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差し伸べられるふたつの手
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大和を見送ると下腹部が痛くなり、膝から崩れ落ち、跪いた。
「ッ......ウッ......」
分かってる。分かってる......
私は、大和の妻なんだ。
私から望んで、そうなったんだ。
今更、裏切れるはずない......
「ウゥッ......」
美姫は両手を廊下につき、短く息を吐いた。
「美姫!!」
秀一が美姫に駆け寄った。
「美姫、大丈夫ですか!?
あの男に何かされたのですか!?」
高級なスーツが汚れるのも構わず膝をつき、必死に美姫を抱き寄せる。
先ほどまで余裕綽々な笑みを見せていた秀一とは同一人物と思えないほどに、青褪めていた。それが、なぜか美姫にとっては嬉しかった。
「ごめん、なさい。
ちょっと疲れただけです......戻ります」
秀一に支えてもらって立ち上がろうとしたが、地面からいきなりふわっと躰が持ち上がった。
「秀一さん!?」
「貴女は無理しすぎです。少しは休むことも覚えて下さい」
「で、でも今日中に全ての曲のデザイン案を考えておかないと! 秀一さんの日程がなくなっちゃいます!!」
慌てて降りようとするが、秀一の逞しい腕で阻止された。
「甘え上手な私のお姫様は、いつの間にこんなに強情になってしまったのでしょうね。
私の言うことを聞いてください。仕事はなんとかなります」
「はい......」
秀一に言われると、本当になんとかなるような気がしてしまう。もう美姫は、秀一に大人しく抱かれて運ばれるしかなかった。
美姫をお姫様抱っこして戻って来た秀一に、女性スタッフから羨望の眼差しが集まり、歓声が上がった。
「美姫が気分が悪いようなのですが、どこか躰を休ませられる場所はありますか」
秘書の内田が立ち上がる。
「それなら、応接間に長椅子がありますので、そちらに運んでもらっていいですか。
どうも、申し訳ありません」
秀一が、優艶に笑みを浮かべた。
「可愛い姪の世話をするのは、昔から私の役目ですから。どうぞ、お気になさらず」
その微笑みに、女性スタッフの誰もが胸を撃ち抜かれた。
応接間のソファに運ばれた美姫は、その横に座る秀一を見上げた。
「貴重な時間を無駄にさせてしまって......すみません」
秀一の大きな手が美姫の前髪を掻き上げ、頬にかかる黒髪を手に取り、口づけた。
「美姫が望むのなら、私は自分の持つ全ての時間を貴女に使っても構いませんよ。
残念なことに、今の貴女はそれを望んではいないようですが」
秀一の切ない表情に、美姫の胸が締め付けられた。涙が込み上がりそうになり瞳を閉じると、目尻から涙の粒が一筋落ちていく。
秀一はそれを指で掬い、掌で美姫の頬を包み込んだ。
「可哀想な人ですね。そうやって自分を苦しめ続けて......
今はただ、何も考えず眠って下さい」
「ック......」
「ッ......ウッ......」
分かってる。分かってる......
私は、大和の妻なんだ。
私から望んで、そうなったんだ。
今更、裏切れるはずない......
「ウゥッ......」
美姫は両手を廊下につき、短く息を吐いた。
「美姫!!」
秀一が美姫に駆け寄った。
「美姫、大丈夫ですか!?
あの男に何かされたのですか!?」
高級なスーツが汚れるのも構わず膝をつき、必死に美姫を抱き寄せる。
先ほどまで余裕綽々な笑みを見せていた秀一とは同一人物と思えないほどに、青褪めていた。それが、なぜか美姫にとっては嬉しかった。
「ごめん、なさい。
ちょっと疲れただけです......戻ります」
秀一に支えてもらって立ち上がろうとしたが、地面からいきなりふわっと躰が持ち上がった。
「秀一さん!?」
「貴女は無理しすぎです。少しは休むことも覚えて下さい」
「で、でも今日中に全ての曲のデザイン案を考えておかないと! 秀一さんの日程がなくなっちゃいます!!」
慌てて降りようとするが、秀一の逞しい腕で阻止された。
「甘え上手な私のお姫様は、いつの間にこんなに強情になってしまったのでしょうね。
私の言うことを聞いてください。仕事はなんとかなります」
「はい......」
秀一に言われると、本当になんとかなるような気がしてしまう。もう美姫は、秀一に大人しく抱かれて運ばれるしかなかった。
美姫をお姫様抱っこして戻って来た秀一に、女性スタッフから羨望の眼差しが集まり、歓声が上がった。
「美姫が気分が悪いようなのですが、どこか躰を休ませられる場所はありますか」
秘書の内田が立ち上がる。
「それなら、応接間に長椅子がありますので、そちらに運んでもらっていいですか。
どうも、申し訳ありません」
秀一が、優艶に笑みを浮かべた。
「可愛い姪の世話をするのは、昔から私の役目ですから。どうぞ、お気になさらず」
その微笑みに、女性スタッフの誰もが胸を撃ち抜かれた。
応接間のソファに運ばれた美姫は、その横に座る秀一を見上げた。
「貴重な時間を無駄にさせてしまって......すみません」
秀一の大きな手が美姫の前髪を掻き上げ、頬にかかる黒髪を手に取り、口づけた。
「美姫が望むのなら、私は自分の持つ全ての時間を貴女に使っても構いませんよ。
残念なことに、今の貴女はそれを望んではいないようですが」
秀一の切ない表情に、美姫の胸が締め付けられた。涙が込み上がりそうになり瞳を閉じると、目尻から涙の粒が一筋落ちていく。
秀一はそれを指で掬い、掌で美姫の頬を包み込んだ。
「可哀想な人ですね。そうやって自分を苦しめ続けて......
今はただ、何も考えず眠って下さい」
「ック......」
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