【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
349 / 498

343.傾いていく気持ち

しおりを挟む
 閉じていた自動扉が開いた。

 その先には受付があり、そこに先ほど対応したと思われる女性が紺色の事務服を着て立っていた。名札には『山中』と書かれていた。

「初めまして。本日、朝野琴子様のご見学案内を担当させていただきます、アソシエの山中と申します。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、お世話になります」

 琴子は山中から名刺とパンフレットを両手で受け取り、軽くお辞儀をした。

「オーナー、初めまして。どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく」

 アソシエというのは、元々「Associe=仲間、協力者」を意味するフランス語であり、このマンションの専属スタッフとして、居住者が快適な生活を送れるよう、クリーニング、宅配便配送、タクシー手配、ハウスクリーニング、フラワー、ケータリング、グッズ販売、コピー、備品貸出、インフォメーション等、様々なサービスを提供している。

 交代制ではあるものの、常勤という形になるので、アソシエである山中が類を知らないのは、彼が名前だけのオーナーなのか、それとも最近彼がオーナーになったかのどちらかであろう。

 類のオーナーらしくない態度に、彼がこの賃貸マンションにどれだけ関わっているのかと美羽は疑問を抱いた。

 これから先、お義母さんが義昭さんの家に同居する可能性を考えて、この賃貸マンションのオーナーになったんじゃ……

 全ての類の行動には何か意味があるのではないかと、つい深読みしてしまう。

 まずは1階の共有スペースへと案内される。

「こちらが、パブリックリビングになります」

 受付の横の入り口を抜けるとラウンジとなっており、大きなTVスクリーンを囲んでゆったりとしたカウチが3台配置されている。壁一面がライブラリースペースとなっており、ファッション、料理、園芸やゴルフ雑誌なんかが置かれ、DVDも充実していた。

 既にコーヒー片手に談笑している夫婦らしき1組と年配の女性が座っており、こちらに気づくとにこやかな笑顔を向けた。

「あらぁ、山中さん、新しい方?」
「今、ご案内しているところなんですよ」

 すると、3人は琴子を見て口々に言い合った。

「ここは皆さん、いい人ばかりで過ごしやすいですよ」
「山中さんもいい人だし!」
「楽しいですよ」

 琴子はそんな彼らににこやかに相槌を打ちつつ、その隣のダイニングスペースへと移動した。

 誰でも自由に使えるキッチンがあり、ここでは料理教室が開かれたり、パーティーの準備に使われるのだという。8人がけのダイニングテーブルのすぐ脇には焼き立てパンとシリアル、ヨーグルト、コーヒーメーカーが置かれていた。これらのものは無料で提供されており、スープ、サラダ、卵料理といったアラカルトメニューは有料だそうだ。

 そこにも別の入居者たちがいて、遅めの朝食をとっていた。彼らも山中と雑談を交わし、琴子にもきさくに話しかけた。

「先ほど案内したのは入居者のみが使用できますが、これから案内するレストランは入居者だけでなく、一般の方にも開放されています」

 案内されたのは、表のエントランスとは反対側に位置するレストランだった。

 壁一面がガラス窓になっており、明るく柔らかな陽射しが射し込んでいる。清潔感のある白を基調としたテーブルと椅子が並び、あちこちでグループになって朝食を食べ、お喋りに花を咲かせていた。
 中には、入居者を訪ねてきた家族が一緒に食事している姿もあった。

 山中の案内に従って席に着くと、ウェイトレスがメニューを持ってきた。

 現在は朝食メニューとなっており、洋風セットと和風セットがあり、その他にシリアルやオートミール、お粥があり、お粥は七分粥、五分粥、三分粥と選べる。

「お年寄りでも食べやすいメニューを、栄養士の方が考えてくださってるんですよ。

 ここでは、朝、昼、夕のセットメニューのチケットを販売していて、入居者の方は割引価格で纏めて購入することが出来ます。とは言っても、実際に紙のチケットを渡すわけではなく、入居者は自分の部屋番号を告げれば自動的にチケットの枚数が減る仕組みとなっています。もしチケットが既になければウェイトレスがその旨を伝え、希望すれば口頭でチケットを購入することができます。

 セットのメニュー内容は日によって変わりますし、洋風と和風を用意していますので、その日の気分で選ぶことができます。栄養のバランスがよくて低カロリーだと、この近辺の方たちも大勢いらっしゃるんですよ。

 また、ここで食べることも可能ですし、持って帰って自宅で食べることもできますし、歩行が困難だったり病気の方にはデリバリーもしています」

「まぁ……」と、琴子が小さく感嘆の声をあげた。琴子の気持ちがどんどん傾いているのを感じ取れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...