<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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一抹の不安

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 食事が終わると、世界で最も美しい宮殿の一つに数えられる、ハプスブルク家の夏の離宮であったシェーンブルン宮殿へと向かった。落ち着いた深みのある黄色と鮮やかな黄色の2トーンで彩られた壁のウィーンロココ風の建築は、華やかで荘厳な雰囲気を醸し出し、ハプスブルク家の栄華を今に伝えていた。

『素敵な色合いの宮殿ですね。』
『あの壁はテレジアン・イエローと呼ばれていますが、マリア・テレジアが好んでいた色ではなく、夫のフランツが金で装飾する予定だったのを財政を懸念したテレジアが金色に近い色で塗るように指示したのだとか…』

 あ、マリア・テレジアってマリー・アントワネットのお母様で『女帝』と呼ばれた人だよね……

 母親と違い浪費家だったマリー・アントワネットは国民の怒りを買い、それはやがてフランス革命へと導き、自らの運命をも狂わせた。

 もし、アントワネットがテレジアのように堅実派だったなら、歴史も変わっていたのかな……

 けれど…...幼くして誰とも分からぬ人の元へと嫁ぎ、異国の地で孤独の中、慣れない言語と慣習に戸惑い、頼りにしたい肝心な夫は自分に愛情どころか関心すらも持ってくれない。そんなやるせない気持ちを浪費という形でしか発散することが出来なかった彼女を全面的に批判することは、美姫には出来なかった。

 さすが世界的な観光地だけあって、午前中の早い時間にも関わらず、既に入口付近には大勢の人で賑わっていた。自動券売機で秀一がチケットを3人分購入し、渡した。

『ザックは今日は一応ツアーガイドなので……』
『えっ…僕、ツアーガイド!?じゃあさ、ランチもシューイチの奢りってことで、よろしくね♪』

 ザックはイェーイ!と言いながら両腕を上げた。ピアノを弾いている時の大人びた彼の表情からは想像出来ない、少年のような屈託のない笑顔だった。

 3人は114室あるうちの40室を見て回ることが出来るインペリアルツアーに参加することにした。ツアーと言っても、オーディオガイドを受け取り、自分達で回るセルフスタイルだ。日本語のオーディオガイドがあるのがとても有り難い。宮殿内は何度感嘆の溜息を漏らしたか分からないほど絢爛豪華で、ハプスブルクの栄華を肌で触れた気がした。

 真っ直ぐに伸びるどこまでも続く長い廊下。真っ白な壁には金の装飾がほどこされ、等間隔に並んだ豪華な金の燭台。天井はたくさんの天使達が舞っている天井画となっており、それが壁際の窓硝子に映り込んでいた。

 至る所にある金の装飾は、膨大な数の肖像画の額縁や置き時計、衝立、バスルームの蛇口や栓までに至り、眩い輝きを放っていた。各部屋ごとにテーマがあって、中国風や南国風の部屋など、それに沿った装飾が工夫されていて、贅を尽くしてあった。

『あっ、ミキミキー!!ここ、知ってる?鏡の間!!』

 ザックがおいでおいでをしながら、後ろを歩く美姫と秀一に合図をした。

『ここさ、当時6歳だったモーツァルトがこの宮殿に招待されて、マリア・テレジアやマリー・アントワネットらの前で演奏したんだって。この時、宮殿内で転んだモーツァルトを助け起こした当時7歳のマリー・アントワネットに、モーツァルトが「僕と結婚して」ってプロポーズしたって話が残ってるらしいよ。まぁ嘘かホントか分かんないけどね』

 その話なら聞いたことあるけど、それがここだったんだ……

 モーツァルトやマリア・テレジア、マリーアントワネットがいた場所に今、自分が立っていることがとても不思議な気がした。

『幼い子供は『好き』と思うと、すぐ結婚に結びつくところが無邪気で可愛いですね』

 秀一の言葉に、美姫は少し驚きを感じた。秀一が子供のことをそんな風に言うのを聞くのは、初めてだった。不思議に思いながら秀一を見上げると、彼は真っ直ぐに美姫を見つめた目を細め、口の端を上げた。

『ねぇ、美姫?貴女も...幼い頃は無邪気で可愛かったですね……』
『!!!』

 途端に美姫は、幼い頃…...自分がまだ秀一のことを『しゅーちゃん』と呼んでいた頃、真似事の結婚式を彼と挙げたことを思い出した。

 カフェカーテンのレースをベールに見立て、覚束ない足取りでヒールを履いて歩き、お気に入りのぬいぐるみの参列者に見守られて、大好きな『しゅーちゃん』から初めてもらった唇への口づけとともに交わされた愛の誓い。

 それで、秀一さん……

 美姫の頬がだんだんと熱を持ち始める。

 秀一さんの言っていたのは、一般的な子供に対してじゃなくて、幼い頃の私に対しての言葉、だったんだ。
 秀一さんは今でもアルミホイルで作った指輪とか結婚証明書とか持ってるのかな……おままごとみたいなものだったし、きっと…もう、捨てちゃったよね。それでも……秀一さんの記憶の引き出しにあの出来事が存在していることが嬉しい……

 だが、美姫は急に現実へと引き戻されてしまう。

 幼い私は、純粋だった。好きな人、『しゅーちゃん』といつか結ばれて結婚するんだと信じて疑わなかった。大人になった今、その純粋さが切ないほど、眩しい。
 あの頃にはもう、戻れない……私達の未来は……どこへ続いているのだろう……

 ゴールの見えない迷路を歩いているような気持ちになり、美姫は心細い思いで少し先を歩く秀一を見つめた。
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