【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都

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与えられた光

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 食事を終えたルチアは、クロードと城内を歩いていた。昨日一日では城内を全て廻ることが出来なかったので、案内の続きをしてもらうことになったのだ。

 最後となる、廊下の突き当りの右手にある部屋の扉の前で、クロードが少し躊躇うように立ち止まった。

 クロード様、一体どうされたのでしょう……

「クロード様、こちらは?」

 後ろから声をかけたルチアを振り返り、クロードが答えた。

「この城に留まっていた間、母君が使っていた部屋だ」

 お母様が……

 クロードが王位を継いでから何度かこの城を訪れたことはあったが、母が使用していたこの部屋には、なんとなく入ることが出来ずにいた。

 扉を静かに開け、中へ入る。まるで時が止まったかのように、あの時と同じ景色、匂いにクロードの足が止まる。

 そんな様子を察して、ルチアが黙って優しくクロードの手を握った。

「大丈夫、ですわ……」

 ベッドと小さなテーブルと書棚が置いてあるだけの、狭い部屋を見渡す。

 この部屋に私は、母君に花を届けるために訪れていたのだな……

 その後、押し花として残されていた花は父によって踏み躙られ、跡形もなく失われた……そんな苦い記憶が再びクロードの脳裏に蘇る。

 過去の呪縛から抜けられたと思っていたが、記憶というものは案外簡単には薄れてはくれないようだな。

 その時、書棚を見つめていたクロードが一冊の本を取り出した。

「これは……母君の祖国の古い伝説を謳った詩集だ」

 ルチアが、クロードから本を受け取る。美しい挿絵の描かれた本をルチアがパラパラと捲ると、中からひらひらと何かが落ちた。

「ぁ……」

 床に落ちたそれを拾い上げたクロードは、ハッとした。

「これ、は……」

 それは、手作りの押し花の栞だった。

 ルチアがクロードの手の中にある栞を覗き込み、柔らかく微笑んだ。

「素敵な栞ですわね」
「これは……昔、母君に送った花だ……」

 その言葉に、ルチアの眉がピクリと上がる。

「え……」

 クロードはルチアの頬に手を添え、その温かさを感じる。

「お前の、お陰だ。失ったものを、取り戻すことができた」

 それで全てを理解したかのように、ルチアは頬に添えたクロードの手に自分の手を重ねた。

「クロード様……」

 美しい涙が、一筋ルチアの頬を伝って流れ落ちた。
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