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406.豹変
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心が重くなりながら、美羽は気を取り直した。
「それでも、夫婦なんだから話し合うべきじゃないですか。晃さんだって、話せば分かってもらえるかもしれないですし」
夫である義昭とまともに話などせず、顔を見ることすら嫌悪している自分が何を言っているのだろうと思いつつ、美羽は圭子を説得した。
「だ、だめよ……あの人、恐妻家で私には逆らえないなんて風に見せてるけど、怒ったらぼっこぼこに殴るんだから!!
わた、し……こわ、くて」
圭子はブルブルッと身を震わせた。
う。嘘……晃さんが、DVを!?
美羽は顔を白くして、目を大きく見開いた。
晃には、自分たちには見せていない恐ろしい一面があるのだろうか。圭子だけでなく、娘のほのかは大丈夫なのだろうかと、心配になる。
「だ、だったら……警察とか、DVの相談機関とかに話した方がよくないですか?」
「そんなの出来ないわよ! もし近所にでも知られたらどうするの? 周りに白い目で見られるし、ほのかが虐められるかもしれないじゃない!!
ほのかのことは、よく面倒見てくれて可愛がってるし、私さえ黙ってれば幸せになれるのよ。
それに……あの人の言うことに逆らいさえしなければ、優しいの。だから……ねっ。お願い、お金貸して!!」
美羽は返答に困り、黙り込んだ。
どうするべきなの。
今、お金を貸したところで、問題が解決することにはならない気がする……
すると、圭子がいきなり凄い形相で歯を剥き出してきた。
「こっちが下手《したて》にでてやってんのに、なんなの!? あんた、父親の遺産が入ってお金たくさんもらってるんだから、ちょっとぐらいいいじゃない!! お金よこしなさいよ!!」
立ち上がり、美羽の肩を掴むと強く揺さぶる。
「どうして! どうしてお金たくさん持ってるくせに渡さないのよ!! あんた、私のことなんだと思ってんの!? っざけんじゃないわよ、ちょっと可愛い顔してるからって私のこと見下して!!」
ぇ。な、なに!?
美羽が驚いて呆気にとられていると、圭子はその表情にハッとし、掴んでいた手を離した。ガタッと音を大きく立てて座り、先程の行動を誤魔化すように必死に笑みを浮かべる。
「ぁあああ、違う違う!! そうじゃなくて……お願い。お願いお願い、美羽さん!! 頼れるのはあなたしかいないのよぉぉぉ。お願いだから……ウゥッ。
お願いヨォォォォ……ウゥッ、ヒック」
怒ったかと思えば、引き攣った誤魔化し笑いをし、今度は泣き出す。コロコロと態度を変える圭子に、美羽は戸惑いを隠せなかった。
喫茶店にいる客たちが、何事かとこちらを見つめているのを感じる。
圭子の泣き声はますます酷くなり、美羽は頭痛がした。
「……今回、だけですよ」
この場から逃れたい一心だった。
「えぇっ!! いいの!? ありがとうっ!! ありがとうっっ!! 本当にありがとう!! やっぱり美羽さん、いい人だわぁ」
圭子はパッと顔を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。調子のいい圭子の態度に辟易しつつ、美羽は幼い子供に言い聞かせるように説得した。
「その代わり、約束してください。お金を貸すのは今回だけです。そして、晃さんに約束した通り、パチンコにはもう行かないで下さい。ほのちゃんだって、あんな……お母さんに置いていかれて、可哀想です。
仕事もちゃんとして、生活を、家族を支えてあげてください。
それを約束してくれたら、晃さんにも、お義母さんにも、お義父さんにも、義昭さんにも……誰にも、このことは黙っておきますから」
圭子がぶんぶんと頭を縦に振る。
「絶対!! 絶対に約束する!! 神様に誓ってもうパチンコはしない!!
私がバカだった。ほんとにバカ……貯金も、家賃まで使ってパチンコするなんて。妻としても、母親としても、ひとりの人間としても恥ずかしい……
もうこんなこと、絶対にしないから……ウッ、ウッ」
再びおいおいと泣き出す圭子に、美羽は宥めるように彼女の手を取った。
「だ、大丈夫ですから……晃さんやほのかちゃんも心配するでしょうから、帰りましょう?」
「それでも、夫婦なんだから話し合うべきじゃないですか。晃さんだって、話せば分かってもらえるかもしれないですし」
夫である義昭とまともに話などせず、顔を見ることすら嫌悪している自分が何を言っているのだろうと思いつつ、美羽は圭子を説得した。
「だ、だめよ……あの人、恐妻家で私には逆らえないなんて風に見せてるけど、怒ったらぼっこぼこに殴るんだから!!
わた、し……こわ、くて」
圭子はブルブルッと身を震わせた。
う。嘘……晃さんが、DVを!?
美羽は顔を白くして、目を大きく見開いた。
晃には、自分たちには見せていない恐ろしい一面があるのだろうか。圭子だけでなく、娘のほのかは大丈夫なのだろうかと、心配になる。
「だ、だったら……警察とか、DVの相談機関とかに話した方がよくないですか?」
「そんなの出来ないわよ! もし近所にでも知られたらどうするの? 周りに白い目で見られるし、ほのかが虐められるかもしれないじゃない!!
ほのかのことは、よく面倒見てくれて可愛がってるし、私さえ黙ってれば幸せになれるのよ。
それに……あの人の言うことに逆らいさえしなければ、優しいの。だから……ねっ。お願い、お金貸して!!」
美羽は返答に困り、黙り込んだ。
どうするべきなの。
今、お金を貸したところで、問題が解決することにはならない気がする……
すると、圭子がいきなり凄い形相で歯を剥き出してきた。
「こっちが下手《したて》にでてやってんのに、なんなの!? あんた、父親の遺産が入ってお金たくさんもらってるんだから、ちょっとぐらいいいじゃない!! お金よこしなさいよ!!」
立ち上がり、美羽の肩を掴むと強く揺さぶる。
「どうして! どうしてお金たくさん持ってるくせに渡さないのよ!! あんた、私のことなんだと思ってんの!? っざけんじゃないわよ、ちょっと可愛い顔してるからって私のこと見下して!!」
ぇ。な、なに!?
美羽が驚いて呆気にとられていると、圭子はその表情にハッとし、掴んでいた手を離した。ガタッと音を大きく立てて座り、先程の行動を誤魔化すように必死に笑みを浮かべる。
「ぁあああ、違う違う!! そうじゃなくて……お願い。お願いお願い、美羽さん!! 頼れるのはあなたしかいないのよぉぉぉ。お願いだから……ウゥッ。
お願いヨォォォォ……ウゥッ、ヒック」
怒ったかと思えば、引き攣った誤魔化し笑いをし、今度は泣き出す。コロコロと態度を変える圭子に、美羽は戸惑いを隠せなかった。
喫茶店にいる客たちが、何事かとこちらを見つめているのを感じる。
圭子の泣き声はますます酷くなり、美羽は頭痛がした。
「……今回、だけですよ」
この場から逃れたい一心だった。
「えぇっ!! いいの!? ありがとうっ!! ありがとうっっ!! 本当にありがとう!! やっぱり美羽さん、いい人だわぁ」
圭子はパッと顔を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。調子のいい圭子の態度に辟易しつつ、美羽は幼い子供に言い聞かせるように説得した。
「その代わり、約束してください。お金を貸すのは今回だけです。そして、晃さんに約束した通り、パチンコにはもう行かないで下さい。ほのちゃんだって、あんな……お母さんに置いていかれて、可哀想です。
仕事もちゃんとして、生活を、家族を支えてあげてください。
それを約束してくれたら、晃さんにも、お義母さんにも、お義父さんにも、義昭さんにも……誰にも、このことは黙っておきますから」
圭子がぶんぶんと頭を縦に振る。
「絶対!! 絶対に約束する!! 神様に誓ってもうパチンコはしない!!
私がバカだった。ほんとにバカ……貯金も、家賃まで使ってパチンコするなんて。妻としても、母親としても、ひとりの人間としても恥ずかしい……
もうこんなこと、絶対にしないから……ウッ、ウッ」
再びおいおいと泣き出す圭子に、美羽は宥めるように彼女の手を取った。
「だ、大丈夫ですから……晃さんやほのかちゃんも心配するでしょうから、帰りましょう?」
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