266 / 498
260.義昭への罪悪感
しおりを挟む
反論できないまま両親との顔合わせを終え、義昭を駅まで送っていく。華江と拓斗から離れられても、心に埋められた錘に躰を引き摺られているようだ。
美羽は眉を下げ、肩を竦めて、小声で義昭に話しかけた。
「義昭さん、母があんな失礼なことを言ってしまってごめんなさい……」
「あ。いや……驚きはしたけど、少し納得したというか」
「え?」
美羽が驚いて見上げると、義昭が頭を掻いた。
「美羽さん、僕と会っている時もお母さんからよく電話がかかってきていろいろ聞かれていたし、門限を凄く気にされていたから、厳しい人なんだろうなぁと感じていたので。
まさか、結婚の条件までつけられるとは思わなかったですが」
「ご、ごめんなさいっっ!!」
美羽が腰を深く折り曲げて謝ると、義昭はへらへらと笑い顔を浮かべながら両手を振った。
「いや、美羽さんが悪いわけではないですから。
でも……もし、僕がお母さんの提案を受け入れられなければ、美羽さんは福岡に連れて行かれるってこと、なんですよね?」
駅の改札口が目の前に迫り、美羽は足を止めた。電車が到着したタイミングだったらしく、階段からはたくさんの人が降りて来て改札へとなだれ込んできていた。
それを避けるように美羽は改札から少し離れた柱に立って俯くと、消え入りそうな声で答えた。
「そう、なんです……
そしたら義昭さんと結婚が破談になるだけでなく、二度と会えなくなると思います」
類と再会する希望が絶たれ、この先一生母の監視の元で暮らしていかなければならないという恐ろしさから、美羽の躰が小刻みに震えた。
小動物のようにブルブルしている美羽の肩に、義昭が軽く触れる。
「分かりました。心配しないでください、なんとかしますから」
「は、い……」
私が恐れているのは義昭さんと結婚できないことでも、離れてしまう寂しさからでもないのに……彼に、誤解させてしまっている。
そして、彼の優しさを利用しようとしている。
真実を知った時、義昭さんは私のことをどう思うのだろう。こんなことするべきじゃない、やめるべきだって、彼に会うたびに思わずにはいられない。
それなのに、私は未だ類への希望を捨てられずにいる……
義昭と付き合ったことで生まれた罪悪感の芽は、今や大きな大木へと成長し、美羽の心に深い影を落としている。けれど今の美羽には、義昭に縋るより他なかった。
美羽は眉を下げ、肩を竦めて、小声で義昭に話しかけた。
「義昭さん、母があんな失礼なことを言ってしまってごめんなさい……」
「あ。いや……驚きはしたけど、少し納得したというか」
「え?」
美羽が驚いて見上げると、義昭が頭を掻いた。
「美羽さん、僕と会っている時もお母さんからよく電話がかかってきていろいろ聞かれていたし、門限を凄く気にされていたから、厳しい人なんだろうなぁと感じていたので。
まさか、結婚の条件までつけられるとは思わなかったですが」
「ご、ごめんなさいっっ!!」
美羽が腰を深く折り曲げて謝ると、義昭はへらへらと笑い顔を浮かべながら両手を振った。
「いや、美羽さんが悪いわけではないですから。
でも……もし、僕がお母さんの提案を受け入れられなければ、美羽さんは福岡に連れて行かれるってこと、なんですよね?」
駅の改札口が目の前に迫り、美羽は足を止めた。電車が到着したタイミングだったらしく、階段からはたくさんの人が降りて来て改札へとなだれ込んできていた。
それを避けるように美羽は改札から少し離れた柱に立って俯くと、消え入りそうな声で答えた。
「そう、なんです……
そしたら義昭さんと結婚が破談になるだけでなく、二度と会えなくなると思います」
類と再会する希望が絶たれ、この先一生母の監視の元で暮らしていかなければならないという恐ろしさから、美羽の躰が小刻みに震えた。
小動物のようにブルブルしている美羽の肩に、義昭が軽く触れる。
「分かりました。心配しないでください、なんとかしますから」
「は、い……」
私が恐れているのは義昭さんと結婚できないことでも、離れてしまう寂しさからでもないのに……彼に、誤解させてしまっている。
そして、彼の優しさを利用しようとしている。
真実を知った時、義昭さんは私のことをどう思うのだろう。こんなことするべきじゃない、やめるべきだって、彼に会うたびに思わずにはいられない。
それなのに、私は未だ類への希望を捨てられずにいる……
義昭と付き合ったことで生まれた罪悪感の芽は、今や大きな大木へと成長し、美羽の心に深い影を落としている。けれど今の美羽には、義昭に縋るより他なかった。
0
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる