【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
78 / 498

74.胸の高鳴り

しおりを挟む
 類、ちゃんと待っててくれてるかな……

 不安に思いながら、バックヤードの扉に手を掛ける。



「ひゃぁっっ!!」



 開けた先には類が立っていて、美羽は総毛立った。

「ププッ……ミュー、驚きすぎ」

 腰を抜かさんばかりのリアクションに、類はお腹を抱えて笑った。けれど、美羽は笑い返せる気分ではない。

「る、類っっ!! どうして待ってないの!?」
「だって、きっとここから出てくるだろうと思ってさ」
「っっ……行こっっ!!」

 これ以上、類に何を言っても無駄だ。

 ふっと俯いた視界にエプロンが入り、慌てて外すとカバンに詰め込んだ。中は、ギュウギュウ詰めになっていた。

 傘を開き、足を踏み出そうとして、類の手元を見て目を丸くした。

「類、スーツケースは!?」

「邪魔だから、空港から送った」
「そっか……」

 類は傘を持っていないため、必然的にひとつの傘に入ることになってしまう。躊躇《ためら》っていると、類がフイッと傘のハンドルを掴んで高く持ち上げた。

「僕が持つよ」
「あり、がとう……」

 昔はよくこうして雨の日はひとつの傘に入っていた。だから、雨の日が好きだった。密着して並んでいると、類の背が高くなったのを改めて感じる。

 その身長分が、私の知らない類の歴史なんだ……

 寂しく感じてしまう、自分がいる。

「ほら、もっとこっち来ないと濡れちゃうよ」

 類に肩を抱かれ、グイと引き寄せられる。

 あの頃は感じなかった胸の高鳴りが迫ってくる。相合傘という密室の空間に閉じ込められ、鼓動がトクトクと落ち着かない。
 そっと見上げると、まるでタイミングを図ったかのように類も美羽を見下ろしていて「ん?」と優しく目が細まり、小首を傾げられた。大好きだった仕草に胸が締め付けられる。

「なん、でも……ないっっ」
「フフッ、へーんなの!」

 サーッという雨の音に混ざり、傘に雨が弾く音が重なって、二人の世界を包み込んでいく。

 この世界に、ずっと閉じこまっていられたらいいのに……

 向こうから傘をさした人が歩いてきた。すれ違い際に美羽と類を見てハッとし、驚いたようにふたりの顔を見比べる。通り過ぎた後も、後ろから視線が突き刺さるように感じた。

 そう、ここが私たちの生きる世界。
 恋人でいることが、許されない世界なんだ……
 
 キリキリと胸が痛む。

 ここは店の近くだし、もし私や隼斗兄さんを知ってるお客さんに出会ってしまったら言い逃れ出来なくなる……

 美羽はハンチングを深く被り、俯いた。

 電車だと目立つし、隠れる事も出来ない……

「類、疲れてるだろうし、タクシーで帰ろ」

 大通りに出てタクシーを拾って乗り込むと、類は美羽にぴったりと寄り添うぐらいの距離で隣に座った。

「ほ、ほら……類、シートベルトしないと」
「いつから日本もそんなに厳しくなったんだっけ?」
「安全のためでしょ!」

 そう言った美羽に、類が覆いかぶさるように近づいてきた。

「る、類……!?」

 類は美羽のシートベルトに手をかけると、引っ張ってから手渡した。

「はい! 安全第一でしょ?」
「あり、がと……」

 ドクドクと高鳴る鼓動を聞かれないよう胸を押さえ、美羽は俯くとシートベルトをカチッとはめた。

 さっきまで触れていた太腿が、類の息のかかった頬が、痺れるように熱い。離れていても匂ってくる類の懐かしい香りに、吸い込まれそうになる。

 まだ、類との生活が始まってもいないのに、どうしよう……
 もう、こんなにドキドキしてる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...