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破門宣告

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「え、ここって...」

 美姫は、秀一に連れられて、モルテッソーニ主催のクリスマスコンサートを行った会場の前に立っていた。

「今日はブラームス・ザール(小ホール)ではなく、ゴールデナー・ザール(大ホール)でコンサートを聴きますよ」

 そ、それって、世界的に有名なニューイヤーコンサートのことだよね......このコンサートチケットは最もプレミアムが付く演奏会の一つと言われていて、極めて入手困難なはず。
 確か正規でチケットを手に入れる為には、年初めにウェブサイトを通じてチケットを申し込みし、それでも抽選に当選した人だけが入手できると聞いたことがある。

 秀一さん、すごいツテを持ってるんだ......

 年季の入った木目の柱を抜けてホールへと踏み入れると、さすが「ゴールデナー・ザール」を冠するだけあり、建物は金色に輝いていた。 

 ダイヤモンドに区切られた金の額縁に描かれた天使のフレスコ画など、天井にも細かい装飾が施されていた。金色ではあるけれど、時をかけていぶしがかかったようなその煌めきは、歴史の重みを感じさせる。天井上と床下の空間と、柱のシンメトリーな構造により、建物自体がひとつの楽器のように響くよう設計され、世界で最高の音響効果をもつといわれるコンサートホール。

 数々の偉大な指揮者や演奏家達がここに立ち、歴史を作ってきたのかと思うと、感動で胸が熱くなる。

 そして今日、ここで、あの有名な管弦楽団のニューイヤーコンサートが聴けるなんて、本当に感激......

 舞台や観客席の後ろ、二階の手摺には色とりどりの花が飾られており、新年の華やかさを演出していた。

 観客席にはちらほらと日本人の姿も見えた。

「結構、日本人も多いんですね」

 意外に思った美姫が感心したように呟くと、秀一がフッと笑みを見せた。

「えぇ。幾つかの日本企業はここの楽団やオーストリアとの密接なビジネスパートナーでありますからね」

 あ、着物の人もいる......

 それを見て、美姫はホッとしたように息を吐いた。
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