【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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167.予定外の客

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 ディナータイムが始まり、予約客の席が花澤の分を除いて全て埋まった。飲み物のオーダーを取り、全ての客席に運び終えると、香織が声を掛けてきた。

「連絡もなくドタキャンする客がいなくて良かったわね」
「うん、ほんと……」

 香織と顔を合わせて微笑んでいると、店の扉が開く音が聞こえた。

「ぁ、私行ってくるね」

 美羽が早足で扉へと向かうと、そこにはブルネットに碧眼の中年の男女が立っていた。

「Hi! We are here to have a Christmas dinner tonight. We heard that you have special turkey and tastes really great!  It is very hard to find such a turkey in Japan. We are very thrilled and look forward to it!!」

 英語で一気に早口で捲し立てられる。なんとかクリスマスディナーを食べに来たらしいということは分かったものの、それをどう英語で返したらいいのか分からなかった。

 ど、どうしよう……

 困っていると、「美羽!」と背中から香織の声が掛けられた。

 ほっとして後ろを振り向くと、そこに類が立っている。

「類くんなら英語喋れるから、頼んで来てもらったの」
「そ、そうなんだ……」

 類は中年の男女に向かって、にこやかな笑みを浮かべた。

「Hello. May I help you?」
「Wow!! Are you guys twins? 」
「You are Sooooo look alike!!!!!」

 客席に響く程のふたりの声に、周りの客たちが驚いたようにこちらを見つめ、今度はあまりにもそっくりな美羽と類に驚き、話題にしているのを感じる。

 居心地悪く感じる中、類は流暢な英語で中年夫婦と会話を始めた。美羽が考えていたとおり、彼らはこのカフェのクリスマスディナーの噂を聞きつけ、やってきたらしい。

「で、何て説明すればいいの?」
「ちょ、ちょっと待って。隼斗兄さんに相談してくるから……」

 美羽は厨房へと向かい、隼斗に声を掛けて事情を説明した。

「本来なら完全予約制だから断るところだが、キャンセルが一件入っているから、店側としても食材が無駄にならず、売上に繋がるのは助かる。受けてくれ」
「はい、分かりました」

 香織は既に自分の担当のテーブルの前菜を配り終え、美羽の担当の分をトレーに載せていた。

「あ、ごめん。かおりん」
「こっちは大丈夫だから」

 香織に頷くと、類の元へと急ぐ。

「あそこのひとつ空いてる席に、案内してくれる?」
「うん、分かった」

 類はふたりに向き直り、テーブルへと案内した。その振る舞いは、とても経験のないウェイターとは思えないほどに優雅だった。
 ふたりを案内すると、類はクリスマスディナーのメニューを手に取った。

「じゃあこれ、説明してくるね」

 颯爽とふたりの元へと戻り、英語表記のないメニューを全て説明していく。

 美羽は自分の仕事に戻りながらも類の動きが気になり、チラチラと視線を向けていると、手招きされた。

「ねぇ、ワインリストある?」
「あ、うん……」

 美羽はレジ横からワインリストを取り出し、類に手渡した。リストを広げた類は一瞥すると、にっこりと微笑む。

「うん、これなら僕の知ってるワインばっかりだから、説明できそう。ミュー、ありがとう」
「こ、こちらこそ……」

 類と美羽のやりとりを、客たちが好奇の眼差しで見つめているのを感じる。

 今日はクリスマスディナーということで店内の照明やインテリア、音楽もそれに合わせたロマンチックな雰囲気で満たされているし、客の殆どが恋人や夫婦のため、下世話な質問をされることはない。だが客の中には常連も多いため、美羽の双子である類の存在が噂として広がることは必須だろう。

 美羽は客からの視線を避けるように、類の元から去った。

 ワインリストを手に、類がカウンターへと戻り、美羽に声をかける。

「食前酒にシャンパーニュをグラスで2つ、食事が始まったらソーヴィニヨンブランをボトルで持ってってもらえる?」
「あ、はい」
「じゃあ僕は、厨房に戻るね」

 類は背を向けると片手を軽くあげた。

「類くん、カッケーーー!!」

 大声を上げた浩平の声が客のいる店内にまで響き、客たちの忍び笑いがクスクスと聞こえてくる。

「浩平、仕事に集中しろ」
「は、はいぃぃ」

 相変わらずな隼斗と浩平のやりとりに肩を竦めつつ、戻ってきた香織が美羽に耳打ちした。

「ねぇ。類くんのウェイター、様になってるじゃん! 彼が表に出たら女性のお客様から人気出そうじゃない?」

 チリッと心臓が焼け付くような痛みが走る。

「ど、どうかな……」

 曖昧に微笑むと、美羽は足早にワインクーラーへと向かった。
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