【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
193 / 498

187.ぶつかりあう嫉妬

しおりを挟む
 疑問と不安が入り混じる中、角を曲がったところで類は停車している黒塗りの高級車に向かって手を挙げた。すると、類とサイドミラー越しに目の合った運転手が降りてきて、後部座席の扉を開ける。

「ご予約いただいた内山様ですね。どうぞお乗り下さいませ」

 類は美羽を促し、座席に座らせると自らも美羽の隣に座った。

「どうして、タクシーにしたの?」
「タクシーじゃなくてハイヤーだよ。もう遅いから電車の本数少なくなってるし、この時期この時間帯の電車は忘年会とか飲み会帰りの厄介な乗客が多そうでしょ。だから、こっちで帰る方がいいと思って」

 ハイヤーに乗ったことなど今までなかったが、確かに一般的なタクシーとは違って高級車だし、乗る時の対応も異なるし、車内の内装も重厚感を感じる。

 白髪の上品そうな男性運転手がハンドルを握り、穏やかな口調で話しかけた。

「では、出発致します」

 自分がワンランク上の世界の住人のような扱いをされ、嬉しくなるというより恐縮してしまう。もしかしたら、帰りの運賃だけで今日1日分のバイト代が飛んでしまうのではないかなんて、染み付いた貧乏じみた考えが浮かんでしまう。

 ウィーンと運転席と後部座席の間に分厚いプラスチック板のような仕切りが上がってきた。

「これで、僕たちの会話は聞かれることないから安心して」

 類の艶っぽい声が耳に響き、美羽の背中がゾクリと震えた。

 まさか、その為にハイヤーを手配したの?

「フフッ、警戒してるの? 大丈夫……約束は、ちゃんと守るから」

 類が美羽の首筋に指をたててチェーンを引っ掛け、するすると引き寄せた。

「ミューも、ちゃんと僕との約束守ってくれてるしね」

 フッと首元に息を吹きかけられ、「ンクッ」と出そうになった声を必死に押し留めた。長い帰路になりそうな予感がした。

 類は長い脚を持て余すように大きく組むと、美羽の腰を引き寄せた。

「ねぇ、ミューはお店で働いてる時、いつもあんな風に客から声かけられてるの?」
「ぇ、どういう意味?」

 首を傾げた美羽に、類は苛立ちを見せて歯をギリッと鳴らした。

「ほら、親子ぐらい年の差が離れてたサラリーマン二人とかさ、あと他にもミューに色目使ってた奴いたし、カフェタイムの時なんかカップルで来てたくせに、美羽のことボーッと見つめてた大学生もいたじゃん! それにディナーの時、なんか手紙みたいなの渡されてなかった?」

 類の観察力に感心しつつ、美羽はクスッと笑った。

「大川さんと水井さんは常連客で私が結婚してるの知ってるし、私のこと見てたって言っても別に口説かれたり誘われたわけじゃないし、ディナーの時は……えっと、携帯の番号渡されたけど、ちゃんと結婚してますからってお断りしたよ?」
「ねぇ、そんなこと日常的にあるの?」
「日常的ってわけじゃ……ない、けど」

 美羽は言葉を濁した。結婚してからはぐんと減ったものの、美羽が結婚していると知らずにデートに誘ってくる客もいるし、知っていても色目を使ってくるような客もいる。けれど、それを正直に話したところで、いい結果に繋がらないのは分かっている。

「心配しないで。私だって子供じゃないんだから、それぐらいの客あしらいは身につけてるし、ちゃんと断ってるから」

 幼い子供を諭すような美羽の言い草に、類が激昂した。

「ミューは全然分かってないよ! だから前にストーカーに付き纏われたんでしょ? ミューは警戒心が足りないんだよ!!
 浩平くんにパフェ作ってもらったり、隼斗兄さんに特別扱いされたりしてるのが、どんな意味があるか考えたことないの?」
「何、言ってるの、類……」

 耳を疑うような発言に、美羽は開いた口が塞がらなかった。

「浩平くんはずっと一緒に働いてきた大切な仲間で、隼斗兄さんは義理とはいえ兄妹なんだよ? 類が疑うような恋愛感情なんて、あるはずないじゃない」

 類が自嘲的な笑みを浮かべた。

「何言ってんの、僕たちだって姉と弟で惹かれあってる。血の繋がらない隼斗兄さんがミューを好きになってもおかしくないでしょ」
「やめてよ!! そんなの、考えたくもないよ!!」

 美羽は両手を耳で塞ぎ、頭を振った。

 義理とはいえ、兄として慕っている隼斗が自分に恋心だなんて感じたこともないし、考えたことすらない。言われただけで寒気がした。

「類の方がおかしいよ、そんなこと考えるなんて……私はずっとあそこで働いてるの。みんな家族みたいに大切な人たちなの。そんな風に言わないで」
「美羽が鈍感だから、気づいてないだけだよ」

 美羽が今日1日ずっと抱えていた嫉妬や嫌悪や怒りや寂しさ、孤立感がごちゃ混ぜになって心の中でぐるぐると渦を巻き、爆発する。

「自分だって、萌たんと仲良くしてたくせに!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...