母の姿を目にして薫子の目頭が潤み、鼻の奥がツンと痛くなった。
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