【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
94 / 498

90.貴方を救いたい

しおりを挟む
 ゆっくりと扉に近づくと、そっと部屋の扉を開ける。向かいの義昭の部屋に耳を澄ませていると、イビキが聞こえてきた。普段は静かだが、今夜は酒をたくさん飲んだせいで、寝息が響いている。

 フットライトを頼りに階段へと向かい、足音をたてないように慎重に下りていく。バクバクと音を立てる心臓が、部屋中に響き渡っているのではないかと不安に駆られる。

 ようやく1階に着き、美羽は小さく息を吐いた。

 キッチンに行き、グラスを手に取り、最小限の水量でコップに水を溜めると、薬を取りに行く為リビングへと向かう。

 すると、荒い息遣いが類の部屋から聞こえてきて、ビクンと小さく震えた。

 何、してるの……類……

 動揺しながらも、ここから早く立ち去らねばと、意識を向けないようにしてTV台の引き出しを開ける。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ッグ父さん、やめて!!」

 類の叫び声にハッとする。



 これ、は……自慰じゃ、ない……
 類は、悪夢を見てるんだ。



「ハァッ、ハァッ……ゃ、ゃ、やだ……お、願……ウゥッ……」

 あまりにも悲痛な声に、美羽の胸がズキンと痛む。睡眠薬とグラスをテーブルに置くとそっと立ち上がり、類の部屋へと向かう。

「ハァッ、ハァッ……ちがっ……僕は、類だよ……父、さ……ハァッ、ハァッ……」

 美羽は類の部屋の前で立ち止まった。類の苦しみが美羽の胸の中に急激に入り込み、心臓を掴まれるような痛みに襲われ、寒気が走った。

 これは、罠かもしれない……

 扉の取っ手に手をかけたまま、立ち尽くす。その間にも、ジリジリと焦げ付くような痛みが全身を襲う。膝がガクガクし、冷たい汗が背中を伝う。手の先がジンジンと氷に触れているかのように冷たいのに熱く感じる。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 呼吸が乱れ、目眩でクラクラし、耳鳴りがガンガン響く。足元がふらふらと覚束なく、果てしなく広い海に一人で漂っているような薄ら寒さを感じる。

 どうする? 部屋に入る?
 それとも、このまま無視して2階に上がる?

 掴まれた心臓が締め上げられ、ギリギリと痛みで縛り付けられる。

 ーーたとえ罠だとしても、苦しそうな類を放っておけない。

 意を決して部屋の扉をそっと開け、中の様子を覗き見る。

 類はベッドに横たわり、苦しそうに悶えていた。

 本当に、寝てるの……?

 恐る恐る近づいていくと、類は大量に汗を掻き、唇を戦慄かせていた。美しい顔を歪め、閉じた瞼を震わせ、目尻からプックリと盛り上がった涙が零れて、耳へと流れ落ちる。

「ハァッ、ハァッ……ウゥッ、ウグッ……やだっっ……!!」

 る、い……

 美羽は先程までの疑念や恐れも忘れ、流れ込んでくる痛みを類と共有し、膝を立てて彼の手を握った。

 貴方は、私と会えない間……どれほどの痛みを一人で背負ってきたの?
 お願い。私がその痛みを共有するから、もう一人で苦しまないで。

 恋人として類を救うことは出来ないけれど、姉として貴方を救いたいと思ってるから……

 神に祈りを捧げるように、両手で握った類の手に額をそっとつける。

 類にギュッと手を握り返されて、一瞬美羽の躰が強張ったが、それもまた悪夢に魘されてのことだった。

 青い瞼に口づけを落とし、頭をこの胸に引き寄せて抱き締めたい……そんな熱い衝動が美羽の胸からフツフツと湧き上がる。

 たとえ過去の類の傷を失くすことはできなくても、今この瞬間だけは忘れて欲しい。

 美羽は額に触れていた手を下ろすとそっと唇に寄せ、再び額へ押し付けた。

 それは、恋人に向ける熱情の籠ったものではなく、母親が最愛の息子を想ってするような見返りを求めない慈愛に満ちた愛情、清らかな祈りだった。

 大丈夫。傍にいるよ。
 私が、ここにいるから……

 そう心の中で訴えると、類の手から力がフッと抜けた。

 それまで苦しげだった類が少しずつ穏やかな表情になり、安定した呼吸へと変化していく。汗が少しずつ引いていき、美羽はもう一方の手で額から頬を撫でた。

 もう大丈夫かと思って手を離そうかと思ったが、まだ不安で離れられない。美羽は座ったまま手を繋ぎ、頭をベッドに凭れかけながら、類の呼吸を聞いていた。

 その呼吸と鼓動を感じ、香水やシャンプーからではない類本来の匂いを嗅ぎ取り、美羽の心もまた穏やかな気持ちに満たされていく。

 あぁ、懐かしいこの感じ……

 いつもこの温もりに包まれて幸せな気持ちで眠りにつき、朝を迎えた記憶が蘇る。類の腕の中でだけ、美羽は深く穏やかな眠りにつくことが出来た。

 温かく柔らかな感情に身を任せていると、どうして類のことをあんなに恐がっていたのだろうと不思議に思えてきた。

 こんなに大切で、愛しい存在なのに。

 類の手の温もりに、そっと寄り添った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...