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400.公然の仲
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類と香織が恋人になったことは、すぐにデタントのメンバーにも知られることとなった。
類が香織との関係を秘密にせず、オープンにし、堂々と、
「僕たち、付き合い始めたんだ」
と、告げたからだ。
「うわっ、マジっすか!? やべー!!」
「そ、そうか」
浩平も隼斗も、ふたりが恋人になったことを驚いていたが、萌の驚愕と興奮はそれを遥かに超越していた。
「うっきゃぁぁあああ!!
しょ、しょーげきたーーーん!!!!!」
店外にも響き渡るのではないかと思うぐらいの金切り声を上げ、香織にいきおいよく抱きついた。
「かおたーん、おめでとー!!
ッグ……よ、よかったん。かおたん、幸せになって……
うわぁぁん!!」
「ちょ、ちょっと……萌ったら、恥ずかしい」
自分のことのように泣いて喜び、祝福する萌に、憎まれ口を叩きながらも嬉しそうに微笑む香織に、美羽は密かに傷ついた。
仕事中は自分のやるべきことに集中していられるし、類と香織も必要な時に仕事上での会話を交わすのみなので、なんとか自分を保っていられる。
辛いのは、それ以外の時だった。
類が香織と付き合い始めた翌日。
美羽は類の運転する車の助手席に座り、出勤した。その途中、類は香織のアパートへ寄り、彼女を乗せた。当然、香織は類の恋人として助手席に座ることになるため、美羽は後部座席に移動することになる。
隣同士で並び、仲良く会話しているのを、嫌でも目の前で見せつけられる。恋人になる前にもそうだったが、恋人となってからは耐えがたいほどの屈辱だった。美羽の知らない話題があがり、ふたりだけの時間があるのだと認識させられる。
泣きそうになるのを堪えるので精一杯だった。
翌日は電車通勤にしたのだが、それを知った香織に反対された。
「私と類が恋人になったからって、遠慮して電車通勤に変えなくていいよ! 私は美羽とも一緒にいれて、嬉しいんだから。
それに、美羽が痴漢にでもあったらどうするの? 心配だよ。類くんの車に乗せてもらいな!」
そこまで言われておきながら電車通勤を貫いたら、類との仲を嫉妬していると疑われるかもしれない……そんなことを考えて、泣く泣く電車通勤を諦めた。
それからは、最初から後部座席に座るようになった。せめてもの、自分の心を守る手段だった。
休憩のシフトは類と香織がふたりで過ごせるような組み方はされておらず、通常通りとなっているため、類とふたりきりになることもあるし、香織との時もあるし、3人一緒にかぶることもあった。
3人で休憩に入っている時に、類と香織が見つめあって楽しそうに喋ったり、笑いあったりしているのを見ると、どうしようもなく胸が苦しくなる。
嫌だ。見たくない……
ここから逃げ出したい!!
ふたりの世界をシャットアウトして閉じ籠もりたいのに、香織が気を遣って美羽が会話に入れるようにと話を振ってくる。そんな香織に冷たい態度などとれない。類が、美羽の一挙手一投足を見つめている。
逃げ出したくても、心を殺して笑顔で対応するしかなかった。
帰りは類と香織が閉店作業で遅くなるため、美羽は先に電車で帰ることができた。義昭がいるため、さすがに香織も美羽を引き止めることはなかったのでホッとしたが、だからといって心が休まることはなかった。
常に時計が気になり、この時間は閉店作業が終わっている頃だ、もうそろそろデタントを出ただろうか、香織の家に着いたのでは……そんなことばかり、考えてしまう。
帰ってくるはずの時間になっても類が戻らないと不安で、気になってしかたない。嫌な想像ばかりが、膨らんでしまう。
一番辛いのが、店の定休日だ。
「類くんと『チームラボ』行こうって話になったんだけど、美羽も一緒に行かない? 豊洲のとこ、2年間限定で今年の秋までのオープンなんだって。3人が嫌なら、萌と浩平誘ってみんなで行ってもいいし!
美羽だって気晴らしになるしさ、行こうよ」
香織が自分のことまで考えてくれるのはありがたいが、何も言わずに勝手にふたりだけで出かけてくれた方が、どんなに気持ちが楽か。
「ありがとう。嬉しいけど、家のこととかやらないといけないから。楽しんできてね」
誘いを断るのも気が重いし、1日中家の中にいても類と香織のデートのことで頭が占められ、気が狂いそうなほどの嫉妬に悩まされる。
LINEで送られてくる香織からの写真やビデオも、苦痛だった。香織と類がふたりで仲良く写ってる写真を送ってくることはないが、デート先での綺麗な景色や面白いものを送ってきたり、みんなで撮った写真を短いコメントと共に送ってくる。
そこに、邪な気持ちなどないと分かっている。ただ香織は、一緒に行けなかった美羽と、共有したいという気持ちで送ってきてくれるのだと分かっている。
それでも、送られた写真が、ビデオが、そこで類と香織が楽しく過ごしているのだという現実を突きつけられ、激しい苛立ちと怒りと憎しみで心が支配される。
類と香織が付き合っている限り、ずっとこの苦しみは続くのだ。
もし、万が一にでもふたりが結婚したら……どうなるんだろう。
それならいっそ、香織と共に家を出てもらいたいと思いつつ、類がいなくなった家で義昭とふたりだけの生活が始まるのだと考えると、恐ろしかった。
類が香織との関係を秘密にせず、オープンにし、堂々と、
「僕たち、付き合い始めたんだ」
と、告げたからだ。
「うわっ、マジっすか!? やべー!!」
「そ、そうか」
浩平も隼斗も、ふたりが恋人になったことを驚いていたが、萌の驚愕と興奮はそれを遥かに超越していた。
「うっきゃぁぁあああ!!
しょ、しょーげきたーーーん!!!!!」
店外にも響き渡るのではないかと思うぐらいの金切り声を上げ、香織にいきおいよく抱きついた。
「かおたーん、おめでとー!!
ッグ……よ、よかったん。かおたん、幸せになって……
うわぁぁん!!」
「ちょ、ちょっと……萌ったら、恥ずかしい」
自分のことのように泣いて喜び、祝福する萌に、憎まれ口を叩きながらも嬉しそうに微笑む香織に、美羽は密かに傷ついた。
仕事中は自分のやるべきことに集中していられるし、類と香織も必要な時に仕事上での会話を交わすのみなので、なんとか自分を保っていられる。
辛いのは、それ以外の時だった。
類が香織と付き合い始めた翌日。
美羽は類の運転する車の助手席に座り、出勤した。その途中、類は香織のアパートへ寄り、彼女を乗せた。当然、香織は類の恋人として助手席に座ることになるため、美羽は後部座席に移動することになる。
隣同士で並び、仲良く会話しているのを、嫌でも目の前で見せつけられる。恋人になる前にもそうだったが、恋人となってからは耐えがたいほどの屈辱だった。美羽の知らない話題があがり、ふたりだけの時間があるのだと認識させられる。
泣きそうになるのを堪えるので精一杯だった。
翌日は電車通勤にしたのだが、それを知った香織に反対された。
「私と類が恋人になったからって、遠慮して電車通勤に変えなくていいよ! 私は美羽とも一緒にいれて、嬉しいんだから。
それに、美羽が痴漢にでもあったらどうするの? 心配だよ。類くんの車に乗せてもらいな!」
そこまで言われておきながら電車通勤を貫いたら、類との仲を嫉妬していると疑われるかもしれない……そんなことを考えて、泣く泣く電車通勤を諦めた。
それからは、最初から後部座席に座るようになった。せめてもの、自分の心を守る手段だった。
休憩のシフトは類と香織がふたりで過ごせるような組み方はされておらず、通常通りとなっているため、類とふたりきりになることもあるし、香織との時もあるし、3人一緒にかぶることもあった。
3人で休憩に入っている時に、類と香織が見つめあって楽しそうに喋ったり、笑いあったりしているのを見ると、どうしようもなく胸が苦しくなる。
嫌だ。見たくない……
ここから逃げ出したい!!
ふたりの世界をシャットアウトして閉じ籠もりたいのに、香織が気を遣って美羽が会話に入れるようにと話を振ってくる。そんな香織に冷たい態度などとれない。類が、美羽の一挙手一投足を見つめている。
逃げ出したくても、心を殺して笑顔で対応するしかなかった。
帰りは類と香織が閉店作業で遅くなるため、美羽は先に電車で帰ることができた。義昭がいるため、さすがに香織も美羽を引き止めることはなかったのでホッとしたが、だからといって心が休まることはなかった。
常に時計が気になり、この時間は閉店作業が終わっている頃だ、もうそろそろデタントを出ただろうか、香織の家に着いたのでは……そんなことばかり、考えてしまう。
帰ってくるはずの時間になっても類が戻らないと不安で、気になってしかたない。嫌な想像ばかりが、膨らんでしまう。
一番辛いのが、店の定休日だ。
「類くんと『チームラボ』行こうって話になったんだけど、美羽も一緒に行かない? 豊洲のとこ、2年間限定で今年の秋までのオープンなんだって。3人が嫌なら、萌と浩平誘ってみんなで行ってもいいし!
美羽だって気晴らしになるしさ、行こうよ」
香織が自分のことまで考えてくれるのはありがたいが、何も言わずに勝手にふたりだけで出かけてくれた方が、どんなに気持ちが楽か。
「ありがとう。嬉しいけど、家のこととかやらないといけないから。楽しんできてね」
誘いを断るのも気が重いし、1日中家の中にいても類と香織のデートのことで頭が占められ、気が狂いそうなほどの嫉妬に悩まされる。
LINEで送られてくる香織からの写真やビデオも、苦痛だった。香織と類がふたりで仲良く写ってる写真を送ってくることはないが、デート先での綺麗な景色や面白いものを送ってきたり、みんなで撮った写真を短いコメントと共に送ってくる。
そこに、邪な気持ちなどないと分かっている。ただ香織は、一緒に行けなかった美羽と、共有したいという気持ちで送ってきてくれるのだと分かっている。
それでも、送られた写真が、ビデオが、そこで類と香織が楽しく過ごしているのだという現実を突きつけられ、激しい苛立ちと怒りと憎しみで心が支配される。
類と香織が付き合っている限り、ずっとこの苦しみは続くのだ。
もし、万が一にでもふたりが結婚したら……どうなるんだろう。
それならいっそ、香織と共に家を出てもらいたいと思いつつ、類がいなくなった家で義昭とふたりだけの生活が始まるのだと考えると、恐ろしかった。
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