【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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109.回想−2

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 類はシャワーを浴び終えると、湯気の立ち上る躰のまま美羽の部屋の前まで行き、足を止めた。

 Are you ready(もういいかい)?
 ……Here I come(ほら、いくよ)!

「ミュー、おやすみ」

 これはもう、類の中で秘事の始まりの合図となっていた。それは、美羽にとっても同様で、類の発した言葉により、彼女の緊張、そして興奮が扉の向こうから伝わってきて肌がさざめいた。

 音を立てないようにスマホを扉の前にそっと置くと、静かに立ち去る。

 部屋に戻りパソコンからアプリを立ち上げると、美羽はもう扉に凭れ掛かって息を潜めていた。

 相変わらず警戒してるね、ミュー……
 
 類はあの夜以来、美羽の部屋に行ってもいいかと尋ねることはしなかったし、部屋に入ることもしない。それでも美羽は、未だ類が部屋に入ってくることを恐れているのだ。

 パソコンにあらかじめインストールしておいたボイスレコーダーアプリを立ち上げる。SMS受信をトリガーに、遠隔から録音できるのが市場に出回っているものだが、類は更に改良を加え、再生も出来るようにした。

 パソコンをベッドの脇に置き、すぐに義昭の言葉が再生できるようにセッティングする。部屋を薄暗くし、ベッドに横たわった。



 さぁ、舞台は整ったよ。
 あとは僕の演出通りに動いてね、女優さん?

 薄暗く静まり返った美羽の部屋に、密やかな乱れた呼吸だけが響く。

 鍵を掛けた部屋の扉を背にして凭れ掛かり、美羽は類からの責め苦に必死に耐えていた。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」



 お願い、類! やめ、て……



 美羽の悲痛な叫びが、類の脳髄を震わせる。美羽に拒否される度に、類の心の奥底から深い哀しみと憎しみが沸き上がってくる。

 どうして僕を受け入れてくれないの?
 僕を愛してよ、あの頃のように……

 ほんとは、僕を求めてるくせに。

 ベッドに横たわる類の脳裏には、一糸纒わぬ陶器のような滑らかな肌を晒した美羽が浮かび上がっている。白い肌に映える鮮やかなピンク色の胸の尖りを弾き、摘み、捻り、上下に揺さぶり、内腿をもう一方の指でスーッと何度もなぞり上げていく。

 知り尽くしている美羽の躰を、執拗な愛撫で追い詰めていく。

 スピーカーから聞こえる美羽の呼吸が荒くなっている。薄暗いのではっきりと分からないが、脚に力が入っていないように見える。きっと、今にも膝から崩れ落ちそうな状態だろう。

 さらに蕾をキュッときつく摘むと、美羽の躰がビクンと跳ねた。

 下半身が熱くなり、深奥がビクビクと震える。

 ほら、ミューだって気持ちよくなってる……
 素直になりなよ。

 爪を立ててカリッと蕾を擦ると、美羽が手で口を塞いだ。頭頂部しか見えないので表情は分からないが、欲情を煽り立てる扇情的な顔を浮かべているに違いない。

 ジンジンと伝わってくる……
 美羽の、快感の波が。
 絶頂を求める、彼女の本能の叫びが。



「じゃ、これは?」



 妖艶に囁いた類は横向きになると、羽で撫でるように自らの背中をスルリとなぞった。

「ンッッ!!」

 予想外だった刺激に美羽の背中が大きくしなった。

 ガタン!!

 大きな音をたてて、美羽の躰が扉にぶつかる。緊張で硬直しているのが画面越しからだけでなく、類の躰にも直に伝わってきた。

 類は手元に引き寄せたパソコンに指を伸ばし、再生ボタンを押した。

 スピーカーからは扉の向こうの義昭の声は聞きとれない。

 だが……

「だ、大丈夫……なんでもないの」

 との美羽の返事に、ちゃんと声が届いたのだと知った。

 次の再生ボタンを押し、『そうか』と答えさせる。

 美羽は、次の言葉を息を潜めて待っている。



 もし美羽が義昭の言葉に反応して扉を開けてしまったら、この計画は頓挫《とんざ》してしまう。



 美羽と同じように、類の緊張も高まっていた。

 美羽の性格からして扉を開けることはないだろうと踏んでいる。

 それでも、美羽がベッドに移動するまでは落ち着かない。美羽に何も手出ししないのは、一刻も早く証拠を回収したいからだ。

 スマホさえ回収してしまえばこっちのものだ。美羽が義昭に昨夜の出来事に触れることはありえないし、もし尋ねたとしても義昭はかなり泥酔していたので記憶になくても不審に思われることはないだろう。



 あいつには、なんで僕のスマホがミューの部屋の前に落ちてたのか、絶対分かるわけないんだから。



 画面に映る美羽の躰が、骨が抜けたようにへなへなと崩れていく。ようやく、義昭が何もしてこないと分かったようだ。

 それでもまだ、その場を動くことはない。類から何かされるのではないかと、まだ警戒しているようだ。類は感情を圧し殺し、息を詰めて美羽を見つめる。

 類が怖いのは、美羽が慎重な性格で勘が鋭いこと、だけではない。

 類が美羽を知り尽くしているように、美羽もまた類のことを知り尽くしているからだ。だからこそ類は、その裏の裏をかかなければならない。

 衣服を整えた類は上半身を起こし、あぐらをかいて画面の美羽に見入った。

 身を守るようにして両腕で自らを抱き締め、殺気立った雰囲気を漂わせている美羽は、硬い殻に閉じこもっているかのようだ。

 別々の空間。薄暗い部屋の中で、それぞれの時を待つ美羽と類。

 ギリギリと胃が絞られ、胃液が這い上がってくるような気持ち悪さを覚える。永遠とも思える時間が流れていく。

「ック……」

 類がガリッと歯を鳴らす。緊張の糸がプツリと切れそうになった時、美羽が両腕を解放して床につくと、ゆっくり立ち上がった。ベッドに向かうとシーツを捲り、躰をその隙間に滑らせる。美羽がベッドに横たわると、類は大きく息を吐き出した。

 何度も寝返りを打ち、眠れない様子の美羽に苛立ちが起こりそうになるのをグッと抑え、類は辛抱強く待ち続けた。

 やがて美羽の表情が穏やかになり、寝返りを打たなくなり、ついに眠ったと確信すると、類の険しかった眉が少し解けた。
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