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284.奇妙な高揚感
しおりを挟む「……ぅ。美羽、大丈夫か?」
隼斗が美羽の肩に頭を傾け、小声で呟く。隼斗の声に現実に戻され、美羽はハッとして慌てて口を閉じて頷いた。
わ、たし……意識が、どこかに飛んでた。
あやうく流されて洗脳されそうになっていた自分に気づき、美羽は驚きを隠せなかった。今まで何度かここを訪れているが、こんなことは初めてだった。
ブルッと小さく躰が震えた。
洗脳とは、他者と同じでありたいという意識も利用されると聞く。隼斗が止めていなければ、美羽もこの興奮渦巻く信者の一部になっていたかもしれない。何度も参加しているうちに、自分への洗脳が少しずつ進んでいるのではないかという恐怖が過った。
興奮の絶頂を迎えた高槻の揺れが、今度は次第に小さくなっていく。同時に、信者もそれに合わせて落ち着きを取り戻していき、美羽は安堵の息を吐いた。
リーン、リーン、リーン……
鐘の音が、高く三回鳴り響いた。瞑想の合図だ。
会場のライトが消され、先ほどとは真逆の、不気味なほどの静けさに会場が包まれる。
未だ興奮を抱えたまま、気を鎮めようとする人々の呼吸の音が荒いものから深く長いものへと変化する。皮膚に微電流を流されているかのように、肌にピリピリとした感触が立ち上る。暗闇に身を置き、自分もまた目を閉じて共に瞑想している感覚に陥る。
長く重い沈黙がベールを下ろし、永遠に続いていくかのようだ。もしこのまま瞑想が終わらず、ずっとここに拘束され続けたら……そんな思いが胸を掠めた時、突然高槻が声を上げた。
「こぉふくぅーーー、あぁーうんーーー」
続いて信者も唱える。
「こぉふくぅーーー、あぁーうんーーー」
同じように二度『幸福阿吽』と唱え、ついに唱和が終わった。
皆が充実感に満ちた笑顔で拍手をする。まるでドラッグを打ってるかのような奇妙な高揚感が漂っていた。
高槻が皆の拍手と歓声を浴びながら再びステージへと上がり、信者たちが整然と自分たちの元の座っていた位置に戻ると、美羽は大きく息を吐き出した。
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