468 / 1,014
決裂
2
しおりを挟む
だが、久美の企みは、彼女の意図せぬ方向へと流れていた。
美姫にとって、秀一は絶対者だ。
父にふたりの関係が露呈した際......両親への裏切り、来栖財閥への多大な影響を突きつけられ、父に別れを迫られてすら、美姫は迷いながらも秀一を選んだ。
礼音への酷い制裁が発覚したところで、いや、どんなことが露呈しようとも、美姫の秀一への気持ちが揺るぐことなど、ありえなかった。
美姫に湧き上がる感情。
それは秀一への嫌悪、失望、恐怖などではなく。
自分という存在が、秀一を狂わせていることへの落胆と絶望だった。
秀一さんの残酷な行動は、私への深い愛情によるもの。私こそが、秀一さんを狂気へと駆り立てている張本人なんだ......
脳裏に焼きついた礼音の凄惨な姿が浮かび上がり、悪魔のような所業を秀一にさせてしまったことに対して、美姫は深い自責の念にかられた。
久美は、自分はなんでも分かっているんだというように猫なで声を出した。
「......控室での、行為の写真。あれは、来栖秀一に無理やりさせられたんでしょ?美姫が、望んでするはずないって、私は分かってる。
あの男は、美姫の愛情を手玉にとって弄んでるんだけなのよ!さっさと別れないと、そのうち、美姫にまで手を出してくるかもしれないのよ!」
なんとしてでも、美姫をあの悪魔から引き離したい......
優しい言葉の裏に隠された爪は、今にも鋭く引き裂こうと待ち構えていた。
「そ、んなこと......絶対、に......ない」
美姫は声を震わせながらも、それだけは揺るぎない自信を見せた。
秀一さんが礼音を傷つけたのは、私を襲った礼音に対して制裁を下し、二度と襲うことのないように私から守る為だった。そんな秀一さんが、私に対して刃を向けることなど、ありえない。
美姫は、控室での激しい行為を思い出していた。
......あれは、私から秀一さんに激しく乞い、求めた結果の行為。秀一さんはただ、それに応えてくれただけ。
だが、それを説明するには、あまりにも複雑な事情が絡み過ぎていた。
久美は大袈裟に溜息を吐いた。
「......どっちにしても、美姫。あなたはもう、来栖 秀一とは別れるしかなくなる。
明日......この週刊誌が、発売される時にはね」
明日......!!!
美姫は愕然とした。
送りつけられたものが週刊誌のコピーだと分かっていても......
それは単なる脅しではないのか。
本当に週刊誌に載せる気などないのではないか。
そんな僅かな希望を美姫は持っていた。
だがそれは、久美の言葉によって粉々に打ち砕かれた。
「久、美......お、ねがっ、お願い... だ、から......そんな、こと......しない、で」
美姫の悲痛な声を聞き、久美の良心の呵責が呼び覚まされそうになる。それを抑えつけるように喉を鳴らす音が、美姫の耳に響いた。
久美にとって私は、ただの憎しみの相手でしかないの!?
美姫は、絶望に打ち拉がれた。
突然、美姫の手から受話器が取り上げられた。
「何が望みですか。金でしたら、あなたが仰る金額を用意しましょう」
頭上から降り注いだその声を聞き、美姫は後ろを振り仰いだ。
美姫にとって、秀一は絶対者だ。
父にふたりの関係が露呈した際......両親への裏切り、来栖財閥への多大な影響を突きつけられ、父に別れを迫られてすら、美姫は迷いながらも秀一を選んだ。
礼音への酷い制裁が発覚したところで、いや、どんなことが露呈しようとも、美姫の秀一への気持ちが揺るぐことなど、ありえなかった。
美姫に湧き上がる感情。
それは秀一への嫌悪、失望、恐怖などではなく。
自分という存在が、秀一を狂わせていることへの落胆と絶望だった。
秀一さんの残酷な行動は、私への深い愛情によるもの。私こそが、秀一さんを狂気へと駆り立てている張本人なんだ......
脳裏に焼きついた礼音の凄惨な姿が浮かび上がり、悪魔のような所業を秀一にさせてしまったことに対して、美姫は深い自責の念にかられた。
久美は、自分はなんでも分かっているんだというように猫なで声を出した。
「......控室での、行為の写真。あれは、来栖秀一に無理やりさせられたんでしょ?美姫が、望んでするはずないって、私は分かってる。
あの男は、美姫の愛情を手玉にとって弄んでるんだけなのよ!さっさと別れないと、そのうち、美姫にまで手を出してくるかもしれないのよ!」
なんとしてでも、美姫をあの悪魔から引き離したい......
優しい言葉の裏に隠された爪は、今にも鋭く引き裂こうと待ち構えていた。
「そ、んなこと......絶対、に......ない」
美姫は声を震わせながらも、それだけは揺るぎない自信を見せた。
秀一さんが礼音を傷つけたのは、私を襲った礼音に対して制裁を下し、二度と襲うことのないように私から守る為だった。そんな秀一さんが、私に対して刃を向けることなど、ありえない。
美姫は、控室での激しい行為を思い出していた。
......あれは、私から秀一さんに激しく乞い、求めた結果の行為。秀一さんはただ、それに応えてくれただけ。
だが、それを説明するには、あまりにも複雑な事情が絡み過ぎていた。
久美は大袈裟に溜息を吐いた。
「......どっちにしても、美姫。あなたはもう、来栖 秀一とは別れるしかなくなる。
明日......この週刊誌が、発売される時にはね」
明日......!!!
美姫は愕然とした。
送りつけられたものが週刊誌のコピーだと分かっていても......
それは単なる脅しではないのか。
本当に週刊誌に載せる気などないのではないか。
そんな僅かな希望を美姫は持っていた。
だがそれは、久美の言葉によって粉々に打ち砕かれた。
「久、美......お、ねがっ、お願い... だ、から......そんな、こと......しない、で」
美姫の悲痛な声を聞き、久美の良心の呵責が呼び覚まされそうになる。それを抑えつけるように喉を鳴らす音が、美姫の耳に響いた。
久美にとって私は、ただの憎しみの相手でしかないの!?
美姫は、絶望に打ち拉がれた。
突然、美姫の手から受話器が取り上げられた。
「何が望みですか。金でしたら、あなたが仰る金額を用意しましょう」
頭上から降り注いだその声を聞き、美姫は後ろを振り仰いだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
329
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる