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278.幸福阿吽教
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当初の予定通り、羽田空港から10時15分発の便に搭乗し、約2時間のフライトを経て福岡空港に到着した。
朝、隼斗と顔を合わせるのが気まづく、何を話したらいいのか分からなかった美羽だが、口数が少ない隼斗のおかげであまり会話をせずに済んだ。機内では隣にずっと座っていなければならない状況に緊張したが、隼斗は離陸するが早いかすぐに眠ってしまったため、その心配もなかった。
だが、会話はあまり交わしていなかったものの、隼斗は嫌悪感や不審な様子を見せることなく、いつも通りであったことに、美羽は心から安堵した。
大丈夫。隼斗兄さんには、昨日のことは気づかれてない。
隼斗への不安がなくなると、どうしても類のことを考えてしまう。
類は今頃、どうしてるんだろう……
何を考え、感じているの?
あれから二度と、類を感じることはなかった。美羽は睫毛を揺らし、類への思いを掻き消した。これから母と再会するのだ、類への思念を残してはならない。
九州の空の玄関口とも言われる福岡空港は、国内で4番目に乗降客数が多く、国際線も有するため、多くの人で賑わっていた。3階にはモダンで広々としたフードコートがあったり、2階に福岡の名産店が並んでいたりと、興味を惹かれる。だが、ここに観光で来たわけではないのだ。
美羽と隼斗はどこにも立ち寄ることなく、タクシー乗り場へと向かい、車に乗り込んだ。ここから1時間ほどかけて、目的地へと向かう。
空港から20分も走ると、田園に囲まれた長閑な風景へと変化していた。緑が濃く、空の色も青くなってきた気がする。道を走っている車の数が減り、建っている家もまばらになってくる。
そんな光景に、緊張と不安が増すのを感じながら、美羽は静かに車窓を眺めていた。隼斗も同じ気持ちでいるのか、起きているものの、ひとことも発することはなかった。
舗装された道が途切れ、車体が揺られながら山道を走っていく。年配の男性運転手がカーナビを確認してから、視線を上げた。
「お客さぁん、あれでよかと?」
耳慣れない博多弁に、自分が今は福岡にいるのだと感じつつ、美羽は木々の間から覗く、昔は白かったと思われる薄汚れた建物をみとめて頷いた。
「はい、あそこの前に停めてもらえますか」
運転手が、一瞬だけ不審そうな表情を浮かべた。無理もない。もし自分が彼の立場でも、そうしただろうから。
タクシーが近づいていくにつれて、建物の上の看板が見えてきた。前についていた文字が抜け落ちたのか、故意に外されたのか、『健康センター』の文字だけが残っている。駐車場に入ると存在感のある大きな立看板が立てられており、『健康センター』の下に『薬湯』『温泉』『サウナ・塩サウナ』『カラオケ』『大宴会場』との文字が連なっていた。
昔は健康センターとして賑わっていた頃もあったのだと思われる名残が、痛々しい。
ーーここは現在、『幸福阿吽教』の本部として、施設利用されている。
朝、隼斗と顔を合わせるのが気まづく、何を話したらいいのか分からなかった美羽だが、口数が少ない隼斗のおかげであまり会話をせずに済んだ。機内では隣にずっと座っていなければならない状況に緊張したが、隼斗は離陸するが早いかすぐに眠ってしまったため、その心配もなかった。
だが、会話はあまり交わしていなかったものの、隼斗は嫌悪感や不審な様子を見せることなく、いつも通りであったことに、美羽は心から安堵した。
大丈夫。隼斗兄さんには、昨日のことは気づかれてない。
隼斗への不安がなくなると、どうしても類のことを考えてしまう。
類は今頃、どうしてるんだろう……
何を考え、感じているの?
あれから二度と、類を感じることはなかった。美羽は睫毛を揺らし、類への思いを掻き消した。これから母と再会するのだ、類への思念を残してはならない。
九州の空の玄関口とも言われる福岡空港は、国内で4番目に乗降客数が多く、国際線も有するため、多くの人で賑わっていた。3階にはモダンで広々としたフードコートがあったり、2階に福岡の名産店が並んでいたりと、興味を惹かれる。だが、ここに観光で来たわけではないのだ。
美羽と隼斗はどこにも立ち寄ることなく、タクシー乗り場へと向かい、車に乗り込んだ。ここから1時間ほどかけて、目的地へと向かう。
空港から20分も走ると、田園に囲まれた長閑な風景へと変化していた。緑が濃く、空の色も青くなってきた気がする。道を走っている車の数が減り、建っている家もまばらになってくる。
そんな光景に、緊張と不安が増すのを感じながら、美羽は静かに車窓を眺めていた。隼斗も同じ気持ちでいるのか、起きているものの、ひとことも発することはなかった。
舗装された道が途切れ、車体が揺られながら山道を走っていく。年配の男性運転手がカーナビを確認してから、視線を上げた。
「お客さぁん、あれでよかと?」
耳慣れない博多弁に、自分が今は福岡にいるのだと感じつつ、美羽は木々の間から覗く、昔は白かったと思われる薄汚れた建物をみとめて頷いた。
「はい、あそこの前に停めてもらえますか」
運転手が、一瞬だけ不審そうな表情を浮かべた。無理もない。もし自分が彼の立場でも、そうしただろうから。
タクシーが近づいていくにつれて、建物の上の看板が見えてきた。前についていた文字が抜け落ちたのか、故意に外されたのか、『健康センター』の文字だけが残っている。駐車場に入ると存在感のある大きな立看板が立てられており、『健康センター』の下に『薬湯』『温泉』『サウナ・塩サウナ』『カラオケ』『大宴会場』との文字が連なっていた。
昔は健康センターとして賑わっていた頃もあったのだと思われる名残が、痛々しい。
ーーここは現在、『幸福阿吽教』の本部として、施設利用されている。
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