1 / 5
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
1
しおりを挟む
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私の婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。
無理もありませんわ。目も覚めるようなブロンドに天使の艶のある美しい巻髪、色素の薄い美しい白い肌、ガラスのような美しい青いぱっちりとした大きな瞳、もぎたてのりんごのような可愛らしい頬、控えめでいながらもぷっくりとした瑞々しい唇の、誰もが目を奪われる美しい容姿ですもの、惹かれるのは当然ですわ。それに容姿だけではなく、性格も明るく、思いやりがあって、私の自慢の妹なのです。
ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
私はマリアンヌに尋ねました。
「マリアンヌ、ジェイコブ様が私よりも貴女と婚約したいと仰っておりますが、どういたしますか?」
「え……リリーお姉様は、それでいいんですの?」
「えぇ。マリアンヌさえよければ」
マリアンヌはジェイコブ様をじっと見つめてから、頷きました。
「では私、ジェイコブ様と婚約いたしますわ」
「分かりました。ではその旨、お父様とお母様、そしてジェイコブ様のご両親にもお伝えしておきますわね」
サクサクと進めておりますと、
「ちょちょちょちょちょちょーっっ!!」
ジェイコブ様が狼狽しながら、私の手をとります。
「なんですの? もう私は貴方の婚約者ではありませんから、気軽に女性の手を触れてはいけませんわ」
「え。リリー、ほんとに、ほんとにいいのか? 僕が、マリアンヌと婚約しても?」
「貴方がマリアンヌの方が良かったとおっしゃったんじゃないですか」
「そ、それはそうだが……いきなり、こんな……」
「手続きは迅速に進めた方がよいでしょう。婚約者ではない私など、目障りでさっさと立ち去ってほしいでしょうから。
マリアンヌとお散歩でもしてきたらどうですか?」
マリアンヌがジェイコブ様の腕に手を回し、にっこりと微笑みました。
「ジェイコブ様、まいりましょう?」
「ぇ、あ……あぁ」
翌日、私は両親に婚約破棄及び、ジェイコブ様とマリアンヌの婚約締結の報告をいたしました。
私であろうとマリアンヌであろうとジェイコブ様との姻戚関係が結べるのですから、両親は反対することはなく、ジェイコブ様のご両親も同様のご意見でした。
妹を紹介した途端、私の婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。
無理もありませんわ。目も覚めるようなブロンドに天使の艶のある美しい巻髪、色素の薄い美しい白い肌、ガラスのような美しい青いぱっちりとした大きな瞳、もぎたてのりんごのような可愛らしい頬、控えめでいながらもぷっくりとした瑞々しい唇の、誰もが目を奪われる美しい容姿ですもの、惹かれるのは当然ですわ。それに容姿だけではなく、性格も明るく、思いやりがあって、私の自慢の妹なのです。
ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
私はマリアンヌに尋ねました。
「マリアンヌ、ジェイコブ様が私よりも貴女と婚約したいと仰っておりますが、どういたしますか?」
「え……リリーお姉様は、それでいいんですの?」
「えぇ。マリアンヌさえよければ」
マリアンヌはジェイコブ様をじっと見つめてから、頷きました。
「では私、ジェイコブ様と婚約いたしますわ」
「分かりました。ではその旨、お父様とお母様、そしてジェイコブ様のご両親にもお伝えしておきますわね」
サクサクと進めておりますと、
「ちょちょちょちょちょちょーっっ!!」
ジェイコブ様が狼狽しながら、私の手をとります。
「なんですの? もう私は貴方の婚約者ではありませんから、気軽に女性の手を触れてはいけませんわ」
「え。リリー、ほんとに、ほんとにいいのか? 僕が、マリアンヌと婚約しても?」
「貴方がマリアンヌの方が良かったとおっしゃったんじゃないですか」
「そ、それはそうだが……いきなり、こんな……」
「手続きは迅速に進めた方がよいでしょう。婚約者ではない私など、目障りでさっさと立ち去ってほしいでしょうから。
マリアンヌとお散歩でもしてきたらどうですか?」
マリアンヌがジェイコブ様の腕に手を回し、にっこりと微笑みました。
「ジェイコブ様、まいりましょう?」
「ぇ、あ……あぁ」
翌日、私は両親に婚約破棄及び、ジェイコブ様とマリアンヌの婚約締結の報告をいたしました。
私であろうとマリアンヌであろうとジェイコブ様との姻戚関係が結べるのですから、両親は反対することはなく、ジェイコブ様のご両親も同様のご意見でした。
1,071
あなたにおすすめの小説
どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
[完結]裏切りの果てに……
青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。
彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。
穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。
だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。
「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。
でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。
だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ?
君に好意がなくても、義務でそうするんだ」
その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。
レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。
だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。
日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。
「……カイル、助けて……」
そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり……
今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。
ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」
人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。
「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」
「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」
一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。
「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」
「……そんな、ひどい」
しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。
「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」
「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」
パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。
昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。
「……そんなにぼくのこと、好きなの?」
予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。
「好き! 大好き!」
リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。
「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」
パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、
「……少し、考える時間がほしい」
だった。
私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。
わたしがお屋敷を去った結果
柚木ゆず
恋愛
両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。
――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。
――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。
関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。
17日本編完結。4月1日より、それぞれのその後を描く番外編の投稿をさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる