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299.リョウの霊力
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リョウは、幼い頃から特殊な霊力を持っていた。
それは、人に触れた時にその人が強く持っている過去の記憶が見えたり、物に触れることでその持ち主を感じとったり、オーラや守護霊を見ることが出来たり、自縛霊や動物霊等と話が出来たりといった、特殊能力だ。両親にはそういった霊力はなかったが、母方の祖母から受け継いだものだった。
リョウの祖母は、その地域では高名な霊能力者だった。一緒に暮らしていた祖母は誰よりも早くリョウの霊力に気づき、その扱い方を教えてくれた。
守護霊を敬うこと、動物霊との付き合い方、悪霊を祓う方法、人の過去が見えることによって起きる様々な事象。それから、霊気の高め方、抑え方も……
祖母がいれば、リョウは何も怖くなかった。地域の人から頼られ、尊敬され、常に多くの人々が絶えず訪問し、それを受け入れ、応える祖母を尊敬し、いつか自分もそうなれたらと憧れた。
だが、祖母はリョウが中学入学をあと1ヶ月で迎える頃に、持病の悪化が原因で亡くなってしまった。
祖母の介護を目的として同居していたリョウの両親は、祖母が亡くなると元々住んでいた父の住む東京へと引っ越した。リョウが中学に入学する直前というタイミングだったため、慌ただしく祖母の実家を後にすることになってしまった。
心の支えであり、大好きだった祖母を亡くして傷心のリョウだったが、それでも祖母や両親に心配をかけてはいけないと思った。そして、祖母の教えてくれたことを、新たな地でも生かしていこうと誓ったのだった。
だが、東京では今まで受け入れられていたリョウの行動は奇妙ととられ、気味悪がられることになった。皆には見えない動物霊に話しかけたり、次の日に欠席する生徒をあてたり、といったことをするうちに、リョウは『変わった転校生』として虐めを受けるようになった。
田舎でのびのびと育っていたリョウは、彼らに対してどう接していいのか分からず、どんどん無口になり、笑顔がなくなっていった。
田舎に住んでいた頃の友達とですら、連絡を取るのが怖くなってしまい、交流が途絶えてしまった。身近に感じていた祖母の存在すら疎ましく思うようになり、離れてしまったことで、ますます孤独を感じるようになった。
だが、そんなリョウに友達が出来た。中学二年の時に転校してきた渉だ。彼もまた田舎から引っ越してきて、方言の訛りをからかわれ、東京の中学に馴染めずにいた。
渉は、リョウに霊力があることをカッコいいと言ってくれた。純粋に興味を持って色々な質問をしてくる渉に、リョウは自らの霊力を披露することもあった。
渉がいれば、たとえあとの全員がリョウを避けようと、酷い言葉を投げかけようと平気だった。毎日来る日も来る日も渉と遊び、ふたりだけの秘密の場所や秘密ごとを増やし、共有していった。
『俺たち、ずっと友達やき』
笑顔で話しかける渉に、リョウも笑顔で返す。
『うん。何があっても、ずっと僕たちは友達だよ』
渉さえいれば、他には何もいらない。リョウは、幸せだった。
だが、ある日……渉の母親から宣告された。
「お願いやき、もう渉と遊ばんとって!」
元々渉は感受性が強く、本人に自覚はなかったが僅かに霊感を持っていた。そんな渉が霊力の強いリョウと親密な付き合いをしていくうちに彼の影響を受け、知らず知らずのうちに霊力が強くなっていたのだった。
リョウほどの明確さではないが、今まで見えなかった動物霊や地縛霊などが朧げに見えるようになったり、ラップ音が聞こえるようになった。それを母親に伝えたところ、気味悪がられ、その原因がリョウにあるとし、例の宣告をされたのだった。
その日から、渉はリョウと関わり合いを持たなくなった。話しかけても気まづそうに目を逸らされ、立ち去ってしまう。
「学校に行きたくない」
リョウがそう言い出したことで、偉大な母を亡くした喪失感の中、新生活に慣れようと必死で、子供を思いやる余裕のなかった母親が、息子の様子がおかしいことに気づいた。
それから教師や学校との話し合いが何度か持たれたが、渉を始めとした生徒たちはもう、リョウを『普通の生徒』として見ることは出来ない。
自分自身は霊力を持たないが、霊能力者である母をもったことによって悩み、苦しんだ経験をもつ母親は、そんなリョウの気持ちを理解しようと努力してくれた。その話を聞いた父親もまた、リョウの将来を心配した。
他の地域に暮らすことも考えたが、留学経験のあった父親は思い切ってアメリカへ移住することを決意した。
そこで、何もかも新しく始めればうまくいくと考えたのだ。
父親の意見で強引に決まってしまったアメリカ移住。不安だったのは、リョウだけでなく、海外滞在の経験のない英語を喋れない母親も一緒だ。
ようやく東京での生活にも慣れ、パートの仕事を始め、少しずつ友達も増えてきた中での予期せぬ引越しだった。
「どうして、日本を離れてアメリカにまで暮らす必要があるの!?」
リョウの寝静まった頃を見計らって、母親が父親を責め、愚痴を零す。だが、不幸なことにリョウはそんなやり取りを全て聞いてしまっていた。
僕のせいだ。
僕の霊力のせいで、母さんと父さんの仲が悪くなっちゃったんだ……
リョウはその度に、自分を責めた。
アメリカでは、自分の霊力は決して見せず、話さないこと。なるべく目立たないこと、誰とも話さないように、親密にならないようにと、密かに自分を戒めた。
そして、常に気を張り、自分の霊力を抑え込むことにした。
ーーこれ以上、両親に迷惑をかけないようにすること。
それが、リョウの願いであり、決意だった。
それは、人に触れた時にその人が強く持っている過去の記憶が見えたり、物に触れることでその持ち主を感じとったり、オーラや守護霊を見ることが出来たり、自縛霊や動物霊等と話が出来たりといった、特殊能力だ。両親にはそういった霊力はなかったが、母方の祖母から受け継いだものだった。
リョウの祖母は、その地域では高名な霊能力者だった。一緒に暮らしていた祖母は誰よりも早くリョウの霊力に気づき、その扱い方を教えてくれた。
守護霊を敬うこと、動物霊との付き合い方、悪霊を祓う方法、人の過去が見えることによって起きる様々な事象。それから、霊気の高め方、抑え方も……
祖母がいれば、リョウは何も怖くなかった。地域の人から頼られ、尊敬され、常に多くの人々が絶えず訪問し、それを受け入れ、応える祖母を尊敬し、いつか自分もそうなれたらと憧れた。
だが、祖母はリョウが中学入学をあと1ヶ月で迎える頃に、持病の悪化が原因で亡くなってしまった。
祖母の介護を目的として同居していたリョウの両親は、祖母が亡くなると元々住んでいた父の住む東京へと引っ越した。リョウが中学に入学する直前というタイミングだったため、慌ただしく祖母の実家を後にすることになってしまった。
心の支えであり、大好きだった祖母を亡くして傷心のリョウだったが、それでも祖母や両親に心配をかけてはいけないと思った。そして、祖母の教えてくれたことを、新たな地でも生かしていこうと誓ったのだった。
だが、東京では今まで受け入れられていたリョウの行動は奇妙ととられ、気味悪がられることになった。皆には見えない動物霊に話しかけたり、次の日に欠席する生徒をあてたり、といったことをするうちに、リョウは『変わった転校生』として虐めを受けるようになった。
田舎でのびのびと育っていたリョウは、彼らに対してどう接していいのか分からず、どんどん無口になり、笑顔がなくなっていった。
田舎に住んでいた頃の友達とですら、連絡を取るのが怖くなってしまい、交流が途絶えてしまった。身近に感じていた祖母の存在すら疎ましく思うようになり、離れてしまったことで、ますます孤独を感じるようになった。
だが、そんなリョウに友達が出来た。中学二年の時に転校してきた渉だ。彼もまた田舎から引っ越してきて、方言の訛りをからかわれ、東京の中学に馴染めずにいた。
渉は、リョウに霊力があることをカッコいいと言ってくれた。純粋に興味を持って色々な質問をしてくる渉に、リョウは自らの霊力を披露することもあった。
渉がいれば、たとえあとの全員がリョウを避けようと、酷い言葉を投げかけようと平気だった。毎日来る日も来る日も渉と遊び、ふたりだけの秘密の場所や秘密ごとを増やし、共有していった。
『俺たち、ずっと友達やき』
笑顔で話しかける渉に、リョウも笑顔で返す。
『うん。何があっても、ずっと僕たちは友達だよ』
渉さえいれば、他には何もいらない。リョウは、幸せだった。
だが、ある日……渉の母親から宣告された。
「お願いやき、もう渉と遊ばんとって!」
元々渉は感受性が強く、本人に自覚はなかったが僅かに霊感を持っていた。そんな渉が霊力の強いリョウと親密な付き合いをしていくうちに彼の影響を受け、知らず知らずのうちに霊力が強くなっていたのだった。
リョウほどの明確さではないが、今まで見えなかった動物霊や地縛霊などが朧げに見えるようになったり、ラップ音が聞こえるようになった。それを母親に伝えたところ、気味悪がられ、その原因がリョウにあるとし、例の宣告をされたのだった。
その日から、渉はリョウと関わり合いを持たなくなった。話しかけても気まづそうに目を逸らされ、立ち去ってしまう。
「学校に行きたくない」
リョウがそう言い出したことで、偉大な母を亡くした喪失感の中、新生活に慣れようと必死で、子供を思いやる余裕のなかった母親が、息子の様子がおかしいことに気づいた。
それから教師や学校との話し合いが何度か持たれたが、渉を始めとした生徒たちはもう、リョウを『普通の生徒』として見ることは出来ない。
自分自身は霊力を持たないが、霊能力者である母をもったことによって悩み、苦しんだ経験をもつ母親は、そんなリョウの気持ちを理解しようと努力してくれた。その話を聞いた父親もまた、リョウの将来を心配した。
他の地域に暮らすことも考えたが、留学経験のあった父親は思い切ってアメリカへ移住することを決意した。
そこで、何もかも新しく始めればうまくいくと考えたのだ。
父親の意見で強引に決まってしまったアメリカ移住。不安だったのは、リョウだけでなく、海外滞在の経験のない英語を喋れない母親も一緒だ。
ようやく東京での生活にも慣れ、パートの仕事を始め、少しずつ友達も増えてきた中での予期せぬ引越しだった。
「どうして、日本を離れてアメリカにまで暮らす必要があるの!?」
リョウの寝静まった頃を見計らって、母親が父親を責め、愚痴を零す。だが、不幸なことにリョウはそんなやり取りを全て聞いてしまっていた。
僕のせいだ。
僕の霊力のせいで、母さんと父さんの仲が悪くなっちゃったんだ……
リョウはその度に、自分を責めた。
アメリカでは、自分の霊力は決して見せず、話さないこと。なるべく目立たないこと、誰とも話さないように、親密にならないようにと、密かに自分を戒めた。
そして、常に気を張り、自分の霊力を抑え込むことにした。
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