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拒否 ー秀一回想ー
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美姫は、その日から薬を服用するようになった。
睡眠薬のおかげで、少しずつ昼夜逆転だった生活にリズムが戻り始めた。顔色も良くなり、以前ほどではないが食欲もわき、ちゃんと食事をとるようになり、それに比例するようにして笑顔を見せるようになった。
だが、服用直後や夜間に起きた時など、朦朧としていたり、ふらついたりといった症状が見られた。薬の副作用であることは分かっているが、一緒にいてそんな美姫を見ていると辛くなる。
私たちはまた、オーストリア旅行前のような感じに戻っていた。
ベッドに横になって一緒に寝るものの、手を繋いだり、背中から抱き締めるだけ。体力が少しずつ回復してきてさえも、美姫には欲情を昂ぶらせるまでのエネルギーが精神的になかった。
その美姫が、自ら抱擁を乞い、唇を寄せ、自分を強く求めている......
それは、風間悠が瀕死の状況にある中で不謹慎な行動ととられても仕方ないが、秀一は彼女の真意を理解していた。
美姫は、今まで『死』を身近に感じたことはなかった。
友人が危篤であるのを目の前にし、それを強く感じた彼女は、怖ろしくなったのだ。
愛する者を失うこと。
それは、単なる別れではなく、永遠の別れとなることもあるのだということを。
美姫はそれを自覚した途端、確かめ、求めずにはいられなくなったのだ。
愛する者の存在を。生きている証を。
強く、激しく、燃える......命の灯ともしびを。
睡眠薬のおかげで、少しずつ昼夜逆転だった生活にリズムが戻り始めた。顔色も良くなり、以前ほどではないが食欲もわき、ちゃんと食事をとるようになり、それに比例するようにして笑顔を見せるようになった。
だが、服用直後や夜間に起きた時など、朦朧としていたり、ふらついたりといった症状が見られた。薬の副作用であることは分かっているが、一緒にいてそんな美姫を見ていると辛くなる。
私たちはまた、オーストリア旅行前のような感じに戻っていた。
ベッドに横になって一緒に寝るものの、手を繋いだり、背中から抱き締めるだけ。体力が少しずつ回復してきてさえも、美姫には欲情を昂ぶらせるまでのエネルギーが精神的になかった。
その美姫が、自ら抱擁を乞い、唇を寄せ、自分を強く求めている......
それは、風間悠が瀕死の状況にある中で不謹慎な行動ととられても仕方ないが、秀一は彼女の真意を理解していた。
美姫は、今まで『死』を身近に感じたことはなかった。
友人が危篤であるのを目の前にし、それを強く感じた彼女は、怖ろしくなったのだ。
愛する者を失うこと。
それは、単なる別れではなく、永遠の別れとなることもあるのだということを。
美姫はそれを自覚した途端、確かめ、求めずにはいられなくなったのだ。
愛する者の存在を。生きている証を。
強く、激しく、燃える......命の灯ともしびを。
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