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318.類との対面
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その時、琴子が家から飛び出してきた。ほのかを抱き締め、冷えた躰を擦り、頬擦りする。
「ほのちゃーん! ばあばと一緒にお家入りましょうね」
「だーっこ!」
「はいはい、抱っこね」
琴子はほのかを抱き上げながら、ぶつぶつと文句を言った。
「まったく、圭子ってば。晃さんの実家でストレスが溜まったから、これからパチンコに行くって言い残して、ほのちゃん置いてくなんて!」
圭子のパチンコ好きは今に始まったことじゃないが、夫の実家での滞在を途中で切り上げ、娘を兄夫婦の家に置き去りにしてまで行くなんて、異常だ。
ハァ……隼斗兄さんは『ゆっくり休め』って言ってくれたけど、これじゃ、息つくことすら出来なさそう。
美羽は琴子の背中を見ながら、密かに溜息を吐いた。
「圭子、2、3時間したら迎えに来るって言ってたから、それまでここにいさせてもらえるかしら?」
自分の非ではないのに申し訳なさそうに尋ねる琴子に、拒絶など出来るはずない。
「えぇ、もちろんです」
2、3時間なら……大丈夫だよね。
ほのかがこの家に入るのは、初めてだ。きょろきょろしているほのかに、美羽は精一杯の笑顔を見せた。
「ごめんね、おもちゃも絵本もないけど……お絵かき、する?」
「うんっ!!」
美羽は自分の部屋からノートと色ペンを持ってきて、ほのかの前に広げた。
「わぁーい」
早速ペンを手に取り、ほのかがお絵かきを始める。琴子が隣に座り、愛おしげに見つめながら、話しかける。
「あらぁ、ほのちゃんお絵かきお上手ねぇ」
類がほのかをちらりと眺め、義昭に尋ねた。
「この子、誰なの?」
「妹の子供なんだ。旦那の実家に行ってたはずなんだが……居心地が悪くて戻ってきた途端、パチンコに行ったらしい。ったく、どうしようもない奴だ」
いつもは類の前では諛う義昭が、あまりにもだらしない妹の態度に顔を顰め、本音を漏らした。
「そうなんだね。じゃあ僕、疲れたから部屋で休むよ」
類はそう言うと、立ち上がった。
立ち上がる類を見て、美羽が動揺する。
ぇ。類、部屋に戻っちゃうの!?
まだ何も話をしていないのに……
けれど、類を追いかけることなど出来ない。仕方なく、美羽も家事を始めることにした。
「わた、し……洗濯してきますね」
ボストンバッグを持って、二階に上がる。教団施設にいる間はずっと作務衣を着ていたので自分の洗濯物はそれほどないが、義昭と類の分があるはずだ。
下の階からは、ほのかと琴子の声が響いている。たぶん義昭は……新聞を読んでいるか、TVでも見ているだろう。
自分も義昭も子供がいないから、ほのかが来てもどう扱っていいのか分からない。おそらく類も、そうだろう。
琴子がいるとはいえ、ほのかを置き去りにしたことに、再び圭子へのイライラが募る。
母親になったことのない私が文句を言う資格はないかもしれないけど、たとえ不本意だったとしても、母親になった圭子さんは、ほのちゃんを守っていく義務があるはずなのに……
洗濯籠を見ると、洗濯物が入っていない。どうやら、琴子が洗濯してくれたらしい。義昭の洗濯物に触れずに済んでホッとした反面、洗濯物の量を見て、考え込む。
この量なら、洗うの勿体ないから明日にした方がいいかな。でも、僅かな時間とはいえ、教団施設の空気に触れていたのかと思うと、今すぐにでも洗いたい気持ちもあるし……
そう思っていると、階段を上ってくる音がした。
鼓動がトクンと高鳴る。
この足音は……
「類……」
類が、スポーツバッグを抱えて入ってきた。
類に会うのが怖いと思っていた。何かされるのではと、警戒する気持ちもあった。
けれど、こうして顔を合わせると、それ以上に自分が類に会えることを嬉しく感じていたのをヒシヒシと思い知らされる。
階段を上ってきたせいか、類の前髪が少し乱れている。彼の匂いが、狭い脱衣所での密室で香り立つ。
乾き切った喉が、何もない生唾をコクンと飲み干す。
「ほのちゃーん! ばあばと一緒にお家入りましょうね」
「だーっこ!」
「はいはい、抱っこね」
琴子はほのかを抱き上げながら、ぶつぶつと文句を言った。
「まったく、圭子ってば。晃さんの実家でストレスが溜まったから、これからパチンコに行くって言い残して、ほのちゃん置いてくなんて!」
圭子のパチンコ好きは今に始まったことじゃないが、夫の実家での滞在を途中で切り上げ、娘を兄夫婦の家に置き去りにしてまで行くなんて、異常だ。
ハァ……隼斗兄さんは『ゆっくり休め』って言ってくれたけど、これじゃ、息つくことすら出来なさそう。
美羽は琴子の背中を見ながら、密かに溜息を吐いた。
「圭子、2、3時間したら迎えに来るって言ってたから、それまでここにいさせてもらえるかしら?」
自分の非ではないのに申し訳なさそうに尋ねる琴子に、拒絶など出来るはずない。
「えぇ、もちろんです」
2、3時間なら……大丈夫だよね。
ほのかがこの家に入るのは、初めてだ。きょろきょろしているほのかに、美羽は精一杯の笑顔を見せた。
「ごめんね、おもちゃも絵本もないけど……お絵かき、する?」
「うんっ!!」
美羽は自分の部屋からノートと色ペンを持ってきて、ほのかの前に広げた。
「わぁーい」
早速ペンを手に取り、ほのかがお絵かきを始める。琴子が隣に座り、愛おしげに見つめながら、話しかける。
「あらぁ、ほのちゃんお絵かきお上手ねぇ」
類がほのかをちらりと眺め、義昭に尋ねた。
「この子、誰なの?」
「妹の子供なんだ。旦那の実家に行ってたはずなんだが……居心地が悪くて戻ってきた途端、パチンコに行ったらしい。ったく、どうしようもない奴だ」
いつもは類の前では諛う義昭が、あまりにもだらしない妹の態度に顔を顰め、本音を漏らした。
「そうなんだね。じゃあ僕、疲れたから部屋で休むよ」
類はそう言うと、立ち上がった。
立ち上がる類を見て、美羽が動揺する。
ぇ。類、部屋に戻っちゃうの!?
まだ何も話をしていないのに……
けれど、類を追いかけることなど出来ない。仕方なく、美羽も家事を始めることにした。
「わた、し……洗濯してきますね」
ボストンバッグを持って、二階に上がる。教団施設にいる間はずっと作務衣を着ていたので自分の洗濯物はそれほどないが、義昭と類の分があるはずだ。
下の階からは、ほのかと琴子の声が響いている。たぶん義昭は……新聞を読んでいるか、TVでも見ているだろう。
自分も義昭も子供がいないから、ほのかが来てもどう扱っていいのか分からない。おそらく類も、そうだろう。
琴子がいるとはいえ、ほのかを置き去りにしたことに、再び圭子へのイライラが募る。
母親になったことのない私が文句を言う資格はないかもしれないけど、たとえ不本意だったとしても、母親になった圭子さんは、ほのちゃんを守っていく義務があるはずなのに……
洗濯籠を見ると、洗濯物が入っていない。どうやら、琴子が洗濯してくれたらしい。義昭の洗濯物に触れずに済んでホッとした反面、洗濯物の量を見て、考え込む。
この量なら、洗うの勿体ないから明日にした方がいいかな。でも、僅かな時間とはいえ、教団施設の空気に触れていたのかと思うと、今すぐにでも洗いたい気持ちもあるし……
そう思っていると、階段を上ってくる音がした。
鼓動がトクンと高鳴る。
この足音は……
「類……」
類が、スポーツバッグを抱えて入ってきた。
類に会うのが怖いと思っていた。何かされるのではと、警戒する気持ちもあった。
けれど、こうして顔を合わせると、それ以上に自分が類に会えることを嬉しく感じていたのをヒシヒシと思い知らされる。
階段を上ってきたせいか、類の前髪が少し乱れている。彼の匂いが、狭い脱衣所での密室で香り立つ。
乾き切った喉が、何もない生唾をコクンと飲み干す。
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