【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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93.募りゆく嫌悪

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 義昭が遅いとはいえ、自分まで二度寝するわけにはいかない。美羽は支度を整えると、洗濯をするため、浴室へと向かった。

 え……

 洗濯籠から洗濯を仕分けするのに、類の洋服がないことに気づく。洗濯槽を覗いてみると、そこに既に類の洋服が投げ込まれていた。

 これって、いつもの類の習慣なの?
 それとも、私が類に脱いだ下着を見られたくなくて入れたことに気づいて、わざと?

 洗濯槽からもう一度衣服を取り出し、仕分けしていく。洗濯籠にある義昭の下着も一緒に入れようとして、一瞬躊躇してしまう。

 今までなら、普通に洗濯出来てたのに……

 洗濯機のボタンを押すと、朝食の準備のため階段を下りていく。

「ミュー、おっはよう♪」
「おは、よう……類」

 満面の笑みにキッチンで迎えられ、美羽は戸惑いながらも笑みを返した。

 類は真っ白なTシャツの上にショールのように丈の長いグレーのニット素材のカーディガンを羽織り、黒のスキニーパンツを合わせていた。胸元には石のついた長めのネックレスをしている。シンプルで清潔感がありながら、類が着るとオシャレに見える。 

「ワイン飲んだら爆睡しちゃってさー。さっき起きてビックリした」
「そ、そう……」
 
 さっきまで私が類の手を握って部屋で寝ていたなんて、気づいてないみたい。良かった……

 類はキッチンの戸棚からフライパンを出した。

「る、類! 私が作るからいいよ!!」
「なんで? 一緒に作ればいいじゃん。その方が早いし。ねぇねぇ、パンケーキ食べたい!」
「で、でも……」

 義昭さんは、パンケーキなんて食べないかも。

「えっ、パンケーキ食べたくない?」

 類に首を傾けてじっと見つめられ、美羽は目を逸らした。

「わ、分かった」

 まだ昨夜のわだかまりが残っていた。類の目の前で無理してケーキを食べた義昭のことだから、パンケーキも類と作ったといえば、文句を言うことなく食べるだろう。

 美羽はキッチンに立つと、引き出しから白に淡いピンクやオレンジの薔薇柄の入ったエプロンを出して付けた。類の視線を感じて、顔が熱くなっていく。

「な、なに?」
「ううん。ミューのエプロン姿、可愛いなぁと思って」
「ッッ……からかわないで」
「からかってないよ。ほんとのことだもん」

 美羽はくるりと背を向けた。

「ほ、ほら、ホットケーキ作ろ!」

 後ろで一つに束ねた髪の間から見える首が、ほんのりピンクに染まっていた。類は口角を上げ、美羽の肩を抱くと耳の近くで囁いた。

「ねぇ、小麦粉とベーキングパウダーどこ?」
「ッ!」

 美羽は類からすり抜けるようにして、戸棚を開けた。

「ホットケーキミックスあるけど」
「いいね! アメリカでも売ってるけどさぁ、なんか膨らみがイマイチなんだよねー。あ、ホイップクリームは? あと、メープルシロップも必要だよね」
「ホイップクリームはないなぁ。メープルシロップなら、お土産にもらったのがあるけど……」

 冷蔵庫から掌サイズのメープルシロップの小瓶を取り出すと、類がプッと吹き出した。

「ちっちゃ! こんなん、1回分じゃん! アメリカだと、でかいのだと1ガロンで売ってるよ」
「1ガロンってどのぐらい?」
「えーっと、4.5リットルぐらい?」
「よ、4.5リットル!? 一生あっても使いきれないよ!!」
「あっちのメープルシロップのかけ方、ハンパないから!!」
「フフッ、だからって大きすぎでしょ」

 そんな会話を交わしているうちに、美羽は自然と笑顔になっていた。

「良かった」

 まるで優しく撫でられるかのような瞳で類に見つめられ、美羽の心臓がトクンと跳ねた。

「えっ?」
「だってさ、昨日僕と会ってからずっとミュー深刻そうな顔だったからさ。ミューにはいつも、笑顔でいて欲しいんだ。ミューの笑顔が一番好きだから」
「類……」

 美羽の胸がチクリと痛み、鼻の奥がツンと突きあがってくるような刺激が走る。

 笑顔なんて……義昭さんとの生活の中で、忘れてた。類となら再び、取り戻せるのかな。
 もし類とずっと笑って過ごせたら、幸せなのに。

「あーっ、お腹すいたー」

 類の間の抜けた声でハッとし、美羽は戸棚からボウルを出した。

「じゃ、作ろっか……」

 パンケーキが焼きあがると、類は手をパチンと叩いた。

「じゃ、ヨシ起こしてくるね!」
「ぁ、類!!」

 止める間もなく、類は軽やかに階段を上っていった。

 低血圧の義昭は、朝は特に機嫌が悪い。ペースを乱されたくない義昭はいつも目覚ましを掛けて自分のタイミングで起き、支度をする。特にお酒が入った翌日などは最悪で、起きてこない義昭を心配して部屋に入った時には怒鳴られた。

 大丈夫かな、類……

 ダイニングテーブルに3人分の朝食を用意しながらそわそわしていると、2人分の足音が下りてきた。

「ん、いい匂いだな」
「おは……」

 その後の言葉は続かなかった。義昭がパジャマのままで階段を下りてきたからだ。義昭は週末であっても朝起きると着替えてから朝食をとる。パジャマでなんて、ありえなかった。

「ヨシが着替えたいって言ったんだけどさぁ、それじゃせっかくのパンケーキが冷めちゃうからって、僕が急かしたんだ」

 類はそう言って、わざわざ義昭の隣に置いた類のパンケーキが載った皿をごく自然な仕草で美羽の隣の席の前に置くと、そこに座った。もうそこが、類の定位置に決まったようだ。

「じゃ、食べよー♪」

 やはり、義昭は類と作ったパンケーキを文句言うことなく食べていた。

「ヨシ、メープルシロップそれじゃ少なすぎだよ!」

 類は小瓶を手に取ると義昭のパンケーキの上に掲げた。その瞬間、ドボッと勢いよくシロップがパンケーキに溢れ落ち、見る見る間に染み込んで濃く変色していく。

「うわっ、ごめん! かけ過ぎちゃった。僕のと交換する?」
「あ……いや、大丈夫だ」

 どぷどぷとメープルシロップの海に浮かぶパンケーキにナイフを入れ、引き攣った笑顔でフォークに刺すと口に運ぶ。

 それを見て胸がすくような思いがし、そんな自分の黒い気持ちにまた焦りもした。

 今まで、義昭さんから酷い扱いを受けても、仕返ししようなんて思ったことなかったのに。どうしたんだろう、私。
 こんな思い、持ちたくないのに。
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