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余波
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勝はTVの横にびっしり並んだゲームソフトを目ざとく見つけた。
「うわっ、すげー数! 大和さん、ゲーム好きなんすか?」
まるで舎弟のような勝の言い方に、大和が笑いを押し殺しながら答えた。
「だから、敬語じゃなくていいって。
昔、実家にいた時はよく兄貴とゲームしてたんだ。今は互いに忙しくて、出来なくなったけど。あ、兄貴ってこのマンション譲ってくれた方じゃなくて、2番目の兄貴の方」
それを聞いて、麻子の耳がピクッと反応した。
「お兄さんって、二人とも結婚してらっしゃるんですか?」
「いや、まだどっちも独身だけど......」
「ええっ、じゃぁ...」
麻子が身を乗り出そうとすると、匠が引き止めた。
「ほら、みんなで乾杯するんだろ」
麻子が持ってきた赤ワインを開け、グラスに注ぐ。
「なんか......このグラスも高そうだな」
匠が呟くと、グラスを手にした勝が途端に緊張する。大和が笑いながらボトルを置き、グラスを手に取った。
「ほら、乾杯しようぜ」
大和の言葉に、「かんぱー」と大きく歓声を上げた勝の口を、麻子が塞いだ。
「ここは、『結婚おめでとう!』でしょうが」
「だな」
麻子と匠に言われて勝は肩を竦めると、気をとり直してグラスを掲げた。
「結婚、おめでとー!」
『おめでとー!!』
3人に祝福され、大和と美姫は照れながら互いの顔を見合わせた。
『ありがとう』
麻子が、美姫に紙袋を渡した。
「これ、結婚と新居祝いを兼ねて私たちから」
「わぁ、気ぃ遣わなくてよかったのに。ありがとう」
来た時から紙袋の中身は見えていたので、お祝いの品なのだろうとは思っていたものの、自然とそうした言葉が出ていた。
そっと紙袋から取り出す。
「綺麗......」
それは、ガラスドームに入ったピンクと白の薔薇を基調にしたプリザードフラワーだった。
「きっともう、何でも持ってるだろうからプレゼントどうしようって迷って。結局、無難にお花にしちゃった」
「ありがとう、すごく嬉しい。大切にするね」
目の前に並べられたスープやサラダ、ブルスケッタを摘みながら、麻子が聞く。
「メインは?」
それを合図に大和と美姫がキッチンへと消え、再び皿を手に現れた。
「ピザパーティーにしようと思って」
大和の皿にはピザ生地、美姫の皿には様々なトッピングが載せられていた。基本的な具であるトマトやバジル、キノコ、チーズ等の他に明太子やアンチョビ、そしてトリュフやキャビアまで添えられていた。一気に皆のテンションが上がり、盛り上がる。
「すっげー、旨そう!」
「お、いいね」
「私、ピザ作るなんて、初めて! しかも、トッピング豪華すぎー!」
食事が進み、ワインのボトルが空くにつれ、大和はまるで昔からの友達のように皆と打ち解けていた。それを眺めながら、美姫は心が温かくなった。
「美姫、これ全部自分で用意したの?」
麻子に言われ、美姫は笑顔で大和を振り返った。
「実は、私の方が助手って感じで。大和がメインで作ってくれたの。ピザ生地捏ねたのも大和だし」
「うわっ、イケメンで優しくて、料理も出来るとか、ほんっとなんなの!
あぁー、私も結婚したくなってきた!」
麻子の直球の褒め言葉に大和が少しはにかんだ顔を見せ、立ち上がった。
「そろそろピザ焼けたかもしれないから、見てくる」
キッチンへと引っ込むと、焼けたピザと新たなピザ生地を手に戻ってきた。
みんなでわいわい言いながら、トッピングを載せていく。最初は無難な具を載せていたが、何枚か焼くうちに今度はキムチを載せようとかイカの塩辛はどうだとかいった内容で盛り上がる。
「考えてみれば、ピザパーティーって初めてだよね。なんで今まで思いつかなかったんだろうって感じ」
麻子の言葉に、勝が深く頷いた。
「だよなー。てか、クリパですら鍋とか、芸ないよなー俺ら......ぁ」
勝が言ってから、「しまった!」と言うように顔を顰めて黙り込む。
麻子は勝を睨みつけた。居心地の悪い空気が、部屋を満たしていく。
「うわっ、すげー数! 大和さん、ゲーム好きなんすか?」
まるで舎弟のような勝の言い方に、大和が笑いを押し殺しながら答えた。
「だから、敬語じゃなくていいって。
昔、実家にいた時はよく兄貴とゲームしてたんだ。今は互いに忙しくて、出来なくなったけど。あ、兄貴ってこのマンション譲ってくれた方じゃなくて、2番目の兄貴の方」
それを聞いて、麻子の耳がピクッと反応した。
「お兄さんって、二人とも結婚してらっしゃるんですか?」
「いや、まだどっちも独身だけど......」
「ええっ、じゃぁ...」
麻子が身を乗り出そうとすると、匠が引き止めた。
「ほら、みんなで乾杯するんだろ」
麻子が持ってきた赤ワインを開け、グラスに注ぐ。
「なんか......このグラスも高そうだな」
匠が呟くと、グラスを手にした勝が途端に緊張する。大和が笑いながらボトルを置き、グラスを手に取った。
「ほら、乾杯しようぜ」
大和の言葉に、「かんぱー」と大きく歓声を上げた勝の口を、麻子が塞いだ。
「ここは、『結婚おめでとう!』でしょうが」
「だな」
麻子と匠に言われて勝は肩を竦めると、気をとり直してグラスを掲げた。
「結婚、おめでとー!」
『おめでとー!!』
3人に祝福され、大和と美姫は照れながら互いの顔を見合わせた。
『ありがとう』
麻子が、美姫に紙袋を渡した。
「これ、結婚と新居祝いを兼ねて私たちから」
「わぁ、気ぃ遣わなくてよかったのに。ありがとう」
来た時から紙袋の中身は見えていたので、お祝いの品なのだろうとは思っていたものの、自然とそうした言葉が出ていた。
そっと紙袋から取り出す。
「綺麗......」
それは、ガラスドームに入ったピンクと白の薔薇を基調にしたプリザードフラワーだった。
「きっともう、何でも持ってるだろうからプレゼントどうしようって迷って。結局、無難にお花にしちゃった」
「ありがとう、すごく嬉しい。大切にするね」
目の前に並べられたスープやサラダ、ブルスケッタを摘みながら、麻子が聞く。
「メインは?」
それを合図に大和と美姫がキッチンへと消え、再び皿を手に現れた。
「ピザパーティーにしようと思って」
大和の皿にはピザ生地、美姫の皿には様々なトッピングが載せられていた。基本的な具であるトマトやバジル、キノコ、チーズ等の他に明太子やアンチョビ、そしてトリュフやキャビアまで添えられていた。一気に皆のテンションが上がり、盛り上がる。
「すっげー、旨そう!」
「お、いいね」
「私、ピザ作るなんて、初めて! しかも、トッピング豪華すぎー!」
食事が進み、ワインのボトルが空くにつれ、大和はまるで昔からの友達のように皆と打ち解けていた。それを眺めながら、美姫は心が温かくなった。
「美姫、これ全部自分で用意したの?」
麻子に言われ、美姫は笑顔で大和を振り返った。
「実は、私の方が助手って感じで。大和がメインで作ってくれたの。ピザ生地捏ねたのも大和だし」
「うわっ、イケメンで優しくて、料理も出来るとか、ほんっとなんなの!
あぁー、私も結婚したくなってきた!」
麻子の直球の褒め言葉に大和が少しはにかんだ顔を見せ、立ち上がった。
「そろそろピザ焼けたかもしれないから、見てくる」
キッチンへと引っ込むと、焼けたピザと新たなピザ生地を手に戻ってきた。
みんなでわいわい言いながら、トッピングを載せていく。最初は無難な具を載せていたが、何枚か焼くうちに今度はキムチを載せようとかイカの塩辛はどうだとかいった内容で盛り上がる。
「考えてみれば、ピザパーティーって初めてだよね。なんで今まで思いつかなかったんだろうって感じ」
麻子の言葉に、勝が深く頷いた。
「だよなー。てか、クリパですら鍋とか、芸ないよなー俺ら......ぁ」
勝が言ってから、「しまった!」と言うように顔を顰めて黙り込む。
麻子は勝を睨みつけた。居心地の悪い空気が、部屋を満たしていく。
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