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343.傾いていく気持ち
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閉じていた自動扉が開いた。
その先には受付があり、そこに先ほど対応したと思われる女性が紺色の事務服を着て立っていた。名札には『山中』と書かれていた。
「初めまして。本日、朝野琴子様のご見学案内を担当させていただきます、アソシエの山中と申します。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、お世話になります」
琴子は山中から名刺とパンフレットを両手で受け取り、軽くお辞儀をした。
「オーナー、初めまして。どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく」
アソシエというのは、元々「Associe=仲間、協力者」を意味するフランス語であり、このマンションの専属スタッフとして、居住者が快適な生活を送れるよう、クリーニング、宅配便配送、タクシー手配、ハウスクリーニング、フラワー、ケータリング、グッズ販売、コピー、備品貸出、インフォメーション等、様々なサービスを提供している。
交代制ではあるものの、常勤という形になるので、アソシエである山中が類を知らないのは、彼が名前だけのオーナーなのか、それとも最近彼がオーナーになったかのどちらかであろう。
類のオーナーらしくない態度に、彼がこの賃貸マンションにどれだけ関わっているのかと美羽は疑問を抱いた。
これから先、お義母さんが義昭さんの家に同居する可能性を考えて、この賃貸マンションのオーナーになったんじゃ……
全ての類の行動には何か意味があるのではないかと、つい深読みしてしまう。
まずは1階の共有スペースへと案内される。
「こちらが、パブリックリビングになります」
受付の横の入り口を抜けるとラウンジとなっており、大きなTVスクリーンを囲んでゆったりとしたカウチが3台配置されている。壁一面がライブラリースペースとなっており、ファッション、料理、園芸やゴルフ雑誌なんかが置かれ、DVDも充実していた。
既にコーヒー片手に談笑している夫婦らしき1組と年配の女性が座っており、こちらに気づくとにこやかな笑顔を向けた。
「あらぁ、山中さん、新しい方?」
「今、ご案内しているところなんですよ」
すると、3人は琴子を見て口々に言い合った。
「ここは皆さん、いい人ばかりで過ごしやすいですよ」
「山中さんもいい人だし!」
「楽しいですよ」
琴子はそんな彼らににこやかに相槌を打ちつつ、その隣のダイニングスペースへと移動した。
誰でも自由に使えるキッチンがあり、ここでは料理教室が開かれたり、パーティーの準備に使われるのだという。8人がけのダイニングテーブルのすぐ脇には焼き立てパンとシリアル、ヨーグルト、コーヒーメーカーが置かれていた。これらのものは無料で提供されており、スープ、サラダ、卵料理といったアラカルトメニューは有料だそうだ。
そこにも別の入居者たちがいて、遅めの朝食をとっていた。彼らも山中と雑談を交わし、琴子にもきさくに話しかけた。
「先ほど案内したのは入居者のみが使用できますが、これから案内するレストランは入居者だけでなく、一般の方にも開放されています」
案内されたのは、表のエントランスとは反対側に位置するレストランだった。
壁一面がガラス窓になっており、明るく柔らかな陽射しが射し込んでいる。清潔感のある白を基調としたテーブルと椅子が並び、あちこちでグループになって朝食を食べ、お喋りに花を咲かせていた。
中には、入居者を訪ねてきた家族が一緒に食事している姿もあった。
山中の案内に従って席に着くと、ウェイトレスがメニューを持ってきた。
現在は朝食メニューとなっており、洋風セットと和風セットがあり、その他にシリアルやオートミール、お粥があり、お粥は七分粥、五分粥、三分粥と選べる。
「お年寄りでも食べやすいメニューを、栄養士の方が考えてくださってるんですよ。
ここでは、朝、昼、夕のセットメニューのチケットを販売していて、入居者の方は割引価格で纏めて購入することが出来ます。とは言っても、実際に紙のチケットを渡すわけではなく、入居者は自分の部屋番号を告げれば自動的にチケットの枚数が減る仕組みとなっています。もしチケットが既になければウェイトレスがその旨を伝え、希望すれば口頭でチケットを購入することができます。
セットのメニュー内容は日によって変わりますし、洋風と和風を用意していますので、その日の気分で選ぶことができます。栄養のバランスがよくて低カロリーだと、この近辺の方たちも大勢いらっしゃるんですよ。
また、ここで食べることも可能ですし、持って帰って自宅で食べることもできますし、歩行が困難だったり病気の方にはデリバリーもしています」
「まぁ……」と、琴子が小さく感嘆の声をあげた。琴子の気持ちがどんどん傾いているのを感じ取れた。
その先には受付があり、そこに先ほど対応したと思われる女性が紺色の事務服を着て立っていた。名札には『山中』と書かれていた。
「初めまして。本日、朝野琴子様のご見学案内を担当させていただきます、アソシエの山中と申します。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、お世話になります」
琴子は山中から名刺とパンフレットを両手で受け取り、軽くお辞儀をした。
「オーナー、初めまして。どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく」
アソシエというのは、元々「Associe=仲間、協力者」を意味するフランス語であり、このマンションの専属スタッフとして、居住者が快適な生活を送れるよう、クリーニング、宅配便配送、タクシー手配、ハウスクリーニング、フラワー、ケータリング、グッズ販売、コピー、備品貸出、インフォメーション等、様々なサービスを提供している。
交代制ではあるものの、常勤という形になるので、アソシエである山中が類を知らないのは、彼が名前だけのオーナーなのか、それとも最近彼がオーナーになったかのどちらかであろう。
類のオーナーらしくない態度に、彼がこの賃貸マンションにどれだけ関わっているのかと美羽は疑問を抱いた。
これから先、お義母さんが義昭さんの家に同居する可能性を考えて、この賃貸マンションのオーナーになったんじゃ……
全ての類の行動には何か意味があるのではないかと、つい深読みしてしまう。
まずは1階の共有スペースへと案内される。
「こちらが、パブリックリビングになります」
受付の横の入り口を抜けるとラウンジとなっており、大きなTVスクリーンを囲んでゆったりとしたカウチが3台配置されている。壁一面がライブラリースペースとなっており、ファッション、料理、園芸やゴルフ雑誌なんかが置かれ、DVDも充実していた。
既にコーヒー片手に談笑している夫婦らしき1組と年配の女性が座っており、こちらに気づくとにこやかな笑顔を向けた。
「あらぁ、山中さん、新しい方?」
「今、ご案内しているところなんですよ」
すると、3人は琴子を見て口々に言い合った。
「ここは皆さん、いい人ばかりで過ごしやすいですよ」
「山中さんもいい人だし!」
「楽しいですよ」
琴子はそんな彼らににこやかに相槌を打ちつつ、その隣のダイニングスペースへと移動した。
誰でも自由に使えるキッチンがあり、ここでは料理教室が開かれたり、パーティーの準備に使われるのだという。8人がけのダイニングテーブルのすぐ脇には焼き立てパンとシリアル、ヨーグルト、コーヒーメーカーが置かれていた。これらのものは無料で提供されており、スープ、サラダ、卵料理といったアラカルトメニューは有料だそうだ。
そこにも別の入居者たちがいて、遅めの朝食をとっていた。彼らも山中と雑談を交わし、琴子にもきさくに話しかけた。
「先ほど案内したのは入居者のみが使用できますが、これから案内するレストランは入居者だけでなく、一般の方にも開放されています」
案内されたのは、表のエントランスとは反対側に位置するレストランだった。
壁一面がガラス窓になっており、明るく柔らかな陽射しが射し込んでいる。清潔感のある白を基調としたテーブルと椅子が並び、あちこちでグループになって朝食を食べ、お喋りに花を咲かせていた。
中には、入居者を訪ねてきた家族が一緒に食事している姿もあった。
山中の案内に従って席に着くと、ウェイトレスがメニューを持ってきた。
現在は朝食メニューとなっており、洋風セットと和風セットがあり、その他にシリアルやオートミール、お粥があり、お粥は七分粥、五分粥、三分粥と選べる。
「お年寄りでも食べやすいメニューを、栄養士の方が考えてくださってるんですよ。
ここでは、朝、昼、夕のセットメニューのチケットを販売していて、入居者の方は割引価格で纏めて購入することが出来ます。とは言っても、実際に紙のチケットを渡すわけではなく、入居者は自分の部屋番号を告げれば自動的にチケットの枚数が減る仕組みとなっています。もしチケットが既になければウェイトレスがその旨を伝え、希望すれば口頭でチケットを購入することができます。
セットのメニュー内容は日によって変わりますし、洋風と和風を用意していますので、その日の気分で選ぶことができます。栄養のバランスがよくて低カロリーだと、この近辺の方たちも大勢いらっしゃるんですよ。
また、ここで食べることも可能ですし、持って帰って自宅で食べることもできますし、歩行が困難だったり病気の方にはデリバリーもしています」
「まぁ……」と、琴子が小さく感嘆の声をあげた。琴子の気持ちがどんどん傾いているのを感じ取れた。
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