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370.琴子の動揺
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美羽がそう考えていると、類が覗き込んできた。
「そうだ。ミューはあの後、友達と楽しい時間を過ごせた?」
途端に、ドクッと心臓が嫌な音をたてる。
「ぅ、ん……ありがとう」
曖昧に笑ってやり過ごす。けれど、類には何か気づかれてしまっているかもしれない。
すると突然、琴子が「そうそう!」と大きな声を上げた。
「美羽さんのお友達に、赤ちゃんが産まれたんですって? さぞ、可愛かったでしょうねぇ。赤ちゃんって抱くと柔らかくて、ミルクの匂いがして……本当に癒されるわよねぇ。いいわねぇ、美羽さん」
琴子がうっとりとした表情を浮かべる。
ふたりの子供を産み、育児の経験がある彼女にとっては他人の赤ん坊でもそう感じるのかもしれないが、どうして結婚していながらも子供がいないことで肩身の狭い思いをしている美羽でさえも同じように感じるに違いないと確信しているのだろう。
姑をはじめ、そんな無神経な人々の言動に、何度傷つけられてきたことか。
「あぁ、また赤ちゃんを抱っこしたいわぁ」
そう言いながら、義昭に意味深な視線を投げかける。
ほら、やっぱり……
直接、美羽や義昭に対して『孫がほしい』とは言わなくなったものの、遠回しに訴えてこられるのも、同じくプレッシャーに感じるのだ。どうして気づいてくれないのだろう。
しかも、そんな話を類の目の前でされることが、堪らなく不快だった。
隣からチッという舌打ちが美羽の耳に届いたが、琴子と義昭はまったく気づいていないようだ。
「そういえばさ……ミューとの電話の後、かおりんからLINEが来たんだよね」
類からの報告に、神経が過敏に反応する。
「ぇ」
かおりんが、類に……LINEを? なんで!?
「久しぶりにみんなで会えたのに、ミューが用事があるからって途中で帰っちゃって寂しかったって」
バクバクと心臓が鳴り、心がかき乱される。
どうして香織は、わざわざ類にそんなことを告げ口したのだろうと、怒りが沸き起こる。何を言えばいいのか混乱しながらも、何か言わなくてはと焦燥する。
「……もしかして」
一呼吸おき、類が横から見つめながら尋ねる。
「ヨシの実家、行ってた?」
躰が弾かれたように飛び上がり、蒼白な表情で彼を見つめ返した。
「ど、どうして……」
類が、それを知ってるの!?
すると類が、悪戯を仕掛けた子供のような気軽さでプッと笑い出した。
「あれっ!? もしかして、当たっちゃった?
双子だからミューの考えてることはなんとなく分かっちゃうけど、まさかそんなことないよねーって思ってたんだけど」
それを聞き、今の今まで笑顔を絶やさなかった琴子の顔が、急に青白くなった。
「み、美羽さん……それ、本当なの!?」
あんな反応を見られてしまった以上、真実を話すしかない。類に余計なことを告げた香織を恨めしく思いながら、白状した。
「えぇ……どうしているのかと、気にかかったので。差し出がましいことをして、申し訳ありませんでした」
美羽が琴子に頭を下げると、彼女は驚きながらも口角を上げた。
「そ、そんな……美羽さんが、謝ることないのよっ。ごめんなさいねぇ、私たちのことで美羽さんにまで心配を掛けてしまって」
「ぃ、いえ……」
どうしてあんなお節介なことをしてしまったのだろうと、再び美羽の胸に後悔が芽生えた。
美羽が恐縮していると、横から類が口を挟んだ。
「琴子の旦那さんって酷い男だったんでしょ? そんな男、ほっときゃいいのに。ほんっとミューって優しいよね」
琴子が動揺しつつも、類に同調した。
「そ、そぉよぉ! 美羽さん、あんな人わざわざ見に行く必要なんてなかったのに……
それ、で……どうだった? あの人」
ゴクリと生唾を飲み下し、琴子が美羽に尋ねる。
「そうだ。ミューはあの後、友達と楽しい時間を過ごせた?」
途端に、ドクッと心臓が嫌な音をたてる。
「ぅ、ん……ありがとう」
曖昧に笑ってやり過ごす。けれど、類には何か気づかれてしまっているかもしれない。
すると突然、琴子が「そうそう!」と大きな声を上げた。
「美羽さんのお友達に、赤ちゃんが産まれたんですって? さぞ、可愛かったでしょうねぇ。赤ちゃんって抱くと柔らかくて、ミルクの匂いがして……本当に癒されるわよねぇ。いいわねぇ、美羽さん」
琴子がうっとりとした表情を浮かべる。
ふたりの子供を産み、育児の経験がある彼女にとっては他人の赤ん坊でもそう感じるのかもしれないが、どうして結婚していながらも子供がいないことで肩身の狭い思いをしている美羽でさえも同じように感じるに違いないと確信しているのだろう。
姑をはじめ、そんな無神経な人々の言動に、何度傷つけられてきたことか。
「あぁ、また赤ちゃんを抱っこしたいわぁ」
そう言いながら、義昭に意味深な視線を投げかける。
ほら、やっぱり……
直接、美羽や義昭に対して『孫がほしい』とは言わなくなったものの、遠回しに訴えてこられるのも、同じくプレッシャーに感じるのだ。どうして気づいてくれないのだろう。
しかも、そんな話を類の目の前でされることが、堪らなく不快だった。
隣からチッという舌打ちが美羽の耳に届いたが、琴子と義昭はまったく気づいていないようだ。
「そういえばさ……ミューとの電話の後、かおりんからLINEが来たんだよね」
類からの報告に、神経が過敏に反応する。
「ぇ」
かおりんが、類に……LINEを? なんで!?
「久しぶりにみんなで会えたのに、ミューが用事があるからって途中で帰っちゃって寂しかったって」
バクバクと心臓が鳴り、心がかき乱される。
どうして香織は、わざわざ類にそんなことを告げ口したのだろうと、怒りが沸き起こる。何を言えばいいのか混乱しながらも、何か言わなくてはと焦燥する。
「……もしかして」
一呼吸おき、類が横から見つめながら尋ねる。
「ヨシの実家、行ってた?」
躰が弾かれたように飛び上がり、蒼白な表情で彼を見つめ返した。
「ど、どうして……」
類が、それを知ってるの!?
すると類が、悪戯を仕掛けた子供のような気軽さでプッと笑い出した。
「あれっ!? もしかして、当たっちゃった?
双子だからミューの考えてることはなんとなく分かっちゃうけど、まさかそんなことないよねーって思ってたんだけど」
それを聞き、今の今まで笑顔を絶やさなかった琴子の顔が、急に青白くなった。
「み、美羽さん……それ、本当なの!?」
あんな反応を見られてしまった以上、真実を話すしかない。類に余計なことを告げた香織を恨めしく思いながら、白状した。
「えぇ……どうしているのかと、気にかかったので。差し出がましいことをして、申し訳ありませんでした」
美羽が琴子に頭を下げると、彼女は驚きながらも口角を上げた。
「そ、そんな……美羽さんが、謝ることないのよっ。ごめんなさいねぇ、私たちのことで美羽さんにまで心配を掛けてしまって」
「ぃ、いえ……」
どうしてあんなお節介なことをしてしまったのだろうと、再び美羽の胸に後悔が芽生えた。
美羽が恐縮していると、横から類が口を挟んだ。
「琴子の旦那さんって酷い男だったんでしょ? そんな男、ほっときゃいいのに。ほんっとミューって優しいよね」
琴子が動揺しつつも、類に同調した。
「そ、そぉよぉ! 美羽さん、あんな人わざわざ見に行く必要なんてなかったのに……
それ、で……どうだった? あの人」
ゴクリと生唾を飲み下し、琴子が美羽に尋ねる。
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