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箱入り令嬢は密かに慕う執事に夜伽の手解きを受け、快楽に沈む

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 やっぱり、私の想いを受け入れてもらえなかった。

 アリアが絶望する中、スペンサーの唇がアリアのそれと重なっていた。

 驚き、混乱するアリアを前に、スペンサーが彼女を抱き締める。


「私も……お嬢様をずっと、お慕い申しておりました」


 う、そ……

 アリアはあまりの出来事に声を出すことも出来ず、両手を口に当てた。気づけば、両方の瞳からは涙が溢れ出していた。

 スペンサーが躰を離し、胸ポケットからチーフを取り出して、アリアの涙を優しく拭う。

「まったく……泣き虫のところは、未だに直っていませんね」

 アリアは少し照れたような笑みを浮かべ、スペンサーを見上げた。

 すると、スペンサーの顔が突然真剣なものへと変わる。

「お嬢様、本当に良いのですか?
 私たちは許されざる、禁忌の関係。秘密にせねば、ならないのですよ?」

 アリアは、スペンサーの胸に抱きついた。

「分かっています。それでも……私には、スペンサーしかいないんです。貴方しか、欲しくない。たとえそれが、許されないことであっても……」
「お嬢様……」

 お互い引き寄せられるように、唇を合わせる。スペンサーの舌がアリアの唇をなぞり、背筋にゾクゾクと戦慄が走る。

「ッハァ……」

 声を漏らすアリアの唇の隙間からスペンサーの舌が忍びこみ、呼吸さえも奪い尽くすような激しい舌の動きに翻弄される。舌を絡め取られ、きつく吸い上げられると口内で甘さを増した蜜が啜られる音が、耳の奥に響いてアリアの躰を熱くさせる。

 狂おしいくらいの欲情が、炎となって全身に流れ込む。

 く、苦しい……

 膝がガクガクし、立っていられなくなったアリアをスペンサーが抱き留めた。

 スペンサーは再びアリアを横抱きにすると、ベッドへと運んだ。

 ベッドの海へとふわりと沈み込んだアリアが、スペンサーを見上げる。潤んだ瞳で頬をピンクに染め、呼吸が乱れたアリアがその欲情をスペンサーのシルバーグレーの瞳に映りこませた。

「お嬢様……愛して、います」

 その甘美な響きに幸せを感じると共に、自分の立場を思い知らされるようで寂しさにも襲われた。

 執事と主人ではなく、ただの男と女として貴方と愛し合いたい。

「お願い。名前で……呼んでください」

 アリアの縋るような表情にスペンサーが目を見張り、愛しさの籠った柔らかい笑みを見せた。

「アリア……」

 なぜだろう。名前を呼ばれるだけで、泣きたくなる。
 切なくて、苦しくて、幸せな気持ちになる……

「では、私のこともスペンと、呼んで下さいますか。愛しい人だけに呼んでいただける、名を」

 アリアは躊躇いつつも、俯きがちに小さな声で愛しい人の名を呼んだ。

「……スペン」

 その途端、二人の間を隔てていた壁が崩れていくのを感じた。

 今、私たちの心がようやく繋がったんだ。

 アリアはスペンサーの首に縋りつき、耳元で小さく囁いた。

「スペン……抱いて下さい」

 耳まで真っ赤に染めて必死に訴える可愛いアリアの行動に、スペンサーの心は彼女への愛おしさで溢れんばかりだった。

 顔を上げ、お互いの鼻先を合わせる。

「アリア。貴女が欲しい……」
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