【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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After Story2 ー和解と決裂ー

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 キッチンから戻ってきたばあやが孫を胸に抱く華子を見て、目を細めた。

「こうしていると、薫子様が産まれた時のことを思い出しますねぇ。いつもほんわかとした華子様が初めての育児であたふたして......薫子様がミルクをちゃんと飲んでくれない、なかなか寝てくれない、何か肌に出来物が出来たと次から次に心配しては大慌てして。
 その度に昼間であろうと真夜中であろうと私達が総動員させられて、困ったもんでした」
「まぁ、ばあやったら......」

 華子はこれ以上はやめてというように、話を遮った。

 育児は全てばあややメイドに任せっぱなしにしていただろうと思っていた薫子は、それを聞いて驚かずにはいられなかった。

「あの頃、旦那様も事あるごとに電話を掛けてきて。
『何か変わった事はなかったか』って、薫子様のことが気にかかっているのにちゃんと聞けなくて、本当に素直になれない方ですよね」

 え......そんなことが、あったんだ。

 そんな父親の姿など、想像もつかなかった。

 お腹がいっぱいになって満足したのか、詩織は華子の腕の中で再び眠りについた。

 本当にこの頃の赤ん坊のすることといえば食べているか眠っているか排泄するかだけで、人間の本来の欲求の原点を思い返させられる。だが、この食べて眠って排泄し、時には泣いたりするだけの小さな小さな存在が、人々の心を温かくし、優しい気持ちにさせ、幸せにしてくれる。

 華子は詩織の寝顔をしばらく見つめた後、悠に頭を下げた。

「悠さん。どうか、娘と孫をよろしくお願いします。
 幸せに、してあげて下さい」
「おか......さま......」

 薫子の瞳から、熱い涙が零れて頬を伝う。

 悠が笑みを浮かべた。

「幸せにしてもらっているのは、私の方です。薫子さんは私に、生きる勇気と希望を与えてくれました。彼女がいなければ、今の私はいません。
 両家の対立によって苦しみ、薫子さんのご両親に逆恨みした時期もありましたが、今は薫子さんを生み、育てて下さった事に感謝しています」
「本当に、悠さんも、薫子も強いのね。いいえ、ふたりとも成長したのかしら。
 それだけの強さが私にもあったら......何か、変わっていたのかもしれないけれど」

 華子が、寂しそうに笑みを返した。

 悠が姿勢を正した。

「父が、直接会って謝りたいと申しておりました」
「悠人、さんが......」

 華子は、突然出てきた悠人の名前に動揺した。

 薫子が、話を引き継ぐ。

「あの時のことを謝りたいって、仰ってました。
 それから......妻を、紹介したいと」

 悠人が言ったように、『愛する人』とは、言えなかった。

「そう......」

 それを聞き、華子の顔に落胆の色が浮かんだ。薫子は、今でも母が悠の父親の悠人のことが好きなのだと感じ、複雑な思いに駆られた。

 詩織をベッドに寝かしつけるため、部屋に戻る事にした。

「明日の朝、また伺います」

 そう告げた薫子に、華子は心配そうな顔を見せた。

「お父様と会うつもりなのですか。
 あの人は......薫子さんのことを、未だに許していませんよ」

 やっぱり......

 一筋縄ではいかないだろうと思っていたが、華子の言葉を聞いて気分が沈んだ。

「私と悠は、明日、来栖家の披露宴に出席します」

 華子の顔がサッと青ざめた。

「そんな、ことをしたら......」
「はい。そんなことをしたら、私と悠が夫婦であることや詩織の存在もいずれ知られる事になるでしょう。
 けれど、いつまでも隠し通せる事ではありません。

 私は悠と結婚し、彼との子供を産み、彼のご両親にも認めてもらって、今は同居までさせてもらっています。これからは、風間家の人間として胸を張って生きていきたいんです。
 私はそのことを、マスコミに知られるよりも前にお父様とお母様にお伝えしておきたかったんです。

 そして、私の愛する夫と娘に会って頂きたいと」

 薫子の力強い言葉を聞き、華子は頷いた。

「分かりました。来客が来る事を伝えておきますので、10時から11時の間に来てください」
「ありがとうございます」
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