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219.煩悶(煩悶) ー類sideー
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昼間には太陽の光を目一杯に取り込む、大きな天窓が取られた高い天井。がっしりとした太い木材の梁がめぐらされており、木の温もりを感じさせる。
広いフローリングの部屋には、シングルベッドが2つとTVの向かいに幅の広いベッドにもなるカウチが置かれている。壁側には、まだ開けられていない黒い円筒状の寝袋が2つ、無造作に転がっていた。
ところどころに荷物や衣服が乱雑し、一見賑やかに見える部屋は、だが今はひとりのみ。ベッドに腰掛け、スマホの画面を一心に見つめている姿があるだけだった。
ミュー。
どうして既読がついてるのに、返事してくれないの?
長い睫毛を震わせた類は心が大きく掻き乱されそうになり、フーッと大きく息を吐いて呼吸を整えた。美羽の心の動揺が伝わるように、自分の動揺もまた、美羽に伝わってしまうからだ。
大、丈夫……あの感覚からして、ヨシはまだミューには手を出していないはずだ。
そう確信していながらも、予想外の義昭の行動に煩悶していた。
クリスマスイブ以来、義昭が美羽に対して少しずつ距離を縮めていることは感じていた。これもまた予想外のハプニングではあったが、それはかえって類にとって好都合となった。
というのは、義昭に対して既に嫌悪を抱いている美羽は、義昭が優しくすればするほど、近づけば近づくほどに、より一層嫌悪感が高まっていたからだ。
類がそんな美羽に対して手を出さなかったのは、そうすることで自分への渇望を高めさせるためだ。
だからこそ、美羽が義昭の実家に行く時もついていくことはせず、あえて浩平とスキーに行くことにしたのだ。
居心地の悪い義昭の実家で過ごす間、友人越しに類が楽しく過ごしていることを知った美羽は、嫉妬と寂しさを抑えきれず、類への恋慕を募らせ、会いたくて堪らなくなるに違いない。
そこへ自分が優しく声をかければ、美羽の心は大きく揺さぶられるはず……それが、類の思惑だった。
義昭が美羽に近づこうとすることはあっても、まさか実家で美羽に襲うまではしないだろうと軽んじていた。あんなこと、計算外だ。
義昭は自分が類の手駒として扱われていることを知らない。だから、こちらの思い通りに動かないこともある。
「駒のくせに、勝手なことしやがって……」
類は悔しさを滲ませた声を震わせた。
美羽の感じたおぞましさ、恐怖、焦りがひたひたと伝わってきても助けの手を差し伸べられず、監視カメラなどつけていないから実際に義昭が美羽に対してどんな風に迫ったのかという詳しい状況も分からない。どれほど歯痒い思いをしたことか……
暴発しそうな感情を制御するのに、一苦労だった。
気持ちをなんとか抑えることが出来たのは、美羽の不快感は感じたものの触られたような感触が伝わってこなかったこと、そして、この出来事により美羽の類を求める気持ちが今まで以上に強く、大きくなっていくと信じたからだ。
義昭への強い憤りはあるものの、駒としての役割は果たしたと言えるだろう。
類は祈りを捧げるように、スマホを胸に強く抱き締めた。
「ウック……ミュー……」
ねぇ、ミュー。言ってよ。
僕に、『助けて』って。『今すぐ、迎えに来て』って。
僕が誰よりも必要だって、僕を愛してるって言ってよ……
どうか、心を開いて。
だが、いくら待とうとも美羽からの返事は一向に返ってこなかった。もっとストレートなメッセージを送ろうかとも考えたが、それは逆に美羽に警戒される恐れがある。
駆け引きは、慎重に行わなければならない。
絶対に、勝つために。
広いフローリングの部屋には、シングルベッドが2つとTVの向かいに幅の広いベッドにもなるカウチが置かれている。壁側には、まだ開けられていない黒い円筒状の寝袋が2つ、無造作に転がっていた。
ところどころに荷物や衣服が乱雑し、一見賑やかに見える部屋は、だが今はひとりのみ。ベッドに腰掛け、スマホの画面を一心に見つめている姿があるだけだった。
ミュー。
どうして既読がついてるのに、返事してくれないの?
長い睫毛を震わせた類は心が大きく掻き乱されそうになり、フーッと大きく息を吐いて呼吸を整えた。美羽の心の動揺が伝わるように、自分の動揺もまた、美羽に伝わってしまうからだ。
大、丈夫……あの感覚からして、ヨシはまだミューには手を出していないはずだ。
そう確信していながらも、予想外の義昭の行動に煩悶していた。
クリスマスイブ以来、義昭が美羽に対して少しずつ距離を縮めていることは感じていた。これもまた予想外のハプニングではあったが、それはかえって類にとって好都合となった。
というのは、義昭に対して既に嫌悪を抱いている美羽は、義昭が優しくすればするほど、近づけば近づくほどに、より一層嫌悪感が高まっていたからだ。
類がそんな美羽に対して手を出さなかったのは、そうすることで自分への渇望を高めさせるためだ。
だからこそ、美羽が義昭の実家に行く時もついていくことはせず、あえて浩平とスキーに行くことにしたのだ。
居心地の悪い義昭の実家で過ごす間、友人越しに類が楽しく過ごしていることを知った美羽は、嫉妬と寂しさを抑えきれず、類への恋慕を募らせ、会いたくて堪らなくなるに違いない。
そこへ自分が優しく声をかければ、美羽の心は大きく揺さぶられるはず……それが、類の思惑だった。
義昭が美羽に近づこうとすることはあっても、まさか実家で美羽に襲うまではしないだろうと軽んじていた。あんなこと、計算外だ。
義昭は自分が類の手駒として扱われていることを知らない。だから、こちらの思い通りに動かないこともある。
「駒のくせに、勝手なことしやがって……」
類は悔しさを滲ませた声を震わせた。
美羽の感じたおぞましさ、恐怖、焦りがひたひたと伝わってきても助けの手を差し伸べられず、監視カメラなどつけていないから実際に義昭が美羽に対してどんな風に迫ったのかという詳しい状況も分からない。どれほど歯痒い思いをしたことか……
暴発しそうな感情を制御するのに、一苦労だった。
気持ちをなんとか抑えることが出来たのは、美羽の不快感は感じたものの触られたような感触が伝わってこなかったこと、そして、この出来事により美羽の類を求める気持ちが今まで以上に強く、大きくなっていくと信じたからだ。
義昭への強い憤りはあるものの、駒としての役割は果たしたと言えるだろう。
類は祈りを捧げるように、スマホを胸に強く抱き締めた。
「ウック……ミュー……」
ねぇ、ミュー。言ってよ。
僕に、『助けて』って。『今すぐ、迎えに来て』って。
僕が誰よりも必要だって、僕を愛してるって言ってよ……
どうか、心を開いて。
だが、いくら待とうとも美羽からの返事は一向に返ってこなかった。もっとストレートなメッセージを送ろうかとも考えたが、それは逆に美羽に警戒される恐れがある。
駆け引きは、慎重に行わなければならない。
絶対に、勝つために。
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