【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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397.保身

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 類の愛に応えることなんて出来ないと言いながら、求めて、受け入れて……拒絶して。
 類が自分から離れると嫉妬して、怒って、束縛して。
 
 類を責める資格なんて、ない。

 それでも……

「ック……おね、がい。
 かおりんとは、かおりんとだけは……付き合わないでッ。かおりんは、純粋に類のことが好きなの。傷つけたくない!」

 類が、自分以外の誰かと付き合うことになっても文句は言えない。それは、類自身が決めることなのだから。

 この生活を諦められない、捨てられない自分は、ただ類と誰かが結ばれるのを黙って見ているしかないのだ。

 けれど、香織は美羽にとって大切な友達だ。その友達が、類と付き合って、目の前で恋人としてのやりとりを見せられるのは、拷問だった。

 そんな卑怯な美羽の考えを、類が見抜いていないはずがない。類は唇の両端を弓なりに曲げて下げ、蔑むように、美羽の願いを鼻で笑った。

「誰が傷つくの? 傷つくのは、ミューでしょ?
 いつも、自分が可愛いんだもんね。

 そんなに付き合ってほしくないなら、すべて香織にぶちまけなよ。
 僕とミューが、かつては恋人同士だったって。僕は今もミューが好きで、ミューを諦めるために、香織と付き合うことにしたんだって。
 ミューも僕が好きだけど、夫がいるし、今の生活が捨てられない。姉弟の恋愛関係に踏み込めない。それでも、僕が他の人と付き合うのは耐えられないんだって。 

 香織なら優しいからさ、分かってくれるかもよ? それで、僕のこと諦めて、ミューと僕がうまくいくように、応援してくれたりしてね……フフッ」

 香織に自分たちの関係を打ち明けることを想像して、美羽は小さく震えた。

「そんなこと……できるわけ、ないじゃない。
 これ以上、かおりんを傷つけることなんて、できない。もう友達で、いられなくなる……ック」

 類の口から、「ハッ」と乾いた笑いが零れた。

「なにそれ、ウケるんだけど。香織を守りたいフリして、自分の保身でしかないじゃん。
 ほんと、ミューって呆れるぐらい自分勝手で偽善者だよね」
「ッッ!」

 分かってる。分かってる。
 どんなに自分が、自分勝手で、我儘で、自分の身を守ることしか考えてない狡い女か……

 それでも、嫌なの。
 類とかおりんが恋人だなんて、絶対に嫌……

 打ち拉がれる美羽の肩に、類の手がそっと触れる。ゆっくりと彼の唇が美羽の耳に近づき、囁く。



「もっと喜んでよ。大好きな親友と弟が恋人になったんだから。

 これで、誰からも僕たちの秘密の関係を疑われることはなくなる。
 そうでしょ?」



 ふるりと耳が震える。それは、悪魔に垂らされた毒薬のように、美羽の全身を痺れさせる。

 ぁ……

 美羽は蒼白な顔で、類を見上げた。

「まさ、か……かおりんを盾にして、私と愛人関係を持とうと思ってるの?
 類がかおりんと付き合うことになれば、私との関係を疑われることはないから」

 以前類が話していた、



『みんなに僕たちが普通の姉弟だってこと、分かってもらえるようにするから』



 それは、こういう意味ではなかったのだろうか。

 類が不敵な笑みを浮かべた。

「へーっ、そんなに自分が愛されてるって、ミューは思ってんだ。フフッ、どこまで自信過剰なの?
 なに? ミューは、それを望んでるわけ?」

 自分の考えを否定されてバカにされ、美羽は顔をカーッと熱くした。

「そんなわけっっ!!」
「まぁ僕は、それでもいいけどね」

 類の指が美羽の顎を捉える。妖艶な瞳で覗き込まれると、全てが呑み込まれていく錯覚に囚われる。もう一方の指で唇の輪郭をなぞられる。抵抗しようと思うのに、躰が縛られたように動かない。
 
 血のように赤く瑞々しい類の唇が、角度をつけて美羽に近づいてくる。

 その魅惑的な唇に吸い込まれそうになりながらも、強く言い聞かせる。

 ダメ……流されたら。
 
「出来、ないよ……」

 両手で、類の胸を押し返した。

 離された類は唇を噛み、痛々しく微笑んだ。



「だろうね……
 ミューに、そんな度胸ないもんね」

 

 美羽は答えられず、俯いた。ふたりの間に沈黙が流れる。

 その時、玄関のノブがガチャガチャと音を立てた。
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